ソフトバンク「Pepperは個人情報を取得しなくても、店頭で個人を特定できるようになる」GMIC Tokyo 2015

先日7日に行われたGMIC TOKYO 2015のスペシャルセクション「Pepperと未来生活」では、ソフトバンクロボスティクス株式会社 事業推進本部長 吉田健一が、ロボットが与えるヒトへの影響についてプレゼンテーションを行った。

吉田氏は、冒頭に、2020年のオリンピックごろには、日本中のお店や職場ではロボットが働き、家庭にもいる、ロボットが爆発的に広がるのはほぼ間違いないだろう、と話した。

さらに「ソフトバンクの一つのテーマとしては情報革命で人々を幸せにすることなので、次のスマホのステージとしてはロボット、ロボットで人々を幸せにする未来があると思いロボット事業をやっています」と述べた。

 

Pepperの最大の特徴

「pepperは、何がもっとも特徴だと思われますか?」

吉田氏は会場に質問を投げかけ、こう答えた。

「話せる機能はあるんですが、その機能単体ですとスマホに入っていますし、スマホだってしゃべります。では何がロボットとスマホ、その他のデバイスと違うか、それは、人間が生き物だと認識することです。ここが唯一にして最大の違いです。」

プレゼンテーションでは、この「人間がロボットを生き物だと認識する」というキーワードがたびたび登場した。

例として、ある流通業の担当の話をあげた。これまでデジタルサイネージで様々なスクリーンを店舗に置いてきたが、誰も見ないし、誰も足を止めなかったという。ところが、Pepperが顧客に話しかけると、ほとんどの人が足を止めるそうだ。

ネスレの事例

吉田氏はPepperをまずソフトバンクショップに導入し、来店数が1.5倍になったことを挙げ、企業との取り組みの第1弾として始めたネスレのネスカフェ ドルチェグストというコーヒーマシーンの事例を話した。

これまでコーヒーマシーンは、専門の販売員がいない量販店で販売していたが、ネスレは1000店舗にPepperを導入した。そして、設置されたPepperが来店客に話しかけると、来店客は商品の前で足を止めるようになり、これだけでだいぶ大きな効果だという。

さらに、下記のように続けた。
「Pepperが雑談から話し始めるわけなのですが、質問する過程でお客様のニーズをあぶりだしています。これはできる営業マンがやっていることなんです。

例えば、「どれくらいコーヒー飲まれますか?」とか「スタバなどのカフェってどのくらい行かれますか?」みたいな話をしながら、「あれ、オレけっこう毎月スタバにお金使ってるなぁ」みたいなことをだんだん気づいてきて、「あ、だったら・・・(ネスカフェにしようかな)」みたいな流れですね。

できる営業マンはいきなり売り込みはしないので、雑談の中でヒアリングしながら、結果的にはニーズを顕在化して売り上げにつなげていくのですが、それをそのままプログラムしてします。」

結果としてコーヒーマシンの売り上げがかなりあがったそうだ。

しかし、ネスレが一番こだわっているのは、データだという。これまではメーカーは小売りで何がおきているのか一切わからなかったが、Pepperを導入したことで多くのことがわかるようにななった。

例えば商品の前に何人の人が通って、そのうち何割が近寄ってきて、何割接客したか、接客した人の性別、年代、そのあとどういうフローでトークをしたか、提案した商品に対してどういう反応したか、最終的にどのくらいの購入につながったか、これが全部わかる。

吉田氏は、リアルの世界では小売りという業態がはじまって1000年以上、何のイノベーションもなかったとし、このリアルデータが取得できることは大きな革命だとコメントした。

 

顔認証で顧客を見分ける

「今、R&D的にはじめているのは、顔認証で個人を特定することです。今のPepperは家庭用に作ったので、今は数十人しか判別することができません。何千万人の中からあなたは○○さんですね、というのは今はできないませんが、技術的にはもうあります。」

これができるようになると、個人情報を取得しなくてもPepperが個人を特定できるようになる。顧客が数年前に店頭で購入したデータを蓄積することができるため、例えば前回購入したスキーウェアの情報を踏まえて、今年のおすすめを提案することができる。

百貨店などのできる営業マンは200人ほどは覚えられるそうだが、ロボットは比較にならないほどの「記憶」をすることができる。

吉田氏は、オンラインからではなく、オフラインからビッグデータを取得できるのは大きな革命だと、発言した。

さらに、Pepper開発時には、リテールでの活用や、病院等での認知症などに役立つとは想像していなかったとし、デベロッパーと一緒に作り上げていくことが大事だとコメントした。

 

ロボットと過ごした時間が価値

最後に、家庭におけるロボットの価値とは何か、というテーマに移った。

「ドラえもんの価値ってなんだったのかと、のび太目線で考えた時に、道具を出してくれることももちろんあるんですけど、そこではないんだろうな、と。

のび太とドラえもんが過ごした時間、思い出、友情、その価値がプライスレスなんじゃないかなと、思います。すごく日本人的な発想ですけど。

ただこれからどうなるかはわかりません。お客様とデベロッパー様と一緒に考えていきたいと思っています。」

と締めくくった。

 

Pepperに命を吹き込み、性格や話し方、声までこだわってソフトバンクと一緒に開発したのは、これまで多くの芸人を育ててきたプロが所属するよしもとロボット研究所だ。

Pepperと話したことがある方はおわかりかもしれないが、会話のキャッチボールはもちろん、笑わせてくれる。人間と話しているような気分になるし、Pepperが次にどんな発言をするのか楽しみになる。

1家に1台ドラえもんがあれば、と夢見た人は多いだろう。4次元ポケットはまだ遠い未来かもしれないが、ロボットと暮らす未来はもうはじまっている。

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・GMIC Tokyo 2015

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