自律走行車やコネクテッドカー時代に向け必要なもの

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自律走行は、既に未来の技術ではない

自律走行は、未来を描いたドラマや映画でおなじみ技術だ。だが、自律走行は既に未来の技術ではない。船舶や飛行機では一部でオートパイロット(自動操舵)を使って運航されている。決められた航路に沿って自律走行をする船舶や飛行機と違い、自動車は急変する道路状況に対処しなければならない。そのため自律走行の適用が簡単ではなく、未完の技術として研究が重ねられている。

 たくさんの企業が巨額の資金をつぎ込んで自動車向けの自律走行技術を開発している。自律走行自動車の交通事故で死亡者が発生したという記事も主要なニュースとして取り上げられている。

 自律走行技術のレベルを定義した「SAE J3016」では、自動運転レベルを0から5までの6段階に分け、レベル3以上を技術を搭載した自動車を「自律走行自動車」(Autonomous Vehicle)と見る。

自律走行車やコネクテッドカー時代に向け必要なもの
出典 : iQ.intel.com

 

 ある自動車メーカーはレベル3の技術を開発したといい、別のある自動車メーカーはレベル4の技術に成功したという。果たして、レベル4の技術はレベル3よりも優れたものなのだろうか。そうかもしれないし、そうではないかもしれない。

 米国運輸省(DoT、Department of Transportation)傘下の道路交通安全局(NHTSA、National Highway Traffic Safety Administration)が2016年に作成した「Federal Automated Vehicles Policy」では、「ODD」(Operational Design Domain、運行設計領域)という概念を自律走行の構成要素に含めた。

自律走行車やコネクテッドカー時代に向け必要なもの
出典 : “Federal Automated Vehicles Policy”, NHTSA, 2016
 

 ODDは、自律走行が動作できる条件である「地理的位置」「道路類型」「走行速度範囲」「天気」などの制約を含む。ODDが同一であれば、レベル3の技術よりもレベル4の技術の方が優れた技術であることは間違いない。だがODDが異なれば、どの技術がより優れた技術なのかを判断することは容易ではない。快晴でドイツのアウトバーンを走れるレベル4の技術と、可視距離が数十メートルしかない大雨の状況でも都心の繁華街を走れるレベル3の技術を比較するのは難しい。

 NHTSAの文書は、自律走行自動車が順守すべき技術の要素として「サイバーセキュリティ」(Cyber Security)を明示している。自律走行とセキュリティにはどんな関係があるのだろうか。

 自律走行自動車は、自動車に搭載されたカメラ、レーダー(Radar)、ライダー(LiDAR、レーザー光による検知と測距)、赤外線センサーなどのさまざまなセンサーを通じて周辺を認識して、どのように走行するかの判断をリアルタイムでする。センサーから収集したデータを分析し、リアルタイムで判断することがまだ未完の技術であり、悲劇的な事故の発生につながることもある。2016年に発生したテスラの交通事故は、左折する白いトレーラーの横面と空を区分できなかったせいで発生した事故だった。(※1) それなら、クラッカーがセンサーの正常動作を妨害したり、信号をかく乱したりして、自動車が誤った判断を下すように誘導することも可能ではないか。

 人間は真正面から強力な光を当てられると、しばらく前が見えない状態になる。同じように自動車のカメラに強力な光が照らされると、自動車はすぐ前の障害物も識別できなくなる。このような攻撃は高価な装備や高度の技術が必要なものではない。性能の良い電灯や大きな鏡だけで実行できる犯罪だ。

 車両の内蔵センサーだけでは、周辺の状況を正しく判断することに限界がある。だからこそ、自動車が周辺の自動車や道路と情報をやりとりしながら自律走行をするのだ。このような自律走行を「自律協力走行」という。「連結性」で説明したV2VとV2Iが自律協力走行でも使用されるのだ。外部との通信を通じて周辺状況の情報を得るためには、通信相手に対する信頼を検証し、通信チャンネルの信頼可否を検証することが必要になる。

 自律走行で使用される、また違う形の通信がある。自律走行タクシーを運営するタクシー会社を想像してみよう。タクシーを利用しようとする乗客がタクシー会社に要請すれば、タクシー会社は所有するタクシーの中から特定のタクシーに利用客の状況を伝えなければならない。それ以前にタクシー会社はタクシーの現状をリアルタイムで把握し、顧客の需要が多発する場所にタクシーを移動させておくことも必要だろう。この場合にV2NもしくはV2Cモデルの通信を利用することになる。自律走行自動車は外部通信を活用するためのセキュリティも確保しなければならないのだ。

 

※1 Tesla car on autopilot crashes, killing driver

第3回目につづく。

  • 第1回目: コネクテッドカーに求められる要素とは?
  • 第2回目: 自律走行車やコネクテッドカー時代に向け必要なもの(この記事です)
  • 第3回目: ネットと繋がる未来の自動車、その活用分野
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