NTTPCコミュニケーションズ Partner Conference 2019レポート

サブスクリプションを支える「つながり」

兵庫県立大学経営学部 教授 川上昌直氏

サブスクリプションの捉え方、考え方について

まずサブスクリプションとイメージすると「定額制課金」と思われがちだがそうではないという。実際に消費者が注目する「所有から利用へ」というテーマは不況から10年経つとクローズアップされる傾向にあり、1999年のブーム以降、現在賢い方法として「所有から利用へ」といった話が出てきていると説明した。そして、現在消費者が注目している定額制課金というとローンやリースというものがあるが、これは単なる課金の問題であって、サブスクリプション自体を指すとは限らないと述べた。

具体的にサブスクリプションには「従量制課金」というものも存在する。例えば、飛んだ距離だけ課金される「GE」や、笑った回数だけ課金されるスペインに実在するコメディ劇場などを例に挙げた。

つまり、企業が注目すべきものは「サブスクリプション」というビジネスモデルそのものであると語った。

また、ユーザーが将来にわたる利用意思を示すということが大事であると改めて定義した。なぜなら、「サブスクリプション」というのは「サブスクライド」という動詞を受けた名詞で、ユーザが申し込むものであり、企業が定額制で課金するという意味ではないという。ユーザーが申し込んで継続的に利用しますよ、という意思を示すことが重要だと強調した。

サブスクリプションに必要な「つながり」を考える

そもそもサブスクリプションというとマネタイズ=課金と思い込みがちだが、成功させるためには、ユーザーとの繋がりを考える必要があると述べた。

そして、ユーザーとの繋がりを強化したビジネスというのは、ユーザーの生活に対して企業がプロダクトを提供してくれることによって生活が向上するモデルであると話した。パナソニックの例として昨年の12月に「暮らしアップデート」と松下さんが提言した内容もまさにユーザーとの繋がりをもとうとする話だったが、ユーザーがサブスクリプションを利用することで生活が向上しない、もしくはパフォーマンスが向上しないと意味がないという。

なかなかユーザがものを買ったあとのことまで想像力を働かせることは難しいかもしれないが、ユーザの生活やパフォーマンスを向上させるために、購入後に焦点をあてるべきであると語った。なぜなら、購入後に利用し、使いこなすことでジョブや課題を解決し、その後解決し続けなければいけないからだ。そして使い終わった後にさらに高いパフォーマンスを目指すためにアップグレードするからだという。そしてここを重視することが大事であると強調した。

そのために、プロダクトが必要とされた理由を遡って考えると簡単だと話した。なぜ買ったのか、どうやって買ったのか、どういう経緯で知ったのか、という分析から、これを知ると必要とされる、購入されるといった具合だという。

いわゆる売り切り企業だと購入することで売りがたってしまうので、購入時点を考えがちだが、実は購入前より購入後のタッチポイントを深掘りする方がユーザの支持を得やすいと述べた。

カスタマージャーニーを考えるAIDMAやAIDA、AISASなども購入後は全くタッチされていない。あったとしてもメンテナンスやアップグレードなどお金が絡む部分のみであり、どういう風にユーザが使いこなしてジョブの解決をしているかが分からないと指摘した。

「ジョブ理論」という著書でもジョブの解決についてクローズアップされており、スタートアップ企業でも限られたユーザの状況で問題を解決することを得意としていたりするが、ポイントとしては顧客とのタッチポイントではなく、アンタッチポイントを考えることが必要であると述べた。そしてそれがジョブを解決する方法であり、顧客と寄り添う方法だと語った。

成功するサブスクリプションとは

「メンバーシップ」という考え方=常に繋がっているという考え方が欠落した企業は撤退していっていると注意喚起した。例えばものづくり企業がサブスプクリプションに転換していくものの、どんどん失敗しているケースがある中で、共通してそういった企業は「メンバーシップ」ではなく、「課金」としてサブスプクリプションを捉えてしまっていると述べた。

「メンバーシップ」とはなにかというと、ユーザとの関係性を密に考え、資産と捉えることであるという。つまり、ユーザ(会員)のパフォーマンスをあげることが自分達のパフォーマンスをあげることであると、考えがシンクロしている状態を指すと説明した。メンバーシップの例としては、学校における生徒の学力が上がれば就職率があがり、学校の評価も上がるといった具合だ。企業においても、ユーザのパフォーマンスが上がれば、企業の評価も上がるということを真摯に捉えられることがメンバーシップ企業の要件であると語った。

売り切り企業は購入して終わりであり、カスタマーサポートセンターもコストとして捉えられてしまうが、メンバーシップ企業は購入後になんらかの方法でユーザとの繋がりをつくっていると説明する。SaaS企業やアマゾンなどは得意であり、LTVを評価している企業でもメンテナンスや退会といった部分で課金を行なっている。また、保険や自動車、コピー機などの有能な営業マンは購入後に顧客に寄り添い、どこかに課金ポイントを作っているという。

そして、成功しているサブスクリプション企業は全部にタッチしていると話した。つまりコストの部分だけで集客を行うのではなく、利用の部分で集客をし、さらにどこかの段階でサブスクリプションのプランをアップグレードしているという。ずっとユーザに寄り添っている企業が成功していると語った。

ユーザに寄り添う視点をもつということ

サブスクリプション企業でいう「CS」とは「カスタマーサクセス」つまり、顧客の成功であるという。それは常連感や特別感のようなものであり、BtoB企業でいうとセールスフォースやSaaS企業などは、どこまでもユーザに寄り添っていると説明する。「所有から利用へ」という風潮で、従量制課金制度(成果が起こらないと課金が起こらない)が目の前にきていると述べた。磨り減った分だけ課金するタイヤを展開したミシュランを例にあげると、ミシュランガイドを作ることで店へ車で行ってもらうという流れがタイヤを利用するということに繋がっている。

ユーザーとどこまで寄り添えるか、どこまで繋がれるか。それがサブスクリプションの要件になってくると語った。これからサブスクリプションに転換しようという企業は、さらにユーザとの繋がりをもっと考えるべきであると改めて強調した。

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