ニチレイロジグループと日立、IoTを活用した冷凍設備の運用・保全効率化ソリューションを実用化

冷凍食品や生鮮食品などを低温で流通させるコールドチェーンは、人々の食生活を支えるインフラの一つである。また、一般消費者向け冷凍食品は新型コロナウイルス感染拡大による在宅時間の増加を背景に需要が増加するとともに「エッセンシャルフード」として価値が向上している。

このように、ますますニーズが高まるコールドチェーンにおいて、物流ターミナルの役割を担う冷凍倉庫の冷凍設備は安定稼働が不可欠である。一方で、設備老朽化に伴う運転・メンテナンスの効率化や、熟練技術者不足などは重要な課題であるとともに、CO2排出量抑制といった低炭素社会に向けた環境対策も求められている。

株式会社ニチレイロジグループ本社（以下、ニチレイロジグループ）と株式会社日立製作所（以下、日立）は、冷凍設備の運用・保全業務の効率化に向けて、2017年からIoTを活用した冷凍設備の運用・保全効率化ソリューションの検討を進めてきた。

2018年8月から2020年4月までニチレイロジグループ船橋物流センター内の冷凍設備6台を対象に同ソリューションの共同実証を実施した結果、年間で電力消費量を約12％削減、メンテナンスに関わるコストを約40％削減、トータルで約20％のコスト削減効果が確認できた。

そしてこのほど、両社は同ソリューションを実用化したことを発表した。

同ソリューションは、日立グループの運転・音・画像データ解析技術や故障予兆診断技術等を組み合わせることにより、冷凍設備の運用・保全の効率化を図るものである。

まず、各種センシング技術や株式会社日立産機システムのIoT対応産業用コントローラ「HXシリーズ」、株式会社日立システムズの社会・公共ソリューション「CYDEEN」のメーター自動読み取り技術およびフィールド作業支援サービスを活用して、冷凍設備の稼働データ、各所環境データ（倉庫内温度等）、冷凍サイクルデータ（圧力・温度等）を収集する。

そのデータを基に、設備稼働とエネルギー費用等の相関可視化を行い、日立の統合エネルギー・設備マネジメントサービス「EMilia」をベースとするクラウドサービス基盤へ集積して運用効率化診断を行うとともに、日立グローバルライフソリューションズの「exiida遠隔監視・予兆診断」で故障予兆診断を行う。診断結果は拠点管理者・設備管理者がBI・ダッシュボードで確認できる。

これらの結果を、冷却水温の変動抑制による設定温度降下、冷却器のデフロスト（※）実行周期の改善、圧縮機運転台数の改善など、実際の設備運用に生かすことで、電力量削減とCO2排出量の抑制を支援する。今後、負荷に応じた圧縮機台数や、冷却器の着霜量に応じたデフロスト実行の最適制御機能等を継続的に追加する予定だという。

また、冷凍設備の保全は、機器が故障した後に修理する事後保全と、故障を事前に予防するため一定の時間間隔でメンテナンスを実施する時間基準保全で成り立っているが、日立独自の診断アルゴリズムを活用した故障予兆診断の導入により、冷凍設備および補機類の運転データ、各配管部の温度・圧力データからの冷凍設備全般・冷凍サイクルの異常兆候や、圧縮機稼働音からの圧縮機の異常兆候の検知が可能だ。

これにより、熟練技術者の経験に頼った保守や、不要な整備や部品交換を回避するとともに、オーバーホール周期が延長できるため、保守コスト削減と長寿命化による資本的支出の削減が図れる。

今後ニチレイロジグループでは、2021年4月から国内の冷凍倉庫へ同ソリューションの導入を順次進めるとしている。日立は、同ソリューションをLumadaの冷凍倉庫向けソリューションとして、国内にある8万台以上の冷凍設備を対象に拡販するとともに、グローバルにも展開していくとのことだ。