産学連携と地方創生 ーConference X in 広島レポート4

各産業・業界においてDXに先駆的に取り組む企業が登壇し、DXの実践事例を議論する「Conference X in 広島」がオンラインで開催された。

本稿では、産学連携のあり方について、株式会社SmartRyde、株式会社ドリーム・アーツ、株式会社Rejoui、広島大学がディスカッションした内容を紹介する。モデレーターは広島大学 野村典文 氏だ。

登壇者
株式会社SmartRyde 代表取締役 木村聡太氏
株式会社ドリーム・アーツ 執行役員社長室長 吉村厚司氏
株式会社Rejoui 代表取締役 菅由紀子氏
広島大学 AI・データイノベーション教育研究センター 特任教授 野村典文(モデレータ)

株式会社SmartRydeは、空港送迎の予約プラットフォームを、現在150の国で、空港送迎サービスを行なっている企業だ。

また、株式会社ドリーム・アーツは、創立25年の会社でIT企業で、大企業向けクラウドサービスを提供している。そして、株式会社Rejouiは、データサイエンスを軸としたビジネスを行なっている。

初めに、モデレータを勤める広島大学の野村氏から、中国地域の活性化について問題提起した。

スマートシティは本当に地方を活性化するのか?

現在、「スマートシティ=地方創生」という話題が多い中、本当にスマートシティを進めれば地方創生ができるのだろうか。

SmartRyde 木村氏は、「地方と言っても地域の特性を理解することが重要。その中でも良いところは活かしながら新陳代謝をすることが重要だ。」とした。

実際に、広島県における、観光や交通に対するヒヤリングをしたところ、

  • 2次交通が不便
  • 観光地があるが点在していてアクセスに不便を感じる
  • 中小零細企業が多い

という課題があるのだという。

人気の高い観光地に人が集まる一方で、知られていないところに人が来ていない、そういったい人流をコントロールできるとよいのだという。

また、ドリーム・アーツ 吉村氏の分析によると、IT化には両面あって、コロナ禍を見ても、物理的な接触ができなくなった一方で、生活自体がそれほど困らないという状況になっている。これが、デジタルの恩恵なのだ。

一方で、物理的な接触が少なくなることで、人と人との出会いがなくなり、「セレンディピティ(予想外の幸福)」が発生しなくなってきている。

スマートシティが進むと、人との物理的な接触が減り、マイナス面になるのではないかと懸念しているという。

デジタル化による、地域にとって意味は、「ボーダレスとなり、広島にいても世界の仕事ができる」という点ではないかと指摘した。

しかし、ボーダレスになり、広島から世界の仕事はできるようになっても、広島に魅力がないと広島に住む意味がなくなるのではないだろうか?

それに関して、Rejoui 菅は、その地域に住んでいる人が、自分の地域の魅力をきちんと知っていることが重要なのだとした。

ただ、地元の人たちは、デジタル技術を活用してビジネスを起こすと言うことに億劫な状態だ。そこで、「スマートシティは誰のもの?という問いに対しては、住んでいる人にも、おとづれる人にとっても価値のあるものでなければならないと思う」と述べた。

地方創生の一つに、地方発ベンチャーが期待されている。起業のむずかしさと魅力は何か?

SmartRyde 木村氏は、コロナ禍で、ほとんどの会議がオンラインになったこと、広島県でのスタートアップ誘致、観光や交通への取り組みを聞いたとき、興味を持ったのが2020年10月ころだ。

SmartRydeは、グローバルなビジネスを目指しているので、地方進出は反比例していると思われるかもしれない。

しかし、「booking.comなど海外のオンライン旅行事業者と連携することが多いので、ヨーロッパやアメリカのお客様が、自社サービスをつかって広島にくるとする、そうするとパートナーの売り上げに貢献することができる」と考えているのだ。

木村氏は、実体験から地方都市でビジネス展開をするメリットを以下とした。

  1. スタートアップの数がまだ少ないので、同じようなビジネスをやる企業も多く、注目されやすい
  2. 地方でもファンドやVCが立ち上がってきている、資金調達環境もよい
  3. IT化がまだ遅れている企業が多いので、スタートアップ企業がDXのためのプロダクトを提供することができる

他にも、地元の有力者とも会いやすいということもメリットなのだという。

また、Rejouiの菅氏は、女性経営者が地方都市に進出する際、「東京には女性企業家を支援する仕組みがあるが、広島にはないように感じている」のだという。

また、広島での人材採用については苦労していて、支店経済、下請け企業がおおいのか、指示待ちになっている方が多いというイメージがあるのだという。

DXを推進するには、人材が必要だが、それを確保する上での課題

ドリーム・アーツ 吉村氏は、DX推進について、「企業内のIT技術者が少ないことが問題」とした。

2021年8月に、ドリームアーツが管理職1000名に聞いたDXに関する調査レポートを見ると、「DXとデジタル化の差がわからない」という人が多く、「業務改善に類するものもDXとして認識している」ということがわかるのだという。

経営サイドの意識は高いが、現場は意識が低く、理解もしていない、情報部門に任せているという状況なのだということだ。

これについて、吉村氏は、「経営に対するリーダーシップが重要で、現場の人が自分たちでもできるんだということを啓蒙すべき」だという。

デジタルで「変革できる感覚」を持つことが重要なのだ。

地方での人材育成にはどのような取り組みが必要か

地方都市の優秀な人材も東京に流出することが多い。これについてどういった取り組みがあるのだろうか。

Rejoui 菅氏は、流出してしまった人を取り戻すことが重要だが、特に結婚等でUターンした人が、広島帰ると仕事がないという状況になっているのだという。

そこで、時間をおいて、社会に復帰する際、「教育機関にはトレーニングする仕組みを提供してもらえるとありがたい」のだということだ。

また、在学生には、広島にいかに魅力がある企業があるか。データサイエンスなど先端的なことも広島でもできるのだ、ということを発信して欲しいとした。

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