畜産農家にとって、経営計画の立案は、現状分析や計画を立てるために必要な牛の売買履歴や飼料の購入費用といったデータの最新化に手間がかかり、多くの稼働を要する。紙の伝票を計算ソフトに入力するなどの手作業が多く、原価管理や毎年の決算にかかる事務作業の負荷がかかったり、情報の反映にタイムラグがあったりするというのが現状である。このことから、次年度の牛の導入計画や金融機関からの借り入れ・返済の計画など、経営判断は経験則に頼らざるを得ない。
株式会社NTTデータとデザミス株式会社は、2022年12月から畜産農家向けの経営管理分析ツールを提供する。
同ツールは、牛の個体情報や売買データをインプットし、畜産農家の原価管理・決算・財務関連作業を高度化する。
具体的には、金融機関へ複数の導入実績があるBIツールを活用することでインプット情報と分析方法を自由に設定することができ、多角的な経営分析が可能となる。
デザミスが提供する牛行動モニタリングツール「U-motion(※)」との連携により、導入日、飼育日数といった牛の個体情報をU-motionから自動で取得する。仕入れや売り上げの数値情報を同ツールに入力し、これらの情報を掛け合わせ、牛の飼育コスト等を出力する。これにより、従来の計算ソフト等に牛の個体情報を入力する作業を減らすことができる。
さらに、NTTデータが販売を行うAI insideのAI-OCRツール「DX Suite」と連携することで、手書きの帳票を含む伝票の自動読取が可能となる。伝票内容の入力作業にかかる稼働や、人手の作業に起因するミスを削減する。
畜産農家における経営分析は従来、手作業や経験則に頼らざるを得ない状況だったが、同ツールの導入によりデータの自動取得や最新の情報に基づいた経営判断が可能となる。
すでに複数の畜産農家の採用が決定しており、今後全国への提供を目指す。さらに、経営分析ツールを応用して将来的には農家に関わる税理士法人や金融機関への提供も検討しているとのことだ。
※ U-motion:牛の首に取り付けたセンサーが牛の行動をモニタリングし、反芻・動態・横臥・起立等の牛の主要な行動を24時間365日記録することで、牛の健康状態をリアルタイムに把握できるサービス。集積された行動データを用いて、人工知能が牛の異変を自動で検知し、疾病・発情・起立困難等の場合はアラートで通知する。
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