製造業のIoTが、月額数千円から始められるIoTプラットフォームとIoT時代の工場のセキュリティ —シーメンス 島田氏インタビュー 第三回

 

インダストリー4.0時代のセキュリティ

繰り返しになりますが、なんと言っても大切なのが工場のセキュリティで、これは総合的に考えないといけません。ITのセキュリティ、工場のセキュリティ、工場内の認証も含めた総合的なものを考えて、ドイツではインダストリー4.0時代のセキュリティと言っています。

シーメンスは、例えばネットワークセキュリティモジュールや、制御系のモジュールに対してのセキュリティの対策があり、それぞれのセキュリティの項目に対して、コンサルテーションをするサービスを提供しています。

セキュリティの第一歩は簡単な話で、「セキュリティが破られたら、どんな影響が会社にありますか?」と考えることです。その後、どういう対処をしないといけないかレベル分けし、それに合わせて「ここはここまでやらないといけませんね。ここはこの程度でいいですね」という流れのプログラムも持っています。

これは認証機関のTUV(テュフ)社と一緒にやっていますし、こういうことを真面目にきっちり1個ずつやっていかないと、IoTまでたどり着かないのです。面倒くさいなと思ってはいけません。

 
-ITの世界でいうSSLみたいなものですか。決まった方式でできるようになっていれば、繋げるのは簡単だという話ですよね。

簡単ですよ。例えば、工場の入れ替えをするタイミングなどに、今後どうやって安定的に続くかというのを考えると、標準品を入れることがいいと思うのです。

本場ドイツでのインダストリー4.0の本質は何なのか? 設計終了後5分で製造が始められる秘密 —シーメンス 島田氏インタビュー 第一回
IoTNEWS代表 小泉耕二

 

外国製のWindowsは使いたくないから代わりに日本製のOSを作る、という話にはもうならない

 
-それで、日本の工場が残っていればいいですけどね。工場で使う部品や産業機器がIoT化されていないから遅れたということにならないでしょうか。

インダストリー4.0時代は、本来は現地化が進むはずなのです。輸出ではなく、要するに、市場に近いところに工場があった方が良く、日本でも日本の需要に対して、タイムリーに応えられる工場というのは成り立つはずなのです。

 
―マス・カスタマイゼーションがすすむと、マーケットの近くで製造したほうがいいですものね。製造コストの方が、輸送コストより高くなった時点で、中国で作った方が安いとなりますよね。

例えば、中国もものすごい勢いで人が高齢化していますから、ロボット化が進んででいます。今後は、デジタル化や自動化という意味で日本工場と中国工場の競争力が逆転する可能性があります。そうすると、どうしようもないです。

 
-島田さんはドイツや中国のスピード感を、どういうところで感じられるのでしょうか。

例えば、ドイツに行くと中国人がたくさん来ていて、実際にどんなプロジェクトが起こっているかとか、シーメンス内から手に取るように分かりますし、そんなことまでやっちゃうのか、ということまであります。日本に戻ってきて、日本のロボットの話を聞くと大きなギャップを感じます。

 
-まず第一歩となるネットワークに繋がるところまでやっていないものだから、先に話が進まないわけですね。でも例えば、ロボットアームを制御する技術などの優れた技術もあります。それ自体をやめる必要はなくて、そこから出てくるデータをどのように制御していくかとか、設計の方から実際に製造と今まで分離していたところを分断せずにシームレスにやりましょうと。そういうことをきちんとやっていくということだけで、随分状況は変わるという話ですよね?

そうです。だから、やはり自分の周りのことしか見ていないのです。さっきのりファレンス・アーティテクチャモデルで見たときに、「ここと組もう」ということはあまりやっていないようです。

 
-長い間、下請け構造のヒエラルキーに甘えていたということもあるかもしれません。日本は「俺が右といったら、みんな右なんだ!」という風潮があるじゃないですか。だから、言う事を聞かない他国の工場で作った標準的なものにわざわざ取り替えているより、融通が利くほうが良いとなりますね。

そうなのです。

 
-その方が人も楽ですからね。例えば、Windowsを使っている人は、Macを使えません。結局、毎日仕事で使う機械がガラパゴス化していけばしていくほど、労働者も簡単にスイッチできないからと、どんどんスイッチできなくなっていく流れになります。

そういうことが徐々に順番に、いろんなところで起こってくるわけです。だから、省庁の方と話をしていても、例えば、Windowsを今さら変えようと思わないでしょ、と。

 
-標準的でないPCには変えないですよね。

IoTも同じことです。シーメンスなんかは、5年も10年も前から長い時間かけてやってきています。それを、いきなり自分たちでやろうとしたって時間がかかります。あるものは使って、違うところに価値を求めて、次なる高みを考えるのがよいと思います。

例えば、インダストリー4.0の話のなかでは、工場のシェアリングができるようになってくるわけです。同じ命令で違う機械で同じモノが作れるなど、実際にもうやっている企業がありますよ。日本でもテストされた中小企業もあります。受注が増えすぎたときには、知り合いの工場に頼むことができるので受注を逃すこともありません。

製造業のIoTが、月額数千円から始められるIoTプラットフォームとIoT時代の工場のセキュリティ —シーメンス 島田氏インタビュー 第三回
左:シーメンス株式会社 デジタルファクトリー事業本部 プロセス&ドライブ事業本部 専務執行役員 事業本部長 島田太郎氏/右:IoTNEWS代表 小泉耕二

 
-もうそこまで、そういう時代が来ているのですね。本日はありがとうございました。

 

【シーメンスインタビュー 一覧】
第一回:インダストリー4.0の本場ドイツのスマートファクトリー、その本質は何なのか? 設計終了後5分で製造が始められる秘密
第二回:ここまでできる、シーメンスが考える製造業のIoT —シーメンス 島田氏インタビュー
第三回:製造業のIoTが、月額数千円から始められるIoTプラットフォームとIoT時代の工場のセキュリティ

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