AIoT のパワーを解き放て―― AIとIoTを統合したAIoTを今すぐ導入すべき理由とは?

LoRaWAN, SIGFOX, NB-IoTなどの、LPWAの特性とビジネスへの可能性 -情報通信総合研究所 岸田氏インタビュー

 
-例えば、大きな建物の中で電話がつながらないと、すぐにクレームでした。これからLPWAを活用していこうとする事業者は、どういうことを考えていけばいいのでしょうか?

特に無線通信は実際にやってみないとわからないところが多いので、「そもそも使えるのか?」ということを考える必要があります。話題の「5G」にしても、各通信事業者がやってみないとわからないのです。

 
-IoTの世界は、一つの街につながるデバイスが何万個、何十万個になると予想されていますので、デバイス同士が干渉するのではないかと心配しています。

特にLPWAに期待されているデータは、例えば1や10などの数字だけのデータだったり、AやBくらいの簡単なデータだったりします。そうすると、そのデータを見ていただけでは間違いがあっても気付けないのではないかと思うのです。その辺は試したらよい、というだけでは難しいのではないかと感じます。

今は経験が積まれていく段階、まだ始まったばかりだと思っています。

 
-しかし、企業や市区町村は、そんなに投資をしていられません。今までは良くも悪くも国やNTTが肩代わりしてくれていたわけですよね。

そうですね。今までの通信サービスよりも「通信費用が安く済みます、誰でも作れます、そんなに高級な設備じゃなくもいいです」ということで、お手軽なLPWAが人気になったのでしょう。一方で、「お手軽品だけど、使いこなすには技術もいるね」という話でもあります。

 
-そうですよね。私がSIGFOXに期待していたのは、彼らはさんざんヨーロッパでやっていると言っているので、ネットワークの引き方や、対応デバイスの置き方が全部わかっていて、それをパッケージにしてリリースするのだろう、ということでした。

SIGFOX本体のビジネスが、そもそもネットワーク・ソリューションを売るというものではなく、パートナー企業へのライセンス商売です。ですから、サービス利用側のそうした期待感とは多少ギャップがありますよね。

フランスの場合、SIGFOXはお膝元なので自前で色々やっていると思いますが、他国へ展開するとなると、SIGFOX社のスタッフが各国に多くいるわけではありません。彼らが手掛けるのはアプリや開発者など上位のレイヤーとは違い、下位の物理レイヤーです。

要するに「基地局立てます」というところからですから、土地にしばられる話なのです。Facebookがアプリを「グローバルに展開し普及させます」という話とはわけが違います。

 
-日本の地方で起きているスマートシティ構想の話を聞いていると、みんな実験からはじめています。「水道の漏れがわかります」、「電気の無駄がなくなります」、「これらを組み合わせることでスマートシティ構想が実現できます」というのはわかります。

しかし、具体的にやろうと思った瞬間に、「一番根本になっているネットワークが通らない」という話が出たりしがちです。

それは、Wi-Fiのときと同じですよね。「Wi-Fiはパケット代を気にせず使えますよ」ということで、家に置いてみたら、離れた部屋ではつながらないじゃないか、と。ただ、Wi-Fiの場合は、「通じるかどうかわからない、そういうこともある」となんとなく許容範囲が広い気がします。

現実はそんなに簡単ではないんですよね。ただ、最初は「たぶんこの辺は届かないかも」と思いながら提案しなければいけないこともあるのでしょう。

 
-それだと見積もれないので、導入が進みません。ちゃんとスマートシティを進めるうえでは、パッケージングを誰かがしなきゃいけないのかなと思っています。

今のタイミングだと、皆さんパッケージングされたものを欲しいのだろうと思いますよね。

スマートシティは海外の議論など聞いていても、一つのパッケージにするレベルまでこなれていないように感じます。経験を積みながら、みんなで作ろうとしているのですが、実はスマートシティの定義も曖昧ですし、そこには色々なソリューションが混ざっていて、その都市によって求めるものがバラバラです。結局カスタマイズベースに寄ってしまって、なかなか出来合いのパッケージに落ち着きにくい、というのが実際なのだろうと思います。

ヨーロッパでも多くの関係者が「当初のプランよりは結構手間がかかるな」と思っているかもしれません。ヨーロッパでは政策的な話ですから相応のお金も動きますし、ニーズもあるので多くの人がやろうとするのですが、やってみて本当に自分たちが活躍できるのか、商売になるのか、というのもまだクリアにはなっていないと感じます。

ただそれも、5年後に今と同じ状況かと言ったらそんなことはないと思います。今はそこをなんとか乗り越えようとみんなで頑張っているという印象です。

LPWAを日本でどう活用していくべきか -情報通信総合研究所 岸田氏インタビュー
株式会社 情報通信総合研究所 ICT基盤研究部 上席主任研究員 岸田 重行氏

 
-まだ運用レベルまで落ちているとは思えません。

そうですね。ただ、もちろんLoRaをかついだ投資側や、SI事業者の方々は、将来を見据えてLoRaを大事に育てようとしています。通信で見ればLoRaは、今の時点で多くの人がトップランナーとして扱っているのですが、IoT向けの通信技術として持ってきたLoRaがどこまで使えるのか?と検証している段階です。いい意味で盛り上がっている感はありますが、まだ煮詰まっていない状態です。

 
-通信技術としても粗削り感が拭い去れません。

これまでの多くの技術革新では、パッチワークも含め機能追加で熟成させていくのは基本ですよね。こうした熟成は、セルラー側ではLTEなどでさんざんやってきた話です。それは今回も同様で、これからLPWAのバージョンが増えます。こういうのは得意です。

一方で、LoRaも含めてLPWAの魅力は「軽い」ことです。きっちり熟成させる営みの方向と、軽さのような話は、どこかでバランスが取りにくくなってしまわないかと思っています。Wi-Fiしかりですが、そもそもLPWAは技術革新にそんなに原資を突っ込めません。みんなが求めすぎていることが少し気になります。

 
-なるほど。色々なことをLoRaWANに求めすぎなのかもしれないですね。「だったらLTEのほうがいいんじゃない?」という話が出てくるということですね。

LoRaやSIGFOX、LTE、Wi-Fi HaLow、Bluetoothなどの選択肢の中で、それぞれの良さを活かして選ぶという話だと思いますが、選択肢がまだ少ないのかもしれません。

LTEのネットワークより安い、ということでLPWAが出てきたわけですが、今はセルラーで月100円くらいで使えるSIMが出てきています。これが10円、5円、1円にまで安くできるかどうか、という話の根本は、LTE設備の投資コストと運営コストになります。

「じゃあ5Gになったらどうなる?」という話で言うと、パケット単価はさらに安くなるでしょう。MVNOが格安スマホとして廉価にサービス提供できるようになったのは、仕入れる通信ネットワークのパケット単価が安くなったからです。通信ネットワークが速くなるから単価が安くなるのです。

 
-単位時間あたりのデータ送信量が増えているのに、例えば5千円なら5千円で頭打ちになるから、結局1バイトあたりの金額が安くなるという話ですよね。

SIGFOXやLoRaには今のLTEより安いというセールスポイントがありますが、その安いという差分は、今後どんどん縮まっていきます。そういう流れの中でLoRaの良さとなると、Wi-Fiと一緒で、機器を買ってきて好きな場所にすぐに設置できるという自由度でしょう。

今後、新たな選択肢が5年後くらいまでに出てくるかもしれません。IoTソリューションであれば5年、10年使いたいですよね。端末やセンサーに寿命があるので、5年後10年後にどの選択肢を選ぶかは更改するときに考えるのでしょうが、今はそこまで持つ通信技術を使いたいですよね。

今後新たな選択肢が出てくることもあることを覚悟したうえで、IoTソリューションをいつ入れるのか、まだ入れないのかを考える時期だと思います。

 
-例えば電力施設のスマートメーター化を進めると、100万都市ならいきなり100万個必要です。そうなると取り返しがつきません。それをLoRaでやるのか、SIGFOXでやるのか、という話を今一生懸命しているわけですよね。

「今までSigfoxだったけど、明日からはLoRaにする」といった、スマホアプリのような切り替えができればいいのですが、実際は低いレイヤーの話なので、なかなかそうはいきません。

また、一番のコストは、人がハードウェアの交換のためにそこに行かなければいけないことですね。それは人ではなく将来はロボットがやるのかもしれませんが、物理的にやらないといけません。ですので、導入するタイミングが今なのかどうなのかというのは結構難しい問題だと思います。

 
-難しいですよね。

LoRaやSIGFOXのソリューションを見るたびに、15年、20年前に調べていたポケベルのデータ通信を使った海外のアプリケーション事例を思い出します。そっくりなのです。海外では当時「少しのデータで、こんなところでも無線通信で見える化できる」という話がいくつもありました。

日本でそこまでソリューション導入が進まなかった理由として、ポケベルがデータを端末から送るだけの片方向だった点もありそうです。海外のポケベルは双方向だったので、集めたデータをどう端末に送るかという、今のIoTっぽいデータのやりとりができました。当時はIoTという言葉はなかったですが。

例えばアメリカで、ポケベルを使った心電図の医療ソリューションの事例がありました。患者宅にある医療機器にポケベルが付いていて、その計測データが今風に言えば病院のクラウドに送られ、グラフ化されて、院外にいる医師も、自宅にいる患者も心電図を手元のポケベルのディスプレイ上で見られるのです。遠隔監視ですよね。

次ページ:LPWAを導入するうえで大事なこととは。

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