国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構（以下、JAXA）と、JAXAの光衛星間通信システム「LUCAS」における光通信機器のプライムメーカである日本電気株式会社（以下、NEC）は、先進レーダ衛星「だいち4号」と、約40,000km離れた静止軌道の光データ中継衛星との間で、「LUCAS」を利用した光通信（通信光波長1.5μm帯、通信速度1.8Gbps）を行い、静止衛星経由で観測データを地上局へ伝送することに成功した。
「LUCAS」とは、光通信を、静止衛星を用いたデータ中継システムにおける地球観測衛星と静止衛星との間に適用することで、前世代の電波を用いたデータ中継技術衛星「こだま」の伝送速度「240Mbps」に比べて、7.5倍の「1.8Gbps」で地球観測衛星からのデータ伝送を可能としている光衛星間通信システムだ。
JAXAとNECは、2024年10月に、「LUCAS」の地球観測衛星用の光ターミナル「OLLCT」を搭載した「だいち4号」と、静止衛星用の光ターミナル「OGLCT」を搭載した「光データ中継衛星」との間で光衛星間通信を確立し、技術的な実証を続けてきた。
今回の発表は、その後の光通信確立状態において、「だいち4号」の観測データの伝送に成功したというものだ。
今回の「LUCAS」を利用したデータ伝送の成功により、利用可能な地上局が無い領域において、地上局との直接通信によるデータ伝送では難しかった大量の観測データの即時的なダウンリンクを行うことができるようになる。
上図は、「LUCAS」を経由してダウンリンクした画像であり、北極からヨーロッパ、アフリカ大陸を縦断するようにして30分間に渡り「だいち4号」が観測した大容量のミッションデータを画像化したものだ。
地上局への直接伝送では、複数回に分けて伝送する必要があるところ、「LUCAS」を利用することによって、非常に広大な領域における観測データを一度の通信で取得することができた。
今後JAXAとNECは、今回の成功を機に、関係機関・協業先と連携しながら、衛星間光通信の技術開発を継続していくとしている。