建設業界において、公共工事着手前に発注者へ提出する「全体施工計画書」の作成業務は、大きな負担となっている。
同計画書は国土交通省の指針に沿って地方整備局ごとに詳細な規定が設けられており、規模によっては500ページを超えることもある。
正確性と高い専門性が求められるため、これまでは経験豊富な技術者のもと多数の担当者が手作業で作成しており、属人化と多大な工数が課題とされてきた。
こうした中、大成建設株式会社は、最新のマルチモーダル生成AIを活用し、土木工事における全体施工計画書の作成を支援するシステムを開発したと発表した。
同システムは、画像やテキストなどの複数情報を統合して処理できる視覚言語モデル(VLM)を基盤としている。
入札公告や特記仕様書といった公共工事の発注情報と、同社が蓄積してきた技術提案などの社内ナレッジを入力することで、AIが文書を解析して必要な情報を抽出する。
その後、専門用語や文章、図表を適切に組み合わせ、約10分で計画書のドラフト原稿を自動生成することが可能だ。
生成された原稿は、国土交通省の書式に準拠したWord形式で正確に出力される。
これにより、従来のAIチャットボット利用時に生じやすい入力ミスを抑制し、事後の文章修正や図表の差し替えも容易に行える環境を実現している。
なお、生成AIの業務利用においてリスクとなるハルシネーション(もっともらしい嘘の生成)への対策として、AIの出力の信頼性が低い箇所を自動特定する技術も搭載されている。
これにより、誤情報の出力を抑制し、特定された箇所を経験豊富な技術者が重点的に精査することで、高品質な計画書を効率的に完成させることができるということだ。
大成建設によれば、同システムの導入により、経験の少ない社員であっても正確かつ迅速な作成が可能となり、作業時間を従来比で約85%削減できるという。
また、システムを通じた作成プロセス自体が、同社が培ってきた施工ノウハウや安全管理の知見を学ぶ機会となるため、人材育成や技術の伝承への効果も期待されている。
同社は今後、同システムで確立した生成AIによる文書作成技術を全社へ展開し、業務効率化を進めていく方針だ。

