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IoTの接続性を検証する第三者による認証サービス -アリオン インタビュー

日本で依頼し、グローバルでロゴ認証試験や接続性検証などを行える第三者認証 -アリオン インタビュー

日々の生活を取り巻く製品はIT化が進み、一昔前では考えられなかったものまでインターネットに繋がるようになった。

多種多様な製品が様々なメーカーから販売されている昨今では、実際の接続性に関しては担保されていない場合が多い。そのため、実際にIoT製品を使用する側に回ってみると、繋がる・繋がらないといったクリティカルな問題に直面するケースが少なくない。仮に販売した製品がそのような問題を引き起こした場合、メーカー側に対するクレームに繋がるばかりか、最悪の場合、製品ブランドに傷をつける結果になることも考えられる。

アリオンは、規格ロゴ認証試験や相互接続性検証等の品質検証サービスを主に提供している会社だ。USBやWi-Fi、Bluetoothといった認証試験を取り扱うほか、前述したような有象無象の「目に見えない」問題を「見える」化し、その原因を分析する開発部門の方にとって知る人ぞ知る存在といえる。

台湾の台北に本社を構え、日本(東京)、中国(上海/深セン)、韓国(ソウル)、米国(ポートランド)、そして2018年夏に新設されたEU(ハンガリー・ブダペスト)の各拠点でサービスを展開している。今回、その詳細について話を伺った。

  • お話いただいた方
  • アリオン株式会社 経営戦略室 兼 新規ビジネス推進室 室長 髙橋 俊輔氏(トップ写真右)
    アリオン株式会社 新規ビジネス推進室 マーケティング担当 上西 渡累氏(トップ写真左)
    アリオン株式会社 標準化・認証事業部 係長 エンジニア 久保 哲氏

  • 聞き手
  • 株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二

     


    「目に見えない」問題を「見える」化する 要因分析が第一歩

    上西: アリオンのサービスとしては大きく二種類に分けることができます。一つは認証試験サービス。USBやWi-Fi、Bluetoothなど、標準化規格に対する認証試験を実施しています。もう一つが第三者検証サービス。接続性検証など、お客様のご要望に応じる形で試験内容をカスタマイズで作成しています。実際に問題が出たとき、お客様の製品側の問題なのか、テスト環境によるものなのか、もしくは接続不良デバイスの不具合かわからないので、どこに問題があるかしっかりと切り分けて報告します。

    小泉: 接続互換性の検査では、何が問題でつながらないことが多いのでしょうか?規格通りに作られていないのでしょうか?

    上西: 一概に何が、と言えないところですが、例えば標準規格に関してだと、規格書通りに作られているとしても、自社のチップ同士だったらつながるのに、他社とのチップとの互換がないなど、キーパーツの互換やソフトの互換がとれていないこともあります。

    小泉: ハード面もソフト面もどちらもありえると。プロトコル的には間違っていないのですよね?

    髙橋: はい。だから、シェアの高いものから接続互換をとってください、とお伝えしています。開発の場では、例えば市場に数あるAndroid携帯の中でも、特定のAndroid携帯だけ結果が思わしくない、ということもよくあります。これに加え、輻輳(ふくそう)という「目に見えない」問題もあります。いろいろなネットワークが飛び交っている状況下では、接続性を確保する厳しさは広がっています。

    上西: 通常の認証事業社では、試験後の結果がPass/Failといった情報でしか送られてきません。アリオンでは各項目の試験結果に対し、どういう原因でFailとなったか、どのように対策を取ればよいか、といった試験後のサポートまで手厚く行っています。最近ではスマートホーム分野で、様々なデバイスがつながりだしているので、かなり力を入れています。

    髙橋: なぜ事後サポートまでしているかというと、認証を取得したからといっても、必ずつながるわけではないからです。一般的に認証だけを提供している機関が多い中で、アリオンではつながるかどうかが重要だと考えていることから、互換性検証も行っています。

     

    小泉: このロゴだけ見ると通信レイヤーの話かと思ってしまいますが、ソフトウェアレイヤーも対応されているのが面白いですよね。

    髙橋: ある程度ユーザビリティに近いところまで下りていきます。社内的な話でいうと、認証と互換性検証は事業部も違います。モノづくりをする企業は、最初は「検証は自社でやるから」とおっしゃいますが、モノづくり企業が全世界の対象デバイスを揃えようと思ったら非常に大変です。われわれはそれらを持っていて管理しているので、必要に応じて使っていただくと良いと思います。

    上西: 例えばIoTでは、実際にどういうケースで使われるかといったことが検証を行うために重要となります。そのために、対象となるデバイス本体を準備するだけではなく、様々な製品の運用シナリオも開発しています。南投ラボではIoTイノベーションセンター(外部リンク)というIoT製品専門の検証設備を構築しており、そこで互換性試験やベンチマークといった様々な試験を行っています。

    アリオン株式会社 新規ビジネス推進室 マーケティング担当 上西 渡累氏

    次ページ:日本で依頼し、グローバルで認証試験を行うことができる

    日本で依頼し、グローバルで認証試験を行うことができる

     

    上西: 試験や技術コンサルティングを行う製品分野としては、大きく分けるとスマートリビング、オートモーティブ、パーソナル、エンターテインメント、インダストリーです。インダストリー分野は幅広い業界から問い合わせいただいており、昨今ではIoTのSIerやディベロッパー等からの引き合いが増えています。

    小泉: オートモーティブでは、どういったことをされているのでしょうか?

    髙橋: 現在オートモーティブ分野では、世界中のスマートフォンとの互換性検証に関するご依頼が一番多いです。これまで、OEMが自動車分野やモノづくりのヒエラルキーのトップだったので、モノゴトを全て決められることができていました。

    しかし昨今、カーメーカーが一番困っているのは、端末に問題があったとしても「スマホとつながらない」というクレームがディーラーに入ることです。そこからエスカレーションして、最後にはクルマの開発エンジニアに問題があがってきますので、それを防ぐために、市場に出す前にできるだけ多くのスマホと検証しているのです。

    小泉: コネクテッドカーだと位置情報を発信したりしていますが、その部分は対応されているのでしょうか?

    株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二

    髙橋: TCU(テレマティクス・コントロール・ユニット)と呼ばれる通信の検証は今年頭くらいから依頼がきはじめており、対応が逐次始まっています。国内向けのクルマを開発しながらも、世界での検証も必要です。世界の通信網によって振る舞いが微妙に異なるので、アリオンでは日本で話を受けて、全世界拠点でグローバルの通信網を使って検証をすることができます。

    小泉: なるほど。ですが、グローバル拠点として、ヨーロッパがありませんでしたね。

    髙橋: 今までは欧州での検証の際はパートナー企業に委託をしていましたが、この9月に欧州拠点がハンガリーに立ち上がります。現在は欧州も含め、オセアニア、アジアパシフィックも出張対応か現地のパートナーを使って、全世界で25か国以上の現地網で検証をしていきます。

    小泉: エンジン自動車が電気自動車になることによって、検証ポイントが増える気がしています。クルマを制御するためのコントローラーが動力やブレーキに指示をだしていると思いますが、そこはまだネットワークではなく電気信号なのでしょうか。

    髙橋: まだその辺は昔のハーネスと同じ仕様でやっていると思います。ただ、そのハーネスも含めて、これまでの通信プロトコルではCAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)などが主流で、クルマの中だけのデータ量がそれほど大きくないことから、時間と通信品質を重点にやっていました。

    それが今後は、これまでの車載通信バスに加えて、センサー、車載カメラ、マルチメディアデバイス等の通信が要求されるため、CANやLINのレベルでは足りなくなり、MOST(Media Oriented Systems Transport)、BroadR-Reach(ブローダーリーチ)、Ethernet(イーサネット)が出てきて、どれだけの帯域が必要なのかということで、われわれもクルマ用のEthernetの品質も、新しい検証サービスも立ち上げています。

    アリオン株式会社 経営戦略室 兼 新規ビジネス推進室 室長 髙橋 俊輔氏

    次ページ:サプライ・チェイン・マネジメント支援も実施

    サプライ・チェイン・マネジメント支援も実施

    髙橋: 最後に、サプライ・チェイン・マネジメント支援についてです。日本のお客様がモノづくりをするときに仕様だけ作って、あとは中国や台湾でアウトソーシングする際、仕様書通りに作られないといったことがあります。その際、間にわれわれが入って、ODM(Original Design Manufacturing)をプロジェクト管理するサービスも行っています。

    モノづくり企業とODM企業でモノづくりを進める際に、言った言わないの押し問答になってしまうことが多いためです。われわれは、実は大手企業のプロジェクトを裏方でマネージしていたりします。 費用を低く抑えようとして外注していたにもかかわらず、品質管理や問題確認も合わせてアウトソースしなかったことで、かえって多大な経費を注ぐことになってしまった、という痛い思いをしたメーカーも少なくないはずです。

    小泉: そういったことまで対応されているのですね。

    アリオンの東京ラボ見学

    上西: 認証試験などを行うためには専門的な設備への莫大な投資が必要になる上、定期的な機材のアップデートが不可欠です。様々なソリューションベンダーの機材を取り揃えていることに加え、アリオンの特徴として、試験を効率化するためのテストツールやフィクスチャも自社で開発しています。これらは、USBやHDMIなどの技術規格を定める協会が「アリオンの製品を使ってください」と指定していることもあります。

    今日は日本にある試験環境を、一部ではありますがご紹介します。

    エンジニア 久保: こちらは、バートと呼ばれる専門的な試験装置で、信号を発生させお客様の製品に入力して戻し、信号の品質やエラーが出ていないかなどを評価します。アリオンでは主にUSB製品などを中心に、高速インターフェースの信号波形を確認しています。

    バートと呼ばれる専門的な試験装置

     

    久保: 下記はオシロスコープです。電気信号の波形を表示する装置で、20GHzまで測定することができます。こちらも、DisplayPort、USB、HDMIなど、高速インターフェースの信号を出力する製品の波形を見て評価します。

    オシロスコープ

     

    久保: 続いてこちらは信号発生器で信号を出力する試験装置です。こちらも20GHzまで対応しており、信号を出力してお客様のテレビやモニターなどの製品に入力して、画面がきれいに映るかどうかなどの評価をします。

    信号発生器

     

    久保: MCPCという充電器の安全認証のロゴ認証試験も行っています。MCPC認証できる製品は温度センサーがついていて、ヒーターで暖め温度が上昇してくるとシャットダウンする必要があります。そういう仕組みをお客様に実装してもらい、ある程度の温度でシャットダウンしないとパスしない試験です。

    そして、下記は電子負荷と呼ばれる試験装置です。例えば、3Aの充電器を4A流そうとした場合に、シャットダウンするか試験します。数種類の試験をパスすれば、MCPCの認証試験にパスし、ロゴマークが使えます。

    電子負荷

     

    上西: 今日は来客があるためお見せできないのですが、他にも、Bluetooth試験用の設備ボや、Wi-Fi試験用の暗室などもあります。本日は日本の環境をご覧いただきましたが、台湾には3m四方の電波暗室が合計12機、通路の両端に方側で6機ずつ並ぶ景色は、訪問されるお客様も驚かれます。ぜひ、次回は台湾まで起こしください!

    小泉: 本日はありがとうございました。

    【関連リンク】
    アリオン

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