2019年11月14日~15日の2日間、NTT武蔵野研究開発センタでは毎年恒例の「NTT R&Dフォーラム」が開催された。
今年のコンセプトは「What’s IOWN? – Change the World」となっている。
IOWN(Innovative Optical and Wireless Network)とは、ネットワークから端末までの伝送をすべて光化を行い、電気制御のによる能力を大幅に超える、大容量、低遅延、低消費電力を実現することとし、2030年の商用化を目指している構想だ。
今年の「NTT R&Dフォーラム2019」では、このIOWN構想のもと、NTTグループが取り組んでいる様々な実ソリューションから研究成果まで多くの展示が公開された。
本レポートではその一部を紹介する。
NTTの構想するDigital Twin Computing
工場そのもの、または工場の生産機械や航空機のエンジン、自動車といった対象物の形状や状態、機能などをサイバー空間上で正確にコピーを行い、サイバー空間上で将来予測や様々な可能性のシミュレーションを行い、その結果に基づいて実世界へのフィードバックや制御を行うデジタルツイン。
NTTが目指すデジタルツインの概念は、多様なデジタルツインを自在に掛け合わせて様々な「デジタルツイン演算」を行うことで、これまでになく大規模で、高精度な実世界をデジタル上に再現するにとどまらず、ヒトの内面までも含んだ相互作用をサイバー空間で実現することと説明をしている。
現時点ではコンセプトとなっているが「ヒトのデジタルツイン」についてデモンストレーションが行われた。
また、NTTは、Digital Twin Computingの実現に向けて「DTCイノベーション・フォーラム」を立ち上げパートナーの募集を開始した。
フォーラムでは、Digital Twin Computingのコンセプトを精密化、実現方法の具体化、様々な課題の分析と解決策の検討、研究開発、フィールドトライアルなどを通した社会実装の推進などを行っていくという。
2センチメートルの測位を実現するクラウドGNSS測位アーキテクチャ
GNSSレシーバーが受け取った衛星データのうち、より測位に適した衛星を自動的に選択し、かつGNSSレシーバの測位演算処理の一部をクラウド/エッジ上で行い潤沢なリソースを活用することで高精度な測位を行うというもの。
従来の方式では、画面右の赤線のように数メートルのブレが生じているが、この方式では左の緑線のようにほぼ直線上に位置情報を取得していることがわかる。
国土地理院により全国に設置された約1,300点の電子基準点と、ドコモが設置する独自固定局も合わせて観測データを配信サーバにて収集し、配信サーバで加工した位置補正情報を移動局に配信するクラウドでの処理を行わない方式もすでにある。
この方式でも数センチの誤差は実現しているが、適用範囲を広げるには移動局の小型化や省力化が必要であるためクラウド側で演算する技術開発が重要になってくるという。
限りなく文脈に沿った対話で、雑談が弾む対話AI
2018年11月に開催された「対話システムライブコンペティション」で優勝をしたNTTコミュニケーション科学基礎研究所の対話AIがデモンストレーションとともに展示されていた。
過去に様々な対話ロボットを見てきたが、ユーザーを飽きさせないためのシナリオ作りや、どんな発話にも返答ができるようにするための1問1答の仕込みは、サービス提供者側の相当の苦労を感じていた。
また、対話ロボットに話しかけても、文脈に沿わない返答が返ってくるため、いまいち会話が弾まないことで徐々に利用頻度が減っていくユーザー側の声も聞くことが多かったが、この対話AIのデモンストレーションでは文脈に沿った自然な対話が行われており、飽きがこない対話AIの実現を感じさせた。
従来の対話AIでは、発話の中のキーワードを認識してそれに対する返答をするのが主であったが、この対話AIはユーザーの話したイベントを「いつ」「どこで」「だれが」「なにを」など、構造化されたイベントとして理解をすることで、イベントの内容に即した共感や対話展開を実現しているとのことだ。
米国ラスベガス市で採用されている公共安全ソリューション
米国ラスベガス市では、監視区域にカメラ映像や収音マイクを設置して、それらの情報をエッジ側で分析することにより、迅速なインシデントの検知と対応を実現しており、ここにNTTの公共安全ソリューションが採用されている。
実際ここでは群衆人数検知と群衆混雑予測、逆走車両検知、逆走経路予測、異常音検知、事件性の高い事象予測が行われており、警官の配備などに利用されているとのことだ。
今後は、より広範な利用シーンに対応可能なデータ分析基盤およびオーケストレーション機能の強化をするとともに、北米他都市および世界他地域への販売拡大を目指している。
リアルタイム人流データ同化技術を組み入れ実施したMaaS実証実験
NTTの開発した、複数地点のLiDARで計測した人数データをもとに、リアルタイムに複数ある経路ごとの人数を推定する「データ同化技術」を用いて、駅利用の分散の実証実験を行った。
日産スタジアムから周辺の駅までの経路ごとの人数を推定し、各駅の列車の発着時刻と経路ごとの推定人数情報を用いてモバイルサイトに混雑予測として表示することで、一つの駅への混雑の集中を分散させる実証実験を行った。
存在を意識させない「透ける電池」
昨年も展示されていた「透ける電池」がさらに進化して展示されていた。
昨年は透明度が23%で茶色がかっていたが今年は透明度が69%になり視覚的にはかなり透明感のある電池に進化していた。またそのサイズも100mm角からA4まで大きくなり蓄電容量も50倍に増えていた。
現時点ではまだ基礎研究レベルではあるが、窓などのガラス製品に適用し蓄電可能なガラスの実現や、衣類や紙類への適用。また、寿命や耐久性も向上させていくという。

