今週、当社のコンサルティング事業をよりブラッシュアップするため、中国、深センを訪問した。細かなレポートは追って行うが、この記事は概要として、大きく見える変化についてレポートする。
実は、私は、2年前MakerFair深センの取材で深センを訪問しており、深センがこれほどまでに騒がれる前には上海にもなんども訪問していた。その際、深センの熱量に驚いたものだ。今回の訪問では複数の企業のトップとの商談だけでなく、街の状況も見たいという目的を持っていた。
深センの秋葉原「華強北」
まず、いわゆる深センの秋葉原「華強北」だが、2年前と比べると少なくとも大通りについては道路も完成していて、街も随分きれいになっていた。
昨年上海でも感じたことだが、パーツ類が売っているお店は相対的に縮小していて、完成品を販売する店が増えているという傾向になってきていた。
また、数年前までは、完成品を買おうと店員に話しかけると、実際には動かないものを「動く」といって売りつけようとしていたが、「こういう風に動く」「これはできない」というように、きちんとスペック等を説明してくれるようになっていた。(以前は専門知識なしで、売りつけようとしていたのかもしれない)
また、さまざまな商品を国際貿易前提で卸売するというお店も増えてきていて、商売自体の質的な向上を感じることができた。
他にも、2年前はドローンがメインテーマだったこの街も、今年はロボットが販売されていたり、AIという文字が躍っているという状況に様変わりしていた。ロボットについては、まだ制御技術が成熟しているとは言えない状態だし、AIに関しては大手IT企業のそれはともかくなんでもAIと呼べば良いというものではないという点については日本国内とあまり変わらない感触だが、勢いを感じるということだけは言える。
街に行くと、この5年で建設されたという近代的な建物のエリアについては、清潔感もあり、道路も整備されてきていた。
シャオミ(小米)のフラグシップ店
崗廈(こうか)にある、深センいちのショッピング街では、「アップルストアと無印良品のお店を足して2で割ったような」と称される、シャオミ(小米)のフラグシップ店舗が建っていた。
正直、アップルの製品ほど洗練されている製品ではないし、商品も汚れていたりして、そう言われた側からすると「違う」と言いたくなるようなものだが、休日ともなると行列ができるのだという。
無人店舗とQR決済
最近よく話題となる「QRコード決済」については、「PR的に建てられた」という無人コンビニや無人スーパーが通常稼働している。(この決済まわりのレポートは別途行う)
「無人」というと、お店にスタッフがいないイメージを持つ人もいるようだが、実際は陳列なども必要なのでどの店にも人はいる。
どちらかというと、決済が無人で行われるというイメージでとらえると良い。
WeChat Payやアリペイが普及しているので、この手のサービスは違和感なく使える一方で、監視カメラが街中にあり、決済自体も個人の信用情報と紐付いていることもあって、万引きをするということはほぼないのだという。
他にも、無人餃子店、カメラで顔認識をして注文をすすめるケンタッキーフライドチキンと、様々な取り組みが進む中、徐々にサービスレベルも向上していくことが容易に想像がつく。
こういった、コンシューマ向けサービスは、実際にリリースしてみて問題点を運用の中で洗い出していかない限り正解は見えてこないとので、PR目的とは言え、時間の経過とともにデファクトスタンダードなやり方が見えてくるのも時間の問題だ。
こういった、様々な動きを見ている中で、アテンドしていただいた中国人に、日本人との差を聞いてみると、
「中国人は、新しいことをやることを歓迎する。便利だったり、得だったり、名誉だったりすることがあったら、どんどんやる。一方で、日本人はプライドが高いので、新しいことをやりたがらない。」
ということだった。プライドが高いという表現についてはやや違和感があるが、新しいことをやりたがらないという点は賛成だ。
一方で、決済のところでも書いた通り、「管理社会」や「信用情報との紐付き」が前提となって、これらのサービスがアグレッシブに実現できているのだとすれば、果たしてこのやり方が日本にとって正解なのか、改めて考える必要があるだろう。
ところで、このQR決済、外国人には決して優しいとは言えないのだ。
ローカルのレストランでは国際クレジットカードが使えず、WeChap Payやアリペイも外国人は申し込めないので、現金しか利用できない。
よく現金は嫌がられるという記述を見かけるが、私が体験した限り、現金がダメと言われるケースはもともとWeChat Payを前提としたテンセントが運営するスーパーや無人スーパーの類だけだった。
この辺は今後改善されてくるのだとは思うが、現状は中国国民で電話番号も持っていないとサービスを利用できないという状況だった。
シェアバイク、EVなどの乗りものの変化
シェアバイクだが、街中では使われているようだったが、平地が多く短距離移動が多いところでは使われているが、都心部から車で行くような距離のところではあまりシェアバイク自体置いていなかった。
実際に乗ってみると、安いサービスではタイヤがチューブタイヤであったため、漕ぐのにはちからがいる。
鍵の部分は大半が電池なのか大きな装置が付いているが、電池を取り替えるためのネジのようなものが見えなかった。これについては、数年乗ったら自転車の方が壊れるから、電池も取り替えない前提ではないか、という話がでた。こういうあたりも、日本だと電池を取り替えられるようにしたり、電動にしたりと少しやりすぎな部分もあるのかもしれない。(坂が多い東京では電動の方がありがたいが、中国では自転車に向かないエリアでシェアバイクはそもそも置かれていない)
電気自動車の普及のために、青い色の新しいタクシーと、市内を走るバスについては電気自動車になっていた。
電気の場合、距離が移動できないので、こういった切り分けになるということだ。
我々はここから、何を学ぶべきなのだろうか。国民性の違いや、その時の社会情勢、既存インフラの存在など実情を考えないと単純な比較はできない。
しかし、新しい取り組みについて経済合理性を考えて、どんどん施策を実施しかなければ、抜かれるどころか置いていかれてしまうという危機感を感じた。

