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具体的なテストベットで見るIoT ウフルIoTパートナー・コミュニティ・フォーラム レポート

IoTのパートナーコミュニティは様々あるが、なかなか具体的なテストベットが公開されるケースが少ない。
ウフルを中心としたパートナーコミュニティでは、この半年間で7つのワーキンググループの活動があった。

ウフル、IoTイノベーションセンターの松浦氏によると、IoTにおいては、「儲かるビジネスモデルがわからない」、「どこと組めば良いかわからない」、「物売りからサービス売りへ転換できない」、「業界別課題を理解したい」、「ソリューションを実行する場所がない」、など様々な課題が言われる中、このコミュニティのワーキンググループはそれぞれの課題を解決していく、ということだ。

今回のイベントでは、ワーキンググループの活動を発表する場となった。

IoTxAI 集めたIoTデータ活用の次のステップ ウィングアーク1st 武市氏

IoTパートナーコミュニティ

IoT活用の3つのステップは以下だ。

1)データをどのように集めるか?
2)データをどのように貯めるか?
3)データをどのように意味づけするか?

これらを実現するために、マシンラーニングの活用を考えたということだ。

今回の発表では、実データの分析とアウトプットの事例を構築する。技術をまとめ説明するということだ。

生活の中でのIoTxAI=(駐車場+飲食店)xAI

飲食店にクルマでおとずれる顧客をイメージした場合、様々な課題がIoTで解決することができる。

今回の発表におけるシナリオとしては、

1. 車を使って飲食店を訪問する
2. 入店までまつ
3. 席を案内される
4. 注文する
5. 会計を済ませて帰る

という流れをイメージする。このユースケースでは、駐車場の空き状況を把握したり、近い駐車場や提携駐車場を利用する。待ち時間を知るということが考えられる。また、店内ではオススメのメニューを知る。といったお客様サイドのニーズもある。

店舗側からすれば、「クルマでくるお客様が増えて欲しい」「(お酒を提供する上で)ドライバーかどうか知りたい」「どのようなメニューを提案すればよいか知りたい」「混雑時期や適切なスタッフの配置を知りたい」といったニーズがある。

そこで、ATIS 交通情報サービスと、三井のリパークの駐車場データを活用し、駐車場の空き状態を見ることにしたということだ。さらに、飲食店の情報を都内14箇所でのPOSやHANDY端末のデータを活用することでオススメメニューが何かを見極める。さらに、ソーシャルやWEBから取得できる情報をも活用したという。これらを下の図の構成で分析、見える化を行ったというテストベットだ。

駐車場の空き状況管理

入力データとなる、駐車場の空車率や天候などのデータを分析することをやったというのだが、分析するにも長期間にわたるデータ、周囲のイベントの開催状況、予定などの正しい情報が必要となる。また、いくらデータがあっても予期しない状況が起きた場合、異常値がでることも考慮するべきだ。

例えば、東京ドームの日程ではクライマックスシリーズが予定されていたが、実際には試合がない場合、予想に反して客数がすくなくなる。こういう場合は、その点を補正することで良くなったというようなことも起きるのだという。

店舗におけるオススメメニューを考えるAI

また、オススメのメニューを考えるAIを作ってみたということだ。

やってみて、精度をあげるためには、店舗ごとにデータが違うので、データを統一させた方が良い。商品の特性という軸をつける。ということが重要だと感じたということだ。

デモ

・お客様向けアプリ
様々な情報を機会学習させたAIを活用することで、お客様がオーダーするときに、3名、一人当たり2,000円だとどういうメニューがよいかということがわかるという。ここで、金額や、人数を変えると予算に応じて複数のメニューを提案することができるということだ。

・店舗オーナー向けアプリ
提案したメニューと実際にお客様が注文したメニューなどもわかるということだ。

・駐車場アプリ
安い駐車場の料金ランキングがわかり、5分間隔で空車状況がわかる、予約状況から、AIを使った満車予測もわかるということだ。

最後に、実際にアプリ開発をした結果として、データをどのように見える化するか?が重要であると述べた。

今回のテストベットは、非常にわかりやすい例で、思いつきはするが実際にAIを構成し、評価するところまでやっているケースはあまり見ないのでとても有益だと思われる。引き続きこのケースについての研究が進めば、実ビジネスとしても十分機能するものとなるだろう。

流通WG オムニチャネル時代における流通革命へ オプテックス 中村氏

2つ目のWG(ワーキンググループ)は、流通がテーマだ。

現在、オプテックス社では、流通業向けにセンサー・通信・その他デバイスを導入しているが、実店舗とネット店舗のポジションを捉えながら流通改革を行っている。その一方で、センサーデータやPOSデータ、顧客の状況などもデータ化されることが近年多くなってきている。そこで、顧客の購買力や店舗の運用効率が改善できるのではないかと考えたということだ。

その中で、ECとリアル店舗との違いをどうとられるのか?ということが重要だと考え、店舗及び、ECでの課題を明確にするために検討したのが下の図だ。

今回のテストベットとしては、オイシックス社がIoTのPoCに興味を持ってくれたため、実際の店舗を活用してテストベットを実施してみたということだ。

WGチームによる、実際のオイシックス社へのヒヤリングの結果、「商品の売り場変更の兆しを捉える」「ベストプラクティを構築する」「売り上げがどこまで上げられるか」ということがポイントであることがわかり、結果、リアル店舗でもECと同じ、ユニークユーザ数や滞在直を取得できないかということが主な課題となったという。

実際に、店舗の利用者層に関しては、10%程度の利用者の属性しか明確にできていないのが一般的だといわれている。

そこで、IoTを活用を考え、主に、顧客の動線をみるために実店舗に4種類のセンサーを設置したということだ。

・人数カウントセンサー
・レジに待っている人を検知し、年齢推定するカメラ
・温度、湿度、環境センサー

この取り組みにおいては、モノ(デバイス)の店舗への設置が一番難しかったということだ。

というのも、店舗にはかならずしも適切な設置場所があるわけではないし、どこに、どの角度につけるか、個人情報に対する取り扱いなど、設置には多くの課題が発生したというのだ。通信に関しても、例えば、BLEを活用したネットワークではうまくハンドシェイクすることができなかったという課題も発生したという。

データを安定的に取得するには、無線システムより有線システムが良く、店舗の飾り付けの変更によって、天井に設置されたセンサーが目隠しにされる可能性があったり、商品入れ替えや、レイアウトの変更によって設置条件が変わるなど、様々な課題に対応することが重要だということがわかった。

センシングを行った結果としては、人数カウントセンサーでは従業員の出入りもカウントすることがある。行列のでき方は、行列の方向が日によって変わる。

上から撮影するカメラの場合、正確に年齢推定ができない、センサーの電池切れやなど環境センサーも安定的に情報を取得することができなかったという課題も発生したということだ。

リアル店舗の売り上げ向上のために何ができるのか、を考えるのが次のフェーズでできることだ。

今回のテストベットでは人の動きに着目しようとしている。従来、店舗の入り口など固定的な場所での人数カウントはされてきたものの、店舗内の回遊状況や、どこに人が来やすいのか、どこがデッドスペースになっているのか、を知ることは店舗にとってはとても重要であるとも言える。一方で、今回のテストででた課題のすべてを潰していく、導入が簡単な仕組みを構築することができないと、運用には耐えることができないのかもしれない。今後のさらなる検証に期待がかかる。

WG3 ヘルスケア活動報告 Z-WORKS 小川氏

ヘルスケアワーキンググループは、介護を中心としたWGだ。高齢者に対する課題を明確にすると以下の5つの課題があるのだという。

5つの高齢者層問題
・認知症問題解決
・介護支援
・介護予防
・アクティブシニア向け
・独居高齢者宅

IoTでよく言う、「見守り」ではなく、介護予防や健康寿命延伸をやっていく、宅内センサーで高齢者の状況を確認することで、日中の運動量を上げていき、健康増進のためのアドバイスに利用するということを考えたということだ。

そこで、Fitbitを活用して歩数や距離などの情報を取得し、モチベーションを向上する。最終的にはライフスタイルの提案や介護保健外サービスへの展開をやりたいと述べた。

実際にテストを行うと、高齢者の7割から8割がスマートフォンを持っていないので、スタッフが高齢者と対話し、クラウドに情報をアップロードすることになったたという。

アウトプットとしては、歩数や消費カロリー、距離からわかる範囲だけで表現することとなったということだ。

今後、Fitbitからデータを吸い上げる歳、スマートフォン以外でのデータ吸い上げのための機器を提供したり、テレビをつかったフィードバックを行いたいと述べた。

スマートフォンは、非常に優秀なIoTデバイスとなる。時にはセンサーとなり、時にはゲートウェイの役割をするからだ。しかし、今回のように実際にやってみるとターゲットユーザがスマートフォンを持っていない(必要な機器を持っていない)というケースは多くあるだろう。テストベットを超えて、実用化に進むには、リアルデバイスを製造するという壁も発生することがしばしばだ。サービスの有用性と共に、ビジネスモデルの構築も見えてこないと簡単には実用化に進まないのかもしれない。

WG6 大手飲料メーカー向けWG ニフティ 米田氏

大手飲料メーカー向けWGでは、今後、IoTの世界で流通や小売店、飲食店での販路に関してどういう変化が起きるのかを検討すしたということだ。

IoT時代では、卸や小売を通り越し、メーカーは顧客と新たなコミュニケーションが実現できると考えた。一般消費財メーカーでは、流通・小売を通じた商品提供のため、最終消費者との接点が作りにくい、店頭販促に頼らざるをえないという課題があった。

そこで、店頭販促に頼らないユーザ・エンゲージメントを高めるIoTを活用して実現するということを検討したということだ。

具体的には、「美味しいビールxIoT」をメインテーマとしたという。

飲料メーカーにおける、製造から消費者の手元に届くまでのプロセスにおいて、調達から販売までのプロセスはメーカーでコントロールされている一方で、卸から小売、自動販売機に入った後については、メーカーからは見えにくい領域となっている。

一方で、IoTによって、メーカー、店舗、エンドユーザの三者がトリプルウィンの関係になるモデルが構築可能だという。

・ビールサーバの状態の可視化
サーバの樽生ビールからビールサーバまでの間のチューブの温度が常温であるため、不味くなるという事象が起きる。そこでセンサーをおき、洗浄状態を可視化するというのだ。

・店舗内サーバ管理オペレーション
・店舗内のグラスの洗浄・管理フロー
・店舗スタッフの技術習熟度

また、タップ部分に加速度センサーをつけることで、上手い人と下手な人の差がわかり、上手い人が誰なのかを特定することができると考えたということだ。

現状、IoTを活用した満足度向上に一定のニーズがあることが分かったもの、今後飲料メーカーに限定せず、店舗オペレーションのデジタル化や消費者行動の変容のアプローチも加えたいと述べた。

店舗の洗浄オペレーションがうまくいっていないと、ビールサーバを提供しているビール会社としても、ビールの味に問題があると感じてしまう顧客がでることは機会損失につながる。常にベストの状態で提供して欲しいと思うはずだ。この取り組みがうまくいき、人による洗浄やオペレーションのムラがなくなれば、サービス改善施策としてはかなり具体的に機能するといえるだろう。

WG6 ブロックチェーンWG GMOグローバルサイン 乾氏

なにかと話題のブロックチェーンだが、実際に実装まで踏み込んだテストベットはあまりみかけない。今回、WG6では、ブロックチェーンを活用したIoTインフラでの、「本人でしか受け取れない」サービス開発をおこなったということだ。

これまでのやり方として本人情報をデータベースへの書き込み、管理するというやりかたも、もちろんできるが、ブロックチェーンでやることで、「誰がいつ、どこで、なにをしたか、ということを”証明”」することができるところがポイントとなるということだ。

具体的なデモとしては、スマートフォンと宅配ボックスにブロックチェーンの鍵をいれ、宅配ボックスにRaspberry Piを活用した制御プログラムを導入し、BLEを使ってスマートフォンを使った宅配ボックスの開閉を行える仕組みを構築したということだ。

宅配業者AがビルのBOX01、BOX02にいれると、本人しか開けられない。宅配業社しか閉めることができないボックスの「鍵を閉める権利」があるかどうかをブロックチェーンをつかって確認する。鍵を開ける側としても、部屋番号に応じたボックスしか開けることができないというデモになる。

ブロックチェーン上には部屋番号となる「101号室」というデータはなく、データストア内に入っているということだ。実際のブロクチェーンには「101号室というデータに対するハッシュ値」が格納されており、宅配業者が見るブロックチェーンには、データストアの内容を見る「権限がある」という情報が入っているということだ。つまり、ブロックチェーン上での認証サービスブロクチェーンのアドレスを投げると、法人番号が帰ってくるというプログラムも作ったということだ。

今後、より精度の高いトレーサビリティの仕組みや、課金、個人認証、インフラ提供企業との連携などを視野に入れて活動をしていくということだ。

ブロックチェーンの実装事例としては、とてもわかりやすい。IoTが我々の生活に入ってくる中で、様々な重要情報のやり取りが行われるが、何かあった時のトレーサビリティがあるという点では、ブロックチェーンの優位性はこの事例をみるとよく分かる。数年後、必ず必要となる技術だと言える。

WG5 セキュリティWG セゾン情報システム 加藤氏

世界レベルの課題となった、IoTマルウェア「Mirai」の被害は、過去最大級のDDoS攻撃となった。この攻撃は実はIoT機器が乗っ取られることによって発せられているのだ。

実際の課題としては、ハードのセキュリティとソフトのセキュリティの2つの面で見る必要がある。そこで、今後IoTのセキュリテイ上必要な対策について検討したということだ。

検討した結果、IoTを始めるときに考えないといけない、セキュリティに関する課題を明確にするという取り組みとなったということだ。

そこで、このワーキンググループでは、マルウエアMiraiや、コンテクテッドかーJeepチェロキーのハッキング、スタックスネットといった事例を取り上げ資料化しているということだ。

資料化を進める中で、IoT機器のセキュリティを向上させるには、

・初期設定をそのまま使わず、確認/変更を行う
・セキュリティアップデートを頻繁に行う
・不要なサービス/機能/環境をりようしない

ということで回避できることは多いと述べた。

インターネットに接続することを前提としていない機器メーカーが、急にインターネット対応機器の製造を迫られている局面ではある。知識不足のケースでは、機器へのログインがOSのデフォルトとなっているケースも多いという。その結果、簡単にインターネット対応デバイスが乗っ取られ、攻撃の踏み台になるというのだ。こういった問題を解決するには、まずもって、セキュリティの知識をデバイスメーカーが持つことだろう。その上で、様々なソフトウエアなどでの対策を講じていく必要がある。

WG4 スマートビルディングWG レンジャーシステムズ 木村氏

スマートビルディングというと、ビルの電力マネージメントというテーマが多いが、今回は他のことを可視化しようという取り組みだという。

実際に、ミューザ川崎という川崎にある商業ビルで検証を行ったということだ。

実施内容としては、以下のとおりだ。

1) 加速度センサーによる振動検知
2) 電流値の変動による異常検知

地下フロアにある、温水ポンプのモーターを検証の対象とし、電流と振動を測定したということだ。11/9より2週間測定を行い、しばらくメンテナンスしていない冷温水ポンプモーターと、最近メンテナンスしたモータを比較した。

センサーは、沖電気製とレンジャーシステム製で細かさが異なる。(図が間違い300msecごと)

レンジャーシステム製のセンサー
沖電気製のセンサー

レンジャーシステム製でみると、上がメンテナンスしていない側の図だ。横軸が周期、縦軸が振動となる。上は周波数の分布に対して振幅の変動が見れるのがわかる。一方、最近メンテナンスしたものは振幅の変動が小さいことがわかる。

センシングの周期を10ヘルツという短いスパンでとったのでわかりずらいが、次に沖電気の精度の高いセンサーでとった場合の違いだ。こちらでみても、周波数のばらつきに対して、振幅の変化が大きいことがわかるだろう。

さらに、電流値の測定では、あたりまえだが、モーターが動き出すと電流値があがるということが分かった。

今後検討すべき課題としては、

・みだれ=故障とは言えないので、そこをどうするのか?
・センサー側の適正なスペックがなにか(特にサンプリング周期や無線種別をどう考えるか)
・920MHz帯はとれていたが、BLEはデータの欠損も多く出た

安いセンサーだからといっても、取得できるデータは多い。簡易モーターの監視ソリューションをサービス化していきたいと述べた。

センサーの精度をどの程度求めるかは、実際のIoTのセンサー設置の現場ではよく聞く課題だ。精度が荒いものは、それだけ安くつくし、細かいものはセンサー自体が高い場合が多い。また、詳細のセンサーデータを取得する場合は、そのデータの電装経路や処理するコンピュータの性能も求めまれる。とにかくセンサーでデータをとるということを言う人もいるようだが、こういったノウハウは実際に対応したことがある企業でないとわからない部分が多いことも考慮しておく必要があるのだ。

パートナーコミュニティの総括

ウフルの八子氏は、総括として、「日本で最もスピーディーかつ、現実的なIoT検討コミュニティとなっている」と述べた。

こういったコミュニティが数ある中で、半年でアウトプットの事例が出ているということも稀だと言えよう。できた事例も参加企業で横展開も可能となる。WG別・事例別に標準プラットフォーム化していくため無駄もない。

今後、稼げるビジネスモデルの構築も継続サポートしていき、各WGの相互連携による複合的なモデルを実現したいと述べた。

日本固有の課題も日本の中で解決すると、それをソリューション化すれば海外輸出も可能となる。

最後に、「お客様・パートナー企業と新しい価値を共創したい」と述べた。

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