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IoTで変わる原価管理、mcframeで進む現場データの経営での活用 ―B-EN-Gインタビュー

IoTで変わる原価管理、mcframeで進む現場データの経営での活用 ―B-EN-Gインタビュー

基幹業務パッケージ「mcframe」などのERP/SCMソリューションを提供する東洋ビジネスエンジニアリング(以下,B-EN-G)は、2019年10月1日より「ビジネスエンジニアリング株式会社」と社名変更を行い新たな門出を迎えた。

今回は新社名でのスタートを機会に、ERP・IoT分野におけるこれまでの取り組みと今後の戦略、そして現在提供しているIoTソリューションの具体的な内容について、B-EN-G専務取締役の羽田雅一氏(トップ画像)、同社執行役員・新商品開発本部副本部長・マーケティング企画本部長の入交俊行氏、同社マーケティング部長の山下武志氏にお話を伺った。
(聞き手:IoTNEWS代表 小泉耕二)

ERPと同時にIoT化を展開する

IoTNEWS 小泉耕二(以下、小泉):まずはこれまでのB-EN-Gの取り組みと、現状のビジネスについてお聞かせください。

B-EN-G 羽田雅一(以下、羽田):B-EN-Gはこれまで世界ナンバーワンの実績を持つフルラインERPであるSAPと、B-EN-G自社開発の製造業向け現場志向の柔軟な生産・原価管理パッケージであるmcframeを適材適所で使い分け、提供してきました。しかし4~5年前からERPを提供するだけでは顧客のニーズを満たすことが難しくなったと感じていました。

一方で80年代(東洋エンジニアリング時代)からFAに取り組んでいたこともあって、かなり早期からIoTに対して注目していました。そのためERPと同時に、新しい利益創出のためのデジタライゼーションをいかに進めていくか、ということに現在は焦点を当てています。

mcframe顧客の組立加工系とプロセス系の比率ですが、総じてほぼ同じくらいです。

小泉:IoTの世界だと、ようやくプロセス系の人たちが立ち上がり始めた、という話が多いのですが、御社の場合は以前から取り組まれている顧客が多いのですね。

羽田:そうですね。これについてはERPを提供している顧客に対してIoT化の提案を行っている効果もあると思います。

B-EN-G 入交俊行(以下、入交):IoTで取得したデータを生産改善につなげやすい、ということでデジタル化については組立加工系が進んでいます。しかし最近はプロセス系もだんだんとその流れに乗ってきている印象です。

羽田:国内で売上100億以上の企業で生産管理、販売管理のパッケージが導入されている企業は3割から4割と言われています。したがって、残り6割はホワイトスペースであり、しっかりアプローチしていきたいと思っています。

業務プロセスの変革では、差別化が難しくなってきた

羽田:mcframeは最初の10年間くらいはフレームワーク型(業務アプリケーションを開発する環境と開発ツールを提供する)アプローチが主流でした。しかし最新のmcframe7ではフレームワークというコンセプトは残しながらも、極力システムの機能をそのまま使うように製品のコンセプトが変わっています。

結果として、例えばプロジェクトマネージャー兼コンサルサントが2、3人、SEが3、4人いればプロジェクトが進めることが出来るようになりました。

小泉:目指しているところはサプライチェーンのデジタル化なのでしょうか。

羽田:はい。元々mcframeをリリースした時は、それぞれの企業が自社のサプライチェーンの独自性・優位性をIT化することで差別化が可能でした。しかし現在では業務領域だけでの差別化は難しくなり、新しい競争領域で価値を生むようなデジタル化を積極的に進めることが必要になっています。

小泉:それは業務プロセスの面でも、コモディティ化が進んでいるということなのでしょうか。

羽田:その通りです。

小泉:業務ノウハウが御社の中に溜まってきているから、共通化が増えた、という面もあるのでしょうか。

羽田:製品をリリースして20年になりますので、お客様やパートナー様の意見や要望を取り入れて機能要件が充実してきたことも、もちろん背景にあります。

次ページは、「E-BOM/M-BOM連携ができない製造現場

E-BOM/M-BOM連携ができない製造現場

羽田:インダストリー4.0というと、日本ではIoTの部分が注目されますが、「設計と生産の連携」も大切です。

小泉:最近、一般論としてPLM(製品ライフサイクル管理)が売れているという話をよく聞くのですが、なぜいま急に PLMに注目されるようになってきたのでしょうか。

羽田:PLM、あるいはE-BOM/M-BOM連携というようなことは、実は20年前から言われています。ただ実際にはほとんど実現できていません。簡単に言ってしまうと、「E-BOMの世界は論理的な世界、M-BOMの世界は物理的な世界」という違いがあり、それが連携・統合を難しくしています。

我々はERPについては30年に渡り取り組んできましたが、設計については分からないことが多くありました。約2年前に設計と製造をつなぐ製品、「mcframe EM-Bridge」をリリースできたのは、図研と資本業務提携を行い、「ダイバーシンク」という会社を設立し、図研(現 図研プリサイト)の製品をmcframeブランドでOEMし、ロードマップを両社で共有しています。

小泉:しかし、仕組みがあったとしても依然としてE-BOMとM-BOMを連携するのは難しい、と言われていますよね。

羽田:実際に設計する人にとって、「工場の現場にはこういう設備がある」といった情報が共有されていないことが1つの要因として挙げられます。逆に言うとそういうことをきちんと設計の人と共有できれば、先ほどのような問題は無くなります。逆に「現場側でさらにこういう改善をした」という情報が設計に伝わるように、フィードバックすることが大事です。

今まで日本の工場では主に人間系で現場側と設計側はやり取りをしていました。しかし、海外拠点などではそうした方法は通用しません。その点についても現場側と設計側の間をデジタルでつなぐ仕組みが必要になるのです。

小泉:サプライチェーンを構築する過程で、自分の所の最終製品が次の会社に流れます。 その流れで例えばフィードバックを捌くスピードが求められている、あるいは遠隔のやり取りをするのでデジタル管理が必要になった、ということでしょうか。

B-EN-G 山下武志(以下、山下):元々インダストリー4.0ではITとOT (Operational Technology:運用技術)をつなぐ、という話と、エンジニアリングチェーンも行う、という二軸の話があります。そして後者を実現するためにはPLMとERPをつなぐ必要があるよね、というところからフィードバックの仕組みを作る話が出てきたのです。

日本の場合、顧客の要求をそのまま入れて、仕様違いみたいな亜流品を多く作らせるという特長があります。しかし、それを行うためのコストがどのくらい発生しているのか、といった情報が把握できていません。結局「儲かっていないけれど、大口の会社さんからのオーダーだから一生懸命それのためにやるしかない」ということになってしまいます。

サプライチェーン側で製造工程を効率化したところで、そもそも儲かってないものを一生懸命作るというところから脱却しない限りは何も変わりません。

入交:2005年か2006年くらいにE-BOM/M-BOMの変換が流行りましたが、その際は設計の人・工場の人が、それぞれの立場で取り組んでいたのが実情でした。

それがリーマンショックなどを経た後に、ものづくりの現場ではお互いがカバーし合おうという流れが出てきました。そこにインダストリー4.0の要はエンジニアリングの串刺しで通していく、というメッセージが強烈に効いてきているのだと思います。それが実現できているのか、というのはまた別の話になるのですが。

小泉: E-BOMとM-BOMを統合管理して、生産工程をシャープにしなければ無駄は無くならない、という話ですね。

IoTで変わる原価管理

羽田:これからは、IoTとPLMを組み合わせることで、新しいことができるのではないかと思っています。

例えばPLMとERPの原価管理を組み合わせることで、製品のライフサイクルを通した収支管理が可能になります。

今まで人間が一日に一回結果を入力して確認していたものが、IoTを活用することでリアルタイムに正確な情報が取れるようになります。ERP(原価管理含む)やIoTをきちんと導入している企業とそうでない企業の間で、変化への対応力や圧倒的な競争力の差が出てくると思っています。

小泉:そうした活用例が徐々に伝わって、その他の企業にも広がっていくのではありませんか。

羽田:そうですね。ここまでいくと経営者も「やらないとね」という話になる。逆に現場のIoTだけでは効率化に留まってしまい、全体最適にはつながりません。

小泉:会社内のデジタルトランフォーメーションの話をする際に、生産性を管理する中でIoTを使いましょう、という流れになりますが、取得したデータが経営に活かされず、全然事業の話につながらないことが多いです。しかしライフマネジメントサイクルや原価の計算につながれば、経営の形が変わってきますね。

山下:PLM、IoT、ERPなどを個々で進めるのではなく、それを全部つなげることで初めてデジタルが製造業に寄与出来る世界を作れるのではないか、という考え方を持っています。ただ現時点においては、完全に実現できているわけではないので、まだまだ試行錯誤をしている段階です。

原価管理については、2019年9月に『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画』(北山一真・尾関将・伊与田克宏著、東洋経済新報社)という書籍が刊行されている。共著者のひとりである伊与田氏はビジネスエンジニアリング・新商品開発・商品企画2部の部長である。

本書は「PLM」と「原価企画」をキーワードに、設計・開発段階でのコストマネジメントにおける課題解決の切り口を提言する。設計の課題解決したい人向けの章、原価や会計の課題解決したい人向けの章、原価/会計システムの導入やテクノロジーを活用し製造や会計の課題を解決したい人向けの章など、著者のひとり、北山一真氏いわく「複数視点の掛け算」を重要視した構成になっているのが特徴だ。

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IoTで溜まったデータの経営への活かし方

小泉: mcframe SIGNAL CHAINは、顧客の環境で取得したIoTデータは、現状溜め続けているのでしょうか。

入交:いまのところ溜め続けていますが、どこかで取捨選択するのを考えなければいけないな、と思います。

小泉:製造業の方と話をすると、取得したデータをどうビジネスに活かせば良いか分からないから、データの使い方を知りたい、という要望をよくお聞きします。

「エッジ側で取ったデータをエッジ側だけで処理して価値をだそうとし過ぎているので、データをクラウドには上げられないのですか」と話をすると、「上げたいけれどIT部門と業務部門が上手く連携できず結局、経営データと現場のデータがつながらない」とも言います。

または可視化もビジネスプロセスの中にきちんとデータが溶け込んでくれば価値が出そうな感じはするけど、「確固たる根拠がないので出来ない」と答える方もいます。こういった状況を変えられるきっかけは、ないのでしょうか。

羽田:きちんとした生産管理・原価管理システムが導入されていないと、データを吸い上げようにも「行き先」がなくて活用は限定的になると思います。

小泉:現場のデータと連携しているERPがそもそも無い、という話ですね。そのレイヤーまできているソリューションをそもそも御社はお持ちなので、そこを上手いことやっていけばビジネスのプロセスそのものもデジタルの恩恵を受けることが出来ると思います。

山下:世の中にPLMもERPもIoTも実は業界自体が分かれていて、全部を統合するコンセプトの製品がない。だから、私たちがそれをmcframeで実現したいと思っています。(※)

羽田:B-EN-Gは元々、FAからビジネスをスタートさせたので、IoTに比較的容易に取り組むことができましたが、ERPだけやっている会社であれば取り組みは遅れていたと思います。設計やPLM領域に関しては経験や知見が自社だけでは不足していたので、図研さんの力も借りて新しい製品を共同開発しました。

IoTの4つの要素をまとめるエンジニアリング能力

小泉:mcframeのIoT製品群の話題がでましたが、これらの製品に関してはどういう動きがありますか。

入交:mcframeのIoT関連製品に関する、具体的な製品の最新情報について説明する前に、当社のIoTソリューションに対する根本的な考え方についてお話しします。

IoTには4つの要素、つまり「デバイス」「業務(データ)」「IoTプラットフォーム」「アプリケーション」があります。しかし各分野で思惑がバラバラのまま取り組んでしまうと、それぞれ出来ることが限定的なまま話が終わってしまいます。

ここを「エンジニアリングという視点」でつなげていく、というところに我々B-EN-Gの価値があるのではないかと思っています。

小泉:なるほど。確かにバラバラだと限定的になってしまって、効果があまりないという企業も見かけます。最近のIoT関連部分でもアップデート状況はどうですか。

入交:今回、アップデートしたソリューションはmcframe SIGNAL CHAIN、mcframe RAKU-PAD、mcframe MOTIONの3つです。

まずは人の動きを収集する技術についてです。これは大きな領域・小さな領域で特性の違いを見極めながら、ビーコンやウェブカメラなどを利用して動作のデジタル化をするというものです。

ノウハウを持つ熟練者が現場からいなくなっていく中で、習熟していない人でもデジタルトーキングによって、ある程度工場運営が出来るようになります。例えば海外で新工場を立ち上げる時に、現地のワーカーを教育するのをお手伝いする、というようなことを狙っています。

小泉:視覚的にすごく分かり易くして、簡単に指導出来るようにするわけですね。

入交:次に設備の稼働モニタリングです。これは人のチャート・設備のチャートを並べていくことで、例えば設備が止まっていた時に人って何をやっていたのか、などのシナリオを確認することができます。あるいは多台持ちしている作業の最適な組み合わせは何か、というスケジューリングを行うことなども想定しています。

小泉:作業者はデジタル化によって振り回される恐れはないのですか。

入交:先ほど紹介した技術は、現場の作業者というより上流の計画系の方に向けて提供しています。今までは勘と経験で行っていたところを、明確にして指導出来るよう、教える側をサポートすることで日本の現場を変わるのではないか、と思っています。

あとは設備保全。これについては状態基準がトレンドで、音や振動など、予知保全の前段階で様々な状態を見るしくみがあるというものです。

小泉:それは設備の温度が上がってくる、あるいは異常な音が鳴っているなどを検知して知らせる、ということでしょうか。

B-EN-G・新商品開発本部副本部長・マーケティング企画本部長の入交俊行氏

入交:それだけではなくてチョコ停の頻発防止なども含めますね。AIを使わなくても、人がちょっと頑張るだけで、状態保全が出来るような環境を作りたい、というのが我々の思いです。

最近、PoC(Proof of Concept)の壁を越えられない顧客に対して、どうしてよいかわからず悩んでしまうことを支援するサービスをセットで提供しています。

小泉:それはSIGNAL CHAINを何社かに入れていく中でPoCの状態に留まっている人たちがどう打開したか、というところのノウハウが集まった、ということでしょうか。

入交:そうです。メンテナンスのところでいうと、AR使いましょうとか、予備品管理とかはERP領域だと思いますがデータがあまりにもバラバラになっていて、それをちゃんと統合してあげるだけで効果がある。

意外に出来ているようで出来ていないのが、修理と点検の記録の統合。紙文化であるし、点検は点検、修理は修理で、とつながらない。また、保全の方は特殊な動きをしているので意思の疎通が出来ていないこともあるのですが、そういうのを無くしていくだけでも効果があるな、と思います。

次ページは、「海外展開と顧客との新しい関係

海外展開と顧客との新しい関係

小泉:最近中国やタイといったアジア諸国への展開もアツいと聞きます。

IoTNEWS代表 小泉耕二

羽田:B-EN-Gは中国、タイ、北米など海外の顧客も多いです。

山下:基幹系システムを提供している国産会社としては、海外のシェアは圧倒的だと思います。外資系ベンダーは結局テリトリー制なのでグローバルでプロジェクトを組むというのは実は結構難しいです。その点、我々はテリトリーを意識することなくワンストップでお客様を支援することが可能です。

一方、グローバルを掲げる企業でも、現地にはIT系の人材がいない企業も多いですが、私どもは海外拠点への対応も含めて、日本本社や現地法人を通じてソリューションの提供をしています。

羽田:お客様との関係についても、これから新たな形ができてくると思います。単なるユーザとソリューションベンダーの関係ではなく、例えば弊社のIoTツールを自社の製品に組み込んで貰うことで、お客様と一緒に新しいビジネスモデルを開拓していくという関係が出始めています。

社名が変わって、再始動するB-EN-Gの未来

小泉:ところで、この10月から資本関係や社名が変わり、新たなスタートを切られるわけですが、展望をお話いただけますか。

羽田:社名変更への思いを最後にお伝えしたいと思います。『ビジネスをエンジニアリングする』とは、当社のお客様が、絶え間なく変化する事業環境に対応し、継続的に企業価値を高めていただけるよう、経営課題の明確化、多様な技術を組み合わせた解決方法のご提案、計画策定と遂行、そして活用推進をお手伝いさせていただくことを指しています。

そのために当社は、この新社名が表現する技術力、品質、競争力の一層の向上を図り、デジタル化時代に求められる製品とソリューションの提供に努め、当社が提唱する「ものづくりデジタライゼーション」を進めていきたいと考えています。

小泉:本日はありがとうございました。

※経営視点からの全社横断的なデータ活用基盤「mcframe COCKPIT」について

IoTやPLMなどとの連携や、既存システムに蓄積されたデータも対象にした全社横断的なデータ分析・活用については、B-EN-Gは11月1日に製造業向けデータ活用基盤「mcframe COCKPIT」の提供を開始している。

「mcframe COCKPIT」は蓄積したデータを表やグラフで表すダッシュボード(mcframe COCKPIT MB)、大量データの高速処理を特徴とするBIエンジン(mcframe DS)をベースとしつつ、ユーザー企業がデータ活用を容易にする製造業向けダッシュボードテンプレートで構成されているそうだ。

2つの予算原価計算結果を分析する、部門別・工程別の原価推移を把握する、将来の在庫推移を確認するなど、経営から現場までの各階層の意思決定・改善アクションを支援する活用シナリオを想定しているという。

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