住友理工株式会社は、高機能ゴム製自動車部品をグローバルに展開するリーディングメーカだ。
安全でスムーズな乗り心地を確保するには、エンジニアはシステム内の様々な部品が極度の負荷やストレス下でどのように動作するかを理解する必要がある。
そのためには、数百ものマルチフィジックスシミュレーションを実行する必要があり、モデルの形状パラメータの定義といった前処理タスクには、膨大な時間とシミュレーションの専門知識が必要となる。
こうした中、住友理工は、Ansys, part of Synopsys, Inc.が提供する、シミュレーションにAIを活用したクラウドベースのプラットフォーム「SimAI」を活用し、自動車部品の設計・製造におけるソリューション実現までの時間を短縮し、効率性を向上させていると発表した。
「SimAI」は、新規または既存のシミュレーションデータを分析し、性能予測を行うことができるAIモデルを生成するサービスだ。
今回住友理工は、防振設計・検討、バッテリー冷却、磁場解析、混合伝熱解析といった計算負荷の高いタスクを高速化するために「SimAI」を活用している。
具体的には、製品開発の際に「SimAI」と過去に生成されたデータを活用し、形状をパラメータ化することなく防振ゴムやホースなどのゴム製品のAIモデルをトレーニングしている。
このアプローチにより、5分以内に性能予測を行うことができるAIモデルが実現する。(トップ画参照:左がAnsys Mechanicalによる高精度なゴムブッシュひずみ解析で、右がSimAIで5分で再現した解析。)
これは、新規設計ごとに1時間以上の時間を節約することになるのだという。
例えば、初期テストでは「SimAI」が一部のゴムブッシュにおいて、その機械的性能を予測する際に、シミュレーション速度を10倍以上高速化できることが示された。
住友理工の新商品開発センター 解析実験領域長である松岡智毅氏は、「私たちは、製品の設計、製造、廃棄プロセス全体にわたるワークフロー自動化機能の実装を進めているが、最初の課題は、製品開発サイクル全体にわたるAI導入を促進することだ。SimAIは、パラメータ化されたジオメトリを必要とせず、複数のチームが1つのプロジェクトで容易に共同作業を行うための強力な機能を備えているため、この取り組みを始めるのに理想的なプラットフォームとなる。」と述べている。
また、Ansys, part of SynopsysのSenior Vice President of Worldwide Sales and Customer ExcellenceであるWaltHearn氏は、「研究開発における最大の課題の一つは、設計初期段階におけるスピードと精度のバランスだ。AnsysのAI機能は、計算規模や複雑さに関わらず、超高速な予測を可能にしており、顧客はプロトタイピング開始前にデータに基づいた意思決定を行うことができる。」とコメントしている。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。