この記事は、東洋ビジネスエンジニアリング株式会社 新商品開発本部 商品企画2部 中小企業診断士 行司正成氏による寄稿記事です。
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東洋ビジネスエンジニアリングは、「簡単IoT」というコンセプトで、2016年6月にmcframe SIGNAL CHAIN(以下SIGNAL CHAIN)「稼働モニタリング」の提供を開始した。以降、2017年11月1日現在、世界7か国25社への導入実績がある。
ここではSIGNAL CHAINで管理指標として取り入れたOEE(Overall Equipment Effectiveness)を紹介したい。OEEは日本プラントメンテナンス協会が開発・提唱した設備総合効率の略称で、設備がどの程度効率よく活用できているかを測る指標である。日本国内にとどまらず、国外でも多くの企業で採用されている。
OEEは三つの指標に分解できる
OEEの何が総合なのかは、OEEを構成する三つの下位指標を見ると分かる。
一つ目は「稼働率」。計画通りに設備が稼働できているか。二つ目は「性能」。設備をスペック上の性能通りに運用できているか。最後は「品質」。ねらった品質で生産できているかを示している。まさに設備の利用効率を総合的に測る指標だ。
※ OEE = 稼働率 x 性能 x 品質
OEEを改善活動に活用する
ではOEEをどう使えばよいのか。OEEを測った結果、それぞれの指標を押し下げる原因となるロスを探り当てて改善していく。ロスは7大ロスに分類でき、それぞれが三つの指標に関連付けられる。①故障、②刃具交換、③立上がり、④段取・調整は「稼働率」に、⑤チョコ停・空転、⑥速度低下は「性能」に、⑦不良・手直しは「品質」に影響する。このように指標とロスが密に関連しているため、責任範囲と改善活動のポイントが明確になる。
稼働率
三つの下位指標のうち稼働率について掘り下げたい。OEE の定義から言うと、稼働率 = 稼働時間 ÷ 負荷時間となる。これだけを見ると、とても簡単だと思われるかもしれない。
次ページ:稼働率の分母と分子は?
稼働率の分母は?
ところが、分母の負荷時間をどうするかが意外に難しい。
多くは稼働率管理の目的に応じて、また、かける手間と効果を天秤にかけて負荷時間の定義を決めている。一般的には次の三つのいずれかに近い考え方が採用される。
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① 負荷時間を 365 日 24 時間とする
シンプルだが、現場で管理できない計画休止分のロスが相当紛れ込む。例えば受注不足や長期休暇などでも稼働率が下がる。そのためOEEの活用目的であるロス対策の指標にはなりにくい。
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② 負荷時間を工場の操業時間とする
工場の操業カレンダーを使って実際に工場が操業する時間を基準にする。①よりは現場向けの指標に近づくが、定期メンテナンスなど設備個々の状況の考慮が漏れる。ただ、計算は簡単なので現実的な案と言えるかもしれない。
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③ 負荷時間を生産計画時間とする
現場が本来モノづくりをすべき時間を基準にする。トヨタ生産方式でよく知られたベキ動率という指標があるが、この考え方に近い。ただ、設備ごとの生産計画時間を日々メンテナンスする必要があり、一番手間がかかる。
稼働率の分子は?
分子となる稼働時間の定義がぶれることは少ないが、そもそもどうやってデータを集めればよいかが問題になる。手作業でつけた日報を集計する企業も多いが、これでは負担がかかり正確性にも疑問が残る。ここでIoTの登場である。IoTを活用すれば設備の稼働状況を簡単に収集できるようになってきている。集計の労力が無くなり正確性も格段に向上する。SIGNAL CHAINの狙いのひとつはこれである。
最後に
OEEを活用している企業ではこれをうまく改善活動のための指標に組み込んでいる。ただ、収集した稼働率や稼働状況の正確性に課題を持つ企業もまだ多い。IoTの普及はその解決の一助になっている。
今回はOEEの下位指標のうち稼働率を紹介したが、性能についても各様の考え方があり面白い。機会があれば紹介させていただきたい。
【関連リンク】
・mcframe SIGNAL CHAIN
・ものづくりIoT

