株式会社Synamon(シナモン)は、VR空間構築ソリューションの開発・提供を行う会社だ。ハノーバーメッセ2018で高い技術力を発揮していた同社の詳細を知るべく、日本で追加取材を行った。
前編では、ハノーバーメッセ2018に出展した駿河精機に展示会用のプロモーションコンテンツとして提供した事例について、後編では同社のVR空間で遠隔会議ができるビジネスツール『NEUTRANS BIZ』について伺った。
実際に同社のVRを試してみると、本当に工場の中に入ったような気持ちになった。所定の位置について操作をすると工作機械のドアが開いて中が見ることができるようになるなど、随所にきめ細やかな再現性が施されていた。
3D-CADのデータを使うと、簡単に工場のレイアウトがバーチャル空間上に再現できると思っていたが、これだけリアルな表現となると、3D-CADのデータでは難しいのだという。シナモン社はゲームでの3D空間再現の実績が豊富なため、そのノウハウを活用して今回の映像体験をつくりあげたということだ。
Synamon(シナモン)Co-Founder/CEO 武樋 恒氏
株式会社アールジーン 代表取締役/IoTNEWS 代表 小泉耕二
Synamon(シナモン)とは
小泉: 御社について教えてください。
武樋: Synamonは、VR技術をビジネス領域に適用し、VRの可能性を多くの人に知ってもらう活動をしている会社です。まだまだVRの技術を体験する機会は少ないと思いますが、VRが一般化する世界を作っていきたいと考えています。
VRを広げるために、以前はVRの対戦ゲームを作っていたのですが、なかなか使われませんでした。なぜかというと、みんなヘッドマウントディスプレイを持っていないので、そもそも対戦がマッチングしなかったのです。
だから、まずVRを普及させなければいけない、と考えました。とはいえ、機材はなかなか高いので普通の人は買えません。専用のPCで20~30万円、ヘッドマウントディスプレイが5~10万円するので、はじめるだけで3~40万ほど必要になります。
じゃあどういうところだったら機材に手が届くのか?と考えた時に、ビジネス領域だと思いました。BtoB向けに多くのハードウェアが売れていけば値段も下がってくるので、その次にBtoCにも落としていくことができます。
製造業向けVRコンテンツを開発
小泉: それでハノーバーメッセにつながるわけですね。
武樋: はい。今回、製造業向けVRコンテンツを開発し、ハノーバーメッセ2018に出展した駿河精機に展示会用のプロモーションコンテンツとして提供しました。
この映像では、天井や床までしっかりと作り込み、制御機器の細かなシルエットまで 詳細に再現しています。工作機械の音も聞こえ、機械の中も見ることができます。 実際に設備を担当されている方は「本物と区別がつかない」と非常に驚かれておりました。
小泉: 駿河精機が持っているサーバーの中に、このデータを入れればどんな機械でも再生できると。
武樋: そうです。それが置いてある施設がCPS Lab .(サイバーフィジカルシステムラボ)で、今回そのCPS Lab.を VRで再現しました。
小泉: このコンテンツを使うメリットはどこにあるのでしょうか。
武樋: 社員の教育研修や営業に使っていただきたいと思っています。例えば、中国の工場スタッフと3Dデータで現場の人と確認しながら、密にコミュニケーションを取ることができます。
このコンテンツは、今後の弊社の事業展開のベースを作るためでもありました。そのため、VRでどこまで現実に近づけることができるのか、質感などもこだわっています。
小泉: デジタルツインの展示はいくつもありましたが、ここまで光の当たり方までコントロールされているものはなかったので、完全にリアルだと感じました。制作期間はどのくらいでしょうか。
武樋: 一概には言えないのですが、通常であれば数ヶ月から半年近くはかかるのではないでしょうか。
小泉: こういうのをまず起こして、駆動部分の制御が必要ですよね。
武樋: まさにそうです。今回は、リアルさを作るためにモデルの制作や質感を作るのに時間がかかりました。VRはリアルタイムレンダリングなので、リアルタイムレンダリングするためにモデルの軽量化や各種動作調整をかけていく必要があります。
例えばモデルデータの容量が増えすぎると、VRを体験する際に映像がガクガクしてしまうことがありますが、、今回はしっかりと調整を行っているためガクガクするようなことはありません。加えて、ハイエンドなグラフィックカードが搭載されているPCを使うことで、より快適な動作も担保してます。(下記写真)。
小泉: 本日はありがとうございました。
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