2019年8月29日日本オラクルと東洋経済新報社は「サプライチェーン変革 すべての工程がリアルタイムに見える、繋がる、加速する」と題したセミナーを開催した。
今回はその中の、「サッポログループの物流改革〜当社が考える”みらい物流”への取り組み〜」と題したサッポロホールディングス ロジスティクス部長 松崎 栄治氏による講演を紹介したい。
物流課題に対し重要な3つのポイント
まず松崎氏は、「人口減少、働き手の不足は今後避けられない。目先の課題をどう解決するかということだけにとらわれず、中長期的な将来のリスクを考え、今やらなければならないことを実行していく必要がある」と語った。
そうしたことを前提とし、サッポログループの事業戦略として、①国内酒類・飲料事業の収益力強靭化、②「食」分野の拡大加速、③グローバル展開の推進をあげた。
しかしそれぞれを進めるにあたり、人手不足、多温度帯の知見・提案不足、ノウハウ不足といった課題もあるという。
そういった要因を解決するためのポイントは、
- 標準化
- 可視化
- シェアリング
の3つだと松崎氏は語る。
この3つに至った経緯は、ロジスティクスの課題はロジスティクスだけでは解決できないからだという。サプライチェーン全体で課題に対して取り組みを進めなければならない。
そのためにはある一定のベテランだけが分かるという属人的なシステムから脱却するため標準化を行い、それを可視化する。標準化と可視化を行えなければシェアリングという手法は取れないのだという。
適正在庫を確保するための工夫
標準化の必要性は、需要予測モデルから顕在化したのだという。
従来では部門ごとにエクセルやメールを用いて販売予算をベースに、個人ごとに個人の感覚で生産計画を立てており、統一的な在庫水準がないため過剰在庫や欠品が発生していた。
対策として2000年にサッポロビールとしてのSCM(サプライチェーンマネージメント)の改革を行い、需要予測を立て、その予測に沿ってサイクルを作っていたが、現在ではSKUが爆発的に増え、以前の需要予測が機能しなくなっているという。
そこで需要予測モデルの再構築を行わなければならないが、生産計画ありきで作るのではなく、在庫から考えていくのだという。従来のSCMの改革というのは在庫を極力減らすという発想だったが、そうではなく、いかに必要な数量を必要な場所に常に在庫するかが重要だという。
そのためには1週間の小売の動きを把握し、需要が増える週末の直前に配送するというモデルではなく、一週間を通して供給補充を行うことが重要になってくる。
供給補充を行う際の配車に関しても、ルートや車両がベテランの頭の中だけに入っているということがほとんどで、ベテランがいなければ回らないのが現状だ。そこを標準化し、属人性をなくす。
現在の構想では完全な自動化を目指しているわけではなく、ある程度のスキルの人間でも最終的な判断が下せるような半自動化の仕組みを作るという構想だ。
また、倉庫作業を行う際、商品記号を読むということが重要な作業になってくるが、別商品であっても似たパッケージであったり、文字が小さいという問題でミスが起きたり、作業時間の増加につながっているという。
そこで商品外装の標準化として、見やすいデザインに変えるということも物流の世界では重要なことなのだという。
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将来リスクから落とし込んだ様々な対策
次に可視化の重要性について語られた。物流の課題が社内全体にデータ化され共有されているかというと不十分だという。
物流現場で見たい情報と、マネージメントに必要な情報とでは違う場合も多いため、適切な情報を提供するためにも可視化は不可欠なのだ。
そしてシェリングでは、トラックが中心だったものを海上や鉄道を使い、モーダルシフトも併せて考える必要があるという。
シェアリングの事例として、サッポロビール含めたビール会社4社で専用列車を運行させているという例を挙げた。
関西から九州方面への輸送を共同で行うというものだ。
また、ビール会社4社分のトラックが届け先での納品の際、同時刻になると待ち時間が長時間であるという問題に対しても、届け先にビール会社専用の荷下ろしバースを作ってもらい、4社がそれぞれ別時間に行くよう予約制にした。
そうすることにより、他の食料品などのトラックの待ち時間の軽減にもつながり、最長93分待ちだった待機時間が最短で3分にまで短縮することができた。
さらにパレットの回収の際も、共通のパレットを使用していたこともあり、早く回収しにいった会社に多くパレットを回収されてしまったりと、無駄な競争が起こっていたという。
それを4社の代表が回収しに行き、回収してきたパレットを公平に分配することにより、CO2の削減、車両の積載効率の向上、トラック台数の削減に成功している。
他にも分散している倉庫を1つに集約させたり、ビールの樽や瓶に貼ったシールを剥がす作業を短縮するため得意先の理解を得て剥がしやすいシールに変えるといったことや、ビール工場でグループ会社の食品も同時に製造するハイブリット工場を作ったりと、物流の課題に対し、自社内外で様々な対策を講じている。
課題としてはICTの導入をどのタイミングでどういった形で導入するかということだという。まずは日常的なオペレーションシステムを出来るだけ早期に導入することで標準化・可視化を進め、将来的なさらなる自動化・省人化に向けて適切な場所に適正なシステムサポートを導入していきたいと語った。
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物流の問題に社内全体で取り組める施策
さらにサッポログループでは物流人材を育成するため、社内公募型の「サッポロロジスティクス★人づくり大学」を2019年2月に開校している。
この大学では、ロジスティクス改革を経営視点で推進する人財を育成・強化するとともに、マーケティングや営業といった別分野の人材に対しても物流現場を知る機会を持たせ、その上で戦略を立てられるようにすることを目的としているという。
その結果、授業のアウトプットとして、営業の人間が配送コスト、廃棄、SKU削減・適正化といった課題解決を自ら提案してきたのだという。
松崎氏は、物流にかかわる関係者が「サッポロの仕事ならやりたいと思える会社にしたい。」と語った。

