昨今、物流業界では、トラックドライバーの不足や働き方改革などが大きな課題となっており、効率的な集荷システムの構築が望まれている。また、MaaSの発展とともに、貨客混載や共同輸送などさまざまな輸送方法が提案されており、積載データの可視化のニーズが増えている。
このような課題やニーズに対して、Wireless City Planning株式会社（以下、WCP）と日本通運株式会社は、シャープ株式会社およびソフトバンク株式会社と協力し、5GおよびIoT機器向けのLTE規格であるCat. M1などを活用して、物流の効率化によるスマート物流の実現に向けた実証実験を、日本通運の江古田流通センターと奈良ロジスティクスセンターで、2020年1月下旬から2月下旬まで実施する。
今回実施した実証実験の詳細は、下記の通り。
- 5GやMECサーバーを活用したトラックの積載状況の可視化および荷室への積み込み判定（江古田流通センター）
トラックの荷室の空き状態を可視化するため、LiDARで取得した荷室の点群データ（※1）をソフトバンクが開発した高い通信品質のサービスを局地的に提供できる可搬型5G設備「おでかけ5G」の端末を用いて、トラックと遠隔地にいる管理者へ伝送した。5Gの大容量通信とMEC（※2）サーバーを活用することで、荷室の点群データのリアルタイムな伝送・解析が可能になり、管理者画面で積載状況を可視化することができた。また、高頻度でデータを伝送するセンサーを荷物に取り付けて、センサーの加速度データおよび位置情報データを基に、荷物が荷室へ積み込まれたかどうかを判定する検証を行った。今後、積載率の低いトラックを可視化して空いているスペースの有効活用の検討が可能になることや、ドライバーによる積載状況の確認作業を省力化することが期待される。
- Cat. M1のセンサーを活用した荷物の温度状態や積載状態の確認（奈良ロジスティクスセンター）
荷物の温度を確認するため、Cat. M1を採用した温度センサーを荷物に取り付けてトラックに積み込んで走行試験を行い、遠隔地にいる管理者の画面で、走行中も途切れることなくリアルタイムに荷物の温度を確認できた。また、LTEを採用した重量センサーを荷室に設置して、トラックドライバーと遠隔地の管理者が、シャープが開発したアプリケーションから荷室の総重量や偏荷重を確認できることを検証した。これまではドライバーの経験に基づいて積載していたが、偏荷重が発生するとアプリケーションの表示が変わるため、同アプケーションを確認しながら荷室の重量が均一になるように積載することができる。今後、冷蔵品や常温品、割れやすい品などさまざまな荷物の状況に迅速に対応できる物流の実現が期待される。
なお、同実証実験は、総務省の「多数の端末からの同時接続要求を処理可能とする第5世代移動通信システムの技術的条件等に関する調査検討の請負」により、実施している。
※1 LiDARで測位した反射点の空間的な位置関係を3D空間にマッピングして無数に集めたデータ。
※2 Multi-access Edge Computingの略。端末から近い位置にデータ処理機能を配備することで、通信の最適化や高速化をすることができる技術。