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ウィズコロナ・アフターコロナ時代にロジスティクスが取るべき戦略-Hacobuオンラインセミナーレポート

ウィズコロナ・アフターコロナ時代にロジスティクスが取るべき戦略-Hacobuオンラインセミナーレポート

ウィズコロナ・アフターコロナ時代にロジスティクスが取るべき戦略-Hacobuオンラインセミナーレポート

2020年4月23日、Hacobuはオンラインセミナー「ウィズコロナ・アフターコロナ時代のデジタル・ロジスティクス戦略」を開催した。

Hacobuは、「運ぶを最適化する」をミッションに掲げた会社だ。同社は物流情報プラットフォーム「MOVO」上にトラック予約受付サービス、動態管理サービスといったアプリケーションを載せて提供する事によって、物流における「合成の誤謬(個々のプレイヤーの合理化が全体の非効率を招く事)」の解消に取り組んでいる。

今回のセミナーでは、新型コロナウイルス感染拡大によって、物流業界にはどのような変化がもたらされるのか、その変化に短期的あるいは中長期的に対応するためにはどのような事に取り組むべきなのか、というテーマがディスカッション形式で語られた。

登壇者は、Hacobu 代表取締役社長CEO 佐々木太郎氏(トップ画像左)、同執行役員CSO 佐藤健次氏(トップ画像中央)、同Executive Advisor 野田和伸氏(トップ画像右)の3名である。

メアリー・ミーカー氏が唱える、コロナが与える7つの社会変化

まずディスカッションの前提として、佐々木氏から、新型コロナウイルスが社会に与えるインパクトについて説明があった。

最初に佐々木氏が提示したのは、ブルームバーグ社のエコノミストによる、米国が1年以内に不景気に入る確率をグラフ化したものだ。そのグラフによれば、コロナショックによって不景気に突入する確率は「ほぼ100%」。不況の程度については「悲観シナリオでマイナス13%、楽観シナリオでマイナス8%の落ち込み」という見込みを米国マッキンゼー社が出しているという。

ブルームバーグ社のエコノミストが発表した、米国が1年以内に不景気に入る確率

では、上記のような状況になった場合、社会はどのような変化を迎えるのか。ここで考察のフレームワークとして紹介されたのが、アナリストのメアリー・ミーカー氏が発表した「新型コロナの感染拡大によって予測される、7つの社会変化」に関するレポートだ。

ミーカー氏が提唱する変化とは、「科学者、エンジニア、専門家が活躍し、政策立案者と協力して社会を作る」「オフィスの必要性や働き方の変化」「DXの更なる加速」「オンデマンドサービスの伸長」「最新のテクノロジーを使った政府主導の経済対策、コロナ対策」「医療のデジタル化」「ソーシャルディスタンスによるスポーツ業界の変化」である。

佐々木氏は「新型コロナウイルスについては、SARSのように1年以内に収束するのではないか、という楽観的な意見がある一方、冬に流行の第2波が来て1年では収束しない、という見方もある。したがって、メアリー・ミーカー氏が提唱する7つの変化は、必ずしも無視できるような事ではない、と思っている」と述べた。

次ページは、「コロナによる物流業界3つの変化

コロナによる物流業界3つの変化

では、コロナによって社会全体が変化を迎えた場合、ロジスティクスはどのように変わるのだろうか。それについては、ミーカー氏の「7つの変化」を参考に、以下の3点が挙げられた。

Hacobuはメアリ―・ミーカー氏の「7つの変化」を援用し、「DXの加速」「テクノロジーによる政府の対策」「働き方の変革」をロジスティクスに起こる3つの変化として唱える

DXの加速

1点目は「DXの加速」である。もともと物流業界はデジタル化が進んでいない業界と言われていたが、ドライバー不足の問題といった物流クライシスが騒がれ始めた近年、デジタル活用の動きが見られるようになった。その動きが新型コロナウイルスによって更に加速するだろう、というのだ。

DXの加速については、野田氏は「特に社員や消費者をコロナの感染から守るという観点から、非対面・非接触に関するテクノロジーについてのデジタル化が進んでいくだろう」と意見を述べた。

ここで焦点となるのは「企業におけるデジタル化への投資」である。DXを進めるためには投資が必要となる一方、景気の後退によって「投資を行わない」と判断する企業が出る事も考えられる。

この点について、佐藤氏は「デジタルに関する投資を増やさなければ、この先はやっていけない、と企業は判断するだろう。新型コロナによる行動制限によって人々の消費地が変われば、データを基にした物流のネットワーク変更を柔軟に行う必要がある。そのデータを取得するためには、デジタル化は必須であるからだ」と意見を述べた。

政府によるスマートロジスティクス対応

2点目は、「政府によるスマートロジスティクスへの対応」である。これは、ミーカー氏の「7つの変化」にあった「最新のテクノロジーを使った政府主導の経済対策、コロナ対策」にように、政府がロジスティクスのデジタル化を後押しするのではないか、という事だ。

この点について、佐藤氏は「災害が起きた場合、物資を運ぶためのルートが押さえられない、自衛隊と消防署のデータが共有できていない、といった問題を、政府やボランティア団体が抱えているという話を聞く。したがって、政府の側でも物流のデジタル化を進めていきたいという思いがあるはずだ」と見解を述べた。

政府によるデジタル化の後押しについては、観客から「例えばHacobuの提供するプラットフォーム「MOVO」に政府が直接アクセスして、物流をコントロールする、といった事は想定しているのか」という質問があった。

この質問について、佐々木氏は「データの使い方について、「ガバナンスボード」という公共的なデータ利用についての監視の仕組みを作った上で、災害時などにおける政府のアクセスを想定している」と答えた。

ウェブ会議など、働き方の変化が現れる

3点目は、「働き方の変化」である。物流業界においても、現場以外ではウェブ会議などが導入され、いわゆる「働き方改革」につながる動きが出ているという。

働き方の変化については、観客から「コロナによる外出自粛が広がっている現在でも、Hacobuではシステムを導入する際には、現場に赴いているのか」という質問があった。

この質問について、佐々木氏は「現在はウェブ会議を通して行っている。万が一、当社のメンバーがお客様に感染させてしまった場合、倉庫が止まり、物流がすべて停止してしまうリスクがある。そのリスクを避けるためだ」と説明した上で、「物流業界において、現場を見る、という行為にも何かしらの変化が訪れるのではないか」と見解を述べた。

一方で、消費者側の働き方の変化が物流に影響をもたらす、という意見が佐藤氏から挙がった。つまり、リモートワークが推奨される中で、都市集中型の消費が止まり、モノを届ける先の範囲が広がる。それにしたがって、物流のネットワークも複雑になるのではないか、というのだ。

野田氏による「物流7つの仮説」

セミナーでは上記に挙げた3つの論点とは別に、野田氏が独自に考察した、コロナによる「物流の変化に関する7つの仮説」が紹介された。

Hacobu・野田氏が独自に提唱する、物流の変化についての「7つの仮説」
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