NTT株式会社は、人間と同じく対話を通じて、他のエージェントとコミュニケーションを取り、チーム内でアウトプットイメージをすり合わせながら協調してタスクを解決するAIエージェント自律協調の基盤技術を開発した。
昨今、複数のAIエージェントが協調することで、業務の一部を代行するマルチエージェントシステムが注目を集めている。
しかし、従来のマルチAIエージェントシステムでは、分割したサブタスクを各エージェントが個別に処理するため、他のエージェントのサブタスクとの整合性を保ったタスク遂行が難しいという問題があった。
このため、サブタスクが完全に独立しており、単純にサブタスクの結果を連結すれば解決できる定型タスクであれば解決できるが、相反するものを含む複数のニーズを一度に満たす必要がある複雑なタスクにおいて、AIエージェントが一貫性・実現性・具体性を持ってタスクを完遂するのは困難であった。
そこで今回NTTは、AIエージェントに、人間を模倣した「記憶構造」および「協働創造プロセス」をとらせることで、人間のように互いの解決アプローチや能力を確認・更新しながら複雑タスクを解決するAIエージェントの自律協調の基盤技術を開発した。
この技術の鍵となるのは、人間が持つ「記憶」と「協働プロセス」をAIに模倣させた点だ。
人間のような記憶力に関しては、AIエージェント同士の会話を通じて「エピソード記憶」を獲得し、段階的に抽象化したものを「意味記憶」として、知識を階層的に管理する。
この知識にもとづいて議論を繰り返すことで、相互的な共通理解が進み、多様な視点を取り入れた生産的な議論進行が可能となる。
また、チームの会議や専門家AIとの対話を通じて知識を更新し、お互いの知識をチェックし合うことで、最終的な解決策の精度を高める。
そして、議論を通じて知識を蓄積し、相互理解を深めたエージェント群を、以降のタスクで再利用することで、タスク解決性能を継続的に向上させることが可能だ。
なお、今回の技術を活用して実験を行ったところ、人間が行う評価およびAIによる自動評価両方において、従来の技術を上回る成果を得た。
例えば、「紅茶をテーマにしたビジネスプラン」を作成するタスクでは、従来のAIが各部署のアイデアをただ並べただけだったのに対し、今回の技術を活用したAIは各部署のアイデアを統合し、「多様な紅茶製品の開発」や「ワークショップの開催」といった、より具体的で顧客体験を向上させる多角的なビジネスプランを提案した。
また、生成した企画書と、正解として人手で準備された複数の企画書案との一致度合いをRougeにより評価したところ、同技術は従来手法と比較して平均14.4%程度スコアが向上した。さらに、タスク遂行時の知識を再利用した場合は、平均17.2%程度スコアが向上することが確認された。
今後は、本年度中のPoCに向けて取り組むほか、最終的な成果物や中間生成物に対して人間が要求した改善や方向修正の反映といった人間の意図の汲み上げを可能とすることで、AIエージェントの実ビジネスシーンでの活用をめざし、研究開発を促進していくとしている。
将来的には、AIが自律的に組織運営を担う際に必要となる業務のうち、ビジネス企画策定関連のタスクを幅広く解決することを狙うとのことだ。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。