株式会社日立製作所(以下、日立)は、画像・音・振動など多様なセンサデータを一つの半導体チップで統合処理できるエッジAI技術を開発したと発表した。
今回発表された技術の最大の特長は、画像・音・振動など複数センサのデータを1つの半導体チップで統合・解析できる点だ。この「センサーフュージョン技術」により、従来は個別処理されていた異種データをリアルタイムで融合解析できる。
例えば、画像データだけでなく、機械のわずかな振動や異音も同時に捉えて統合・解析することで、従来は見逃されやすかった微細な異常や複合的な変化を検知できるようになる。
また、センサ信号を画像に変換して、AIエンジンを画像認識用ニューラルネットワークの演算に最適化した回路で効率的に動作させるとともに、AI演算の中間結果をチップ内で処理することで、外部メモリへの書き出しを不要にし、データ移動によるエネルギー消費を抑えた。
さらに、A/D変換器(アナログ信号をデジタルに変換する回路)を含めた高密度集積により、電源や放熱スペースに限りのある工場・装置への搭載も可能にしている。
なお日立は、同技術をAI半導体に適用し、半導体ウェーハの欠陥検出やモータベアリングの異常検知などに実験適用した。
その結果、同程度の処理速度のAI半導体と比較して、消費電力を約1/10に抑えられることを確認した。
また、ウェーハ表面の微細なパターン欠陥や、ベアリングのわずかな損傷など、微小な異常も高精度で検出できることが実証された。
今後、日立は本技術を自社の検査装置や外観検査ソリューションなどに展開し、現場データの価値化を進めるとともに、社会インフラや産業分野の高度化・持続的成長に貢献していく方針だ。
また、大規模なシステムで活用されるGPUなどのAI半導体と、現場に最適化した同技術を組み合わせることで、クラウドから現場まで一貫したAI処理基盤を提供する計画だ。
なお、同成果の一部は、2025年10月14日〜17日にスペイン・マドリードで開催される「The 51st Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society(IECON 2025)」にて発表予定としている。
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