三井不動産株式会社は、全社員約2,000名を対象に、2025年10月1日より導入したOpenAI社の「ChatGPT Enterprise」の成果を発表した。
今回の取り組みの最大の特徴は、現場主導でAI活用を推進する組織体制を構築した点にある。
全社85部門から選出された約150名の「AI推進リーダー」がハブとなり、各部門の実務に即した「カスタムGPT」の開発を主導している。
その結果、導入から約3カ月で500件以上のカスタムGPTが運用されており、経理処理やプレスリリースの下書きなど、現場の具体的業務の効率化が進められている。
また、同社はMicrosoft Azure上に構築した内製開発環境において、独自の企業文化や文脈を反映した高度なAIエージェントの開発も行っている。
その象徴的な事例として、2025年12月より全社トライアルを開始した「社長AIエージェント」が挙げられる。
これは、植田社長の公開情報や過去の発言、プライベートなエピソードなどを学習させ、社長の思考プロセスや「ものの見方」を再現したものだ。
これにより、社員は日常業務の中で経営トップの視点に触れることができ、全社戦略の理解浸透と意思決定の質の向上が期待される。
さらに、先行して導入された「DX本部長AIエージェント」では、定量的な成果も確認されている。DX本部長の判断基準やミッションを学習したAIが、本部長への説明前に資料をレビューする仕組みを導入した結果、手戻りが減少し、部員の資料作成・修正にかかる時間を平均約30%削減することに成功した。
あわせて、テキストの指示からPowerPoint資料をレイアウト崩れなく自動生成する「資料自動生成AI」も全社展開された。
同社は、カスタムGPTとこれら独自プロダクトの両輪により、全社で業務時間を10%以上削減することを目指している。
今後は、単なる業務効率化にとどまらず、経営の意思決定支援やデータ分析との連携など、より高度な領域へと生成AIの適用範囲を拡大していく方針だ。

