港湾運送や国際物流を支える現場において、通関業務は通関士資格などの専門知識を要する重要な工程だ。
しかし、貿易書類からの複雑なデータ転記や品目ごとの数量計算など、多くの手作業に依存する工程が未だ数多く残っている。
さらに近年は、世界情勢の目まぐるしい変化に伴う規制強化や関税ルールの複雑化が進行し、通関業務の難易度がさらに上昇している。
こうした中、名古屋港を中心に輸出入貨物を取り扱う名港海運株式会社は、繁忙期における通関管理チームの残業、専門人材の採用や育成、さらには人事異動のたびに業務ノウハウを引き継げないといった長年の懸念事項を解消するため、株式会社Shippioが提供するAI通関クラウド「Shippio Clear」を導入した。
「Shippio Clear」は、AI-OCRを活用してフォーマットが不揃いな貿易書類を自動で読み取り、品目ごとの自動計算やデータの正誤確認を行うクラウドシステムだ。
同システムに搭載されたAI-OCRは、フォワーダーや荷主ごとにレイアウトがバラバラな貿易書類を読み取り、97%の精度でデジタルデータに変換する。
また、品目ごとや総量の自動計算、データ間の正誤確認も自動で行うほか、システム上で処理・登録されたデータは、輸出入・港湾関連情報処理システムである「NACCS」の申告書フォーマットへと自動で一括変換できる仕様を備えている。
これにより、HSコードや原産地情報など、実際の申告に不可欠な項目を直接出力できるため、書類の受け取りからNACCSへの送信に至るプロセスがデジタルデータで滑らかに繋がり、業務時間を大幅に圧縮する。
名港海運の大阪支店通関管理チームにおける実際の運用効果として、書類の読み取りや計算・確認といった基礎的かつ負担の大きい部分をAIが肩代わりすることで、通関の実務経験を持たない新規スタッフであっても即座に実務の一部を担えるようになり、約1カ月でチームの戦力として機能し始めているとのことだ。
なお、1件あたりの作業時間そのものは数分程度の短縮にとどまるものの、1人あたり1日で処理できる件数は40〜50件規模まで増加した。
さらに、現在は日々の申告をこなすだけでなく、クラウド上に蓄積されたデータを生かして「商品マスター」の精査や、申告業務全体の一元管理という一歩進んだデータ活用にも着手しているのだという。
名港海運は、大阪支店での成功事例を礎に、今後はさらに商品マスターの整備や蓄積された過去申告実績データの利活用の幅を広げ、スタッフ一人ひとりがより高度な専門性を発揮できる業務環境を追求していく考えだ。

