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九州大学・糸島市・富士通研究所、自律成長するAIを用いて移住満足度向上を目指す実証実験を開始

九州大学・糸島市・富士通研究所、自律成長するAIを用いて移住満足度向上を目指す実証実験を開始

国立大学法人九州大学(以下、九州大学)マス・フォア・インダストリ研究所富士通ソーシャル数理共同研究部門と福岡県糸島市(以下、糸島市)、株式会社富士通研究所は、人間の好みを徐々に学習し、自ら成長するAI(人工知能)を用いて、地方都市への移住希望者と移住候補地を適切にマッチングさせるための共同実証実験を開始する。

糸島市では、昨今の地方への移住・定住に関する注目度の高まりにより移住相談が増加しているが、移住希望者は移住先検討の際、地域に密着した情報を得ることが難しく、移住者の満足度が低下することもあったという。

今回、移住希望者の好みを自律成長するAIに学習させ、好みに基づいて移住希望者に適切と考える移住候補地の地域密着情報(※)を提示し、提示された地域の評価を繰り返してもらうことで、移住希望者と移住候補地のマッチングを支援する実証実験を開始する。同実験を通じて、社会受容性を加味したAI技術の開発を行い、今後の移住希望者にとって満足度の高い移住地マッチングを行う仕組みの構築を目指すという。

地方への移住・定住促進のため、移住希望者が望む地域密着情報を的確に提供する仕組みとして、移住希望者から得られたデータをもとに学習していくAI技術が有効であると考えられているが、主に次の3つの点が課題となっている。これらの課題解決に向け、九州大学、糸島市、富士通研究所は移住満足度向上を目指した実証実験を開始する。

・データ量:移住者の意思決定に関して、AIが学習可能なデータが少ない。
・移住希望者から取得できるデータの正しさ:地方での暮らしを体験したことがない移住希望者は、移住先への希望を正確に伝えきれていない。
・社会受容性:個人的な重要事項の判断にAIを使用することに対する心理的な障壁。

移住希望者の好みを学習するにあたり、データが少ない状況でも、自律的に成長するAIによって徐々に学習していくことで、小規模データからスタートできるAIの構築を目指す。また、AIが移住希望者に対し単純に最適な地域を提示するだけではなく、移住希望者から得た好みを市担当者に伝え、最終的に移住希望者と市担当者の間の会話につなぐ役割を果たす社会的な受容度の高いAI活用を目指すという。

期間:2016年9月~2016年10月(予定) 少数の被験者によるAI技術のプレ評価
2016年11月~2017年3月(予定) 移住相談の場におけるAI技術の効果検証
場所:糸島市役所および、主に国や自治体の主催する全国の移住・定住支援イベント内糸島市ブース

今回の共同実証実験の実施にあたり、糸島市は移住希望者・地域住民インタビューのフィールド提供および移住地域推薦のノウハウ提供を、九州大学マス・フォア・インダストリ研究所富士通ソーシャル数理共同研究部門と富士通研究所はAI技術の開発および社会科学の知見を用いたAI技術の評価検証を担当し、以下の研究を実施する。

糸島市は、細かな地域密着情報を提供し、移住希望者に移住先の地域を知ってもらい、気に入り、納得して転入してもらうことで、移住者の不安解消、周辺住民とのトラブルの防止、生活満足度の向上、地域活動の活発化、住民の転出抑制などに繋げるという。

九州大学と富士通研究所は、人間の好みや希望といった心理に関する数理モデルとAI技術を融合し、移住希望者のマッチングのみならず、多様な社会課題の解決を目指す。また、富士通研究所は、同実証実験の結果から自律成長AIの改善を行い、2017年度中に富士通株式会社のAI技術「Human Centric AI Zinrai(ジンライ)」の新技術としての実用化を目指す。

※地域密着情報:人口や面積といった統計的な情報だけでなく、地域の行事や雰囲気などを伝える地域での生活に密着した情報。

【関連リンク】
九州大学(KYUSHU UNIVERSITY)
富士通研究所(FUJITSU LABORATORIES)

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