9月22日 に日本マイクロソフトが事務局を務める「IoTビジネス共創ラボ」の5回目となる勉強会が開催された。
IoTビジネス共創ラボとは、IoT/ビッグデータ領域のエキスパートが集まり、Microsoft Azure をプラットフォームとするIoTプロジェクトの共同検証を通じてノウハウを共有するコミュニティだ。当然ながらここでの共同検証や研究には様々な形でAIが関わっている。
5回目となる今回の勉強会も、日本マイクロソフト本社のセミナールームには多くのIT管理部門、IoT関連業務に携わるマネージャーや担当者が集まる中、Microsoft Azureを活用した共同実験やIoT事例が発表された。
このコミュニティは、日本マイクロソフトが事務局、東京エレクトロンデバイスが幹事、ユニアデックスが副幹事をを務め
・アクセンチュア株式会社
・アバナード株式会社
・ソフトバンクロボティクス株式会社
・テクノスデータサイエンス・マーケティング株式会社
・株式会社電通国際情報サービス
・日本ユニシス株式会社
・株式会社ナレッジコミュニケーション
・株式会社ブレインパッド
・ドローンワークス株式会社
・ウイングアーク1st株式会社
の13社によるコミッティ会社からなっており、「ビジネスWG」「製造WG」「物流・社会WG」「ヘルスケアWG」「分析WG」「PepperWG」「ドローンWG」の7つのワーキンググループが立ち上がっており各社連携し活動をしている。
この「IoTビジネス共創ラボ」勉強会は2016年3月に第1回目が開催され今回で5回目をむかえた。またその間、IoTで地方を盛り上げたいとして、福島、北海道、中部、川崎に支部が発足されており、今後も様々な地域への拡大していくことが予想される。
Azure × 切れない無線技術“Smart Mesh”温湿度管理~医薬品物流採用事例
若尾氏からは、半導体メーカーであるリニアテクノロジー社のワイヤレス センサ ネットワーク、Smart Meshの紹介と同製品を活用した医薬品物流倉庫での採用事例について紹介があった。
若尾氏は「大きなプラントにセンサー等を導入する場合、“線を張り巡らすこと”が多くの実績と高い信頼性があり長期安定通信とされてきた。しかし、例えば、予期せぬ事故で断線した時の対応などでは、線を引回すのはサービスの拡張性に乏しい。そのため無線ネットワークが期待されるのだが、なかなかうまく行かないケースが多い。無線というのは長期接続していると度々切れることがあるものだが、長期安定性に優れているのがSmartMeshだ。」と強調し紹介した。
このSmartMeshは全ノード化し1000分の1秒と狂わない時刻を共有しており、それによって周波数を変えながら、自立にメッシュを構成することで、99.999%以上のデータ通信信頼性と超低消費電力を実現している。
事例として、製薬メーカの自動倉庫での温度マッピングが紹介された。倉庫は天井高さ25m、幅20m、奥行き40mで高額かつセキュアな医薬品が保管されている。
本格導入前にまずは夏場の温度ムラを確認するために設置を行うにあたり、まったく無線知識のない製薬会社のスタッフ自信が昼休み30分程度で設置したという。
このようにPOCのために簡易的に設置したにも関わらず99.9992%のパケット到達率を達成するとともに、容易に倉庫内の温度ムラの日時変動の特性を把握することがでた。この高信頼性と手軽さにより、夏場だけでなく、冬や梅雨など1年を通しての倉庫の状態をきちんと監視する案件に発展したとのことだ。
海の家で繰り広げられる共創 IoT~人流解析サービス on the beach~
2013年からセカンドファクトリー社がプロデュースしている湘南の “SkyDream Shonan Beach Lounge”にて実施された「海の家で大人の自由研究を!!」にユニアデックス社は「人流解析サービス on the beach」で参加した。
海の家内の3か所にカメラを設置して、そこの映像データを人数や座標、性別年代などの属性データに変換をして、場所ごとの人数のカウントや、滞留の検知、属性分析を行った。
映像からはプライバシーを侵害せずに、具体的には、人数、位置、動線、推定年代、推定性別、移動方向ごとに人数、一定ラインの通過人数、一定領域への人の侵入、混雑や滞留の検知といった情報がテキストデータに変換され、クラウドにアップロードされそこで様々な解析が行われる。
また今回の実証実験では、海の家のBARの中から飲み物を買いに来た人を撮影できるようカウンターの内側にカメラを設置した。BARには飲食店向けPOSシステムが導入されているので、実際の購買情報と映像から得た属性情報を掛け合わせての分析も行えたという。
この「大人の自由研究」を通して、屋外店舗におけるカメラの設置位置や太陽の方向、防塵、防砂などの環境に対する対策や、密なシステム連携がなくとも一定レベルの分析ができることを実証を通じて得たとのことだ。
また、システムがクラウド場に準備がしてあることにより、現地では2時間程度でカメラとGWの設置を行うだけでできたという手軽さは導入店舗にとっても大きなメリットだ。
Azureの顔認証とIoT連携で実現するロボットと連携した新しいカフェ体験
ソフトバンクロボティクス社は、急速に進んでいる少子高齢化による深刻な労働力不足に対して、ロボットを使った働き方革命を目指している。
実際、Pepperは医療・介護、運輸、メーカー・小売り、製造、銀行、受付・接客など2000社以上の企業に導入されている。
豊島氏からは9月21日から開始したばかりの、Nestleのバリスタiと連携するPepperロボアプリ「ロボカフェ」が紹介された。
ロボカフェは、Pepperに好みのコーヒーを注文すると、Android端末を経由してバリスタiにその情報を送信し、バリスタiがそのコーヒーを抽出してくれるものなのだが、単にそれだけでなく、Microsoft AzureのCognitive Services Face APIを活用しユーザーの識別を行い2回目以降の場合は、前回の注文を提案してくれるものとなっている。
また、コーヒー抽出中の待ち時間には、基本ロボアプリ等と連携をしてアンケートをとったり、商品の案内をしたり、待ち時間を有効に活用することができるようになっているとのことだ。
「Microsoft Azureを活用したIoTプロジェクトのコミッティ「第5回 IoTビジネス共創ラボ 勉強会」レポート②」
Azure IoT , Cognitive Services で何が実現できるのか?
日本マイクロソフトの内藤氏からはAzureサービスのIoT編とCognitive Services編としてサービスアップデートとその事例について紹介された。
事例は、ヨーロッパのティッセンクルップ・エレベータ社のエレベーター保守についてだ。エレベータのメンテナンスは実際の稼働の内容、状況により期間が変わるため、つねに稼働をモニタリングされその時期を推奨されメンテナンス効率をよくすることができるようになっている。
最近ではそこにMicrosoft HoloLensを使って次世代の保守を行っている。Hololensには実際のモニタリング情報や作業内容が現実世界に重なり表示され作業者は安全にミスなく保守作業を行えるようになっているのだ。
スポーツマンの夢を実現するスタートアップ「スプライザ」
SPLYZA社はMicrosoft Innovation Award2015で優秀賞を受賞した企業である。個人向けの動画を撮影すると残像動画が自動的に生成され、ゴルフや野球などのスイングなどを確認するできるアプリをリリースしている。
その後“個人”から“チーム”へということで、アマチュアのスポーツマンの「もっと上手くなりたい」を叶えることをポリシーに、サッカーやラグビーなどのチームスポーツ特化型のクローズドSNSをリリースした。
試合動画を撮影しその動画を分析をするのだが、主に戦術スポーツのための編集機能だけにフォーカスしており、見たい地点へ素早く再生するタイムタグを入れたり、指定したカットに図形や字幕などの注釈を書き込めたりすることができる。
これはコーチが分析するのではなく、選手全員が試合後に行うことで、一人だと5~6時間かかるものを15分ほどで行える。この分析した結果、タグをつけた結果をもとにコーチ、選手がスマホ等でコミュニケーションをしながら戦術の見直し等を行っている。いくつかのチームではチームミーティングには欠かせないツールとなっているとのことだ。
設備保全におけるディープラーニングの活用
庄司氏からは設備保全におけるディープラーニング活用ということで、冒頭送電線の不具合をDeep Learningを使って自動検知を行うデモの紹介があった。
https://youtu.be/YE07PzWECuM
動画の左側に表示されているのがヘリコプターのカメラから送電線を撮影した動画で、右側が学習したDeep Learningを使って送電線の不具合を自動で検知し、不具合を強いと判断した場合は赤く表示するようになっている。通常この業務は動画をひとコマずつ人間が目視して検査をしているのだが、AIを活用することで業務が圧倒的に効率化される事例だ。
「設備保全における機械学習(AI)の活用は比較的親和性が高い」と庄司氏は言う。
「現場へのAIの受容度という観点では、製造プロセスにおける不良品抑制の制御など、人が経験・知力を尽くしておこなっていることをAIが実行することは、AIが何を考えているのか十分に理解してもらうことが必要なため、なかなか現場に受け入れられにくい。
一方、異音検知・画像診断など、人が五感(視覚・聴覚など)で判断できるような事象をAIが実行する場合、AIが何考えてるかわからないブラックボックス状態でも、過去データに対して実績を示せれば現場には浸透させやすい。」
また、スモールスタートで始めやすいというのも大きな特徴だという。
実際、Azureを活用すると月数万円でセンサーデータ収集が可能となり、まずは検知するAI、それから診断するAI、さらにうまくいけば自動制御というようにデータの蓄積とともにステップバイステップでAIを高度化させらるようなアプローチが非常に有効だ。

