製造業のプラットフォームは、「現場寄り」か「マネジメント寄り」のどちらかであるべきだ
上野: USの場合はシンプルに、機械のオン・オフを見たり、数字だけを見たりするのが一般的です。「ガントチャート」のように、そこまでしっかりと見たりはしません。おそらく日本の方が、ITシステムが“現場寄り”だからです。USだと現場というよりは経営の人たちが見るので、そこの違いだと思います。
小泉: なるほど。貴田さんは、日本でガントチャートが求められる理由は何だと思われますか。
貴田: データをもとに、その設備が何時から何時まで動いたか、あるいは何時から何時まで止まっていたか、ということをデータサイエンス的に分析するだけだったら、ガントチャートは要りません。日本人は、科学的な分析をするだけではなく、止まっている機械の割合がどれくらいかといったことを、“ぱっと見で”わかるような画面を求める傾向にあります。
機械は必ずしも故障で止まるのではなく、部材を待っているなどで仕方なく止まることもあります。「止まっている機械の率がこの帯の中でこれくらいある」ということを、きちんと現場と共有するのです。
小泉: 機械が、「1時間の中で、合計10分間止まっていました」と「1時間の中で、1分間の停止が10回ありました」では、日本人にとっては意味合いが全然違いますよね。
貴田: そうですね。それをきちんと現場と共有し、現場が自ら改善をするような文化ができているのでしょう。
天野: やはり、日本の製造業は“現場寄り”なのだと思います。アメリカは、“マネジメント寄り”です。現場がいちばんえらい、というのが日本の工場の文化なので、現場がわかるためのガントチャートが必要なのです。上位側の概念では、数字だけでいいのでしょうが。
村岡: 欧米各国では仕事のセクショナリズムが非常に厳しく、「こうした問題を解決するのは、データサイエンティストの仕事だ。現場は関係ない」というように、役割が明確になっています。
ところが日本では、改善業務や日本発といわれるアジャイルプロセスのように、みんなで仕事を共有するのです。マネージャーがするような仕事を現場がしますし、データの解析も現場がします。
小泉: いいことですよね。
村岡: すごくいいことです。日本はそのようにセクションが破壊されやすい分、ビジネスがスモールになる場合もあります。ただ、状況の変化に対し、適応する能力の高いチームができやすいと思います。そういう部分にマッチしたユーザーインターフェースをいかに提供するかということが、「FA Cloud」においても重要になってきます。
株式会社FAプロダクツ 森松寿仁氏(以下、森松): 現場のオペレータの方と経営層の方で、見たい情報は非常に異なっています。現場では、リアルタイムで見たいというニーズが高いですが、経営層の方はいま売上がどうなっているのか、在庫がどれくらい余っているのか、そういうことを知りたいのです。いまの市場にあるクラウドサービスのほとんどが、経営層向けです。
天野: 僕らのこだわりでもあるのですが、製造業向けのツールは、マネジメント(経営層)向けか現場向けか、必ずどっちかに決めた方がいいと思っています。現場向けのツールをつくるべきであれば、そっちに寄せるべきです。その中間にあるようなツールがいちばん困ってしまいます。
その点、僕らの「FA Cloud」はあくまで、「現場が使えるものだ」という打ち出し方をしています。
(後編はこちら)
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技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。