大企業の工場と中小工場に差はあるのか
福本: 東芝デジタルソリューションズでは、大企業のクライアントが多いのですが、可視化に関して見通しが立っているケースも、立っていないケースもあります。
どこに課題があるのか、何を解決したいのか、それがはっきりしている場合はいいのですが、闇雲にとったデータがあるというだけの場合もあります。
小泉: 大企業の場合はどういう課題があるのですか。
福本: ベテランの方が減ってくるので、非ベテランも同じような作業ができるようにしたいとか、そもそも人が入社してこないので、若い方を早く育成したい、といったことを言われます。
小泉: 扱う工場は、フルオートメーションの工場が多いというわけではないのですか?
福本: そんなことはありません。日本の製造業は大企業でもヒトが作っている工程はあります。ボディーの金型を作っている工場などではヒトが最終調整をやっています。また、金型のメンテナンスなどもヒトがやっています。
小泉: なるほど。そういうところは中小工場と同じなのですね。
田口: 大手とか中小という違いではなく、「産業機械が古いか新しいか」というところが問題になりそうですね。
小泉: 産業機械だけでなく、製造プロセスの問題もありますから、そちらはやれることも多いですよね。
田口: 実際、フルオートメーションで作れるものは限られていると思います。ヒトが介在するところがある以上、そこを変えていかないと勝てなくなるということになるのだと思います。
つまり、プロセスの自動化というアプローチだけでなく、人の能力を補助するAIやIoTを考えるアプローチがライバルと戦う上では必要なことではないかと思います。
スループットの向上
福本: 効率化はプロセス全体を対象にすべきだと思います。例えば、前工程で不具合のある部品を作ってしまった場合、それに気づかず、後工程に流せば、後工程で無駄な作業をすることになります。
田口: ラインが前後半でわかれていて、間で中間生産物ができるようなタイプの工場では、前後のラインでスループットが違うと、うまく連携できません。
前後で、どこまでのスピードであれば良品をきちんと作りながら、全体の生産スピードを上げられるか、ということを見ていないといけないのです。
小泉: その話をしだすと段取り替えの話をしたくなります。段取り替えがある度にコアコンセプト・テクノロジーのメンバーのお世話になってしまいそうです。
福本: 日本の製造業は、現場にインテリジェンスがあると思います。どこが悪そうかがわかると、真面目に改善行動をします。つまり、自律的に改善できるようになるのだと思います。
田口: マインドはそれでいいのですが、手段がデジタルになった時、「改善の方法がわかる人が現状いない」ことが問題になると思うのです。一方で、デジタルで改善ができる、効果がでる、ということがわかると内製化しだして人材も育っていくのだと思います。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。