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ドローンを活用した物流・運輸から空飛ぶクルマまで~TDBC Forum2019レポート(前編)

TDBC Forum2019

TDBC Forum2019

2019年4月25日、一般社団法人 運輸デジタルビジネス協議会(以下、TDBC)主催による、TDBC Forum2019が東京コンファレンスセンター・品川にて開催された。

TDBCは、運輸業界をより安心・安全・エコロジーな社会基盤へと変え、業界・社会へ貢献することを目的として、トラック、タクシー、ダンプ、バスなどの運輸事業者と、ITなど様々な業種のサポート企業が連携して2016年8月に発足した。

第3回目となる今年は各ワーキンググループによる実証実験など1年間の活動成果発表に加え、フジタクシーグループとUberの対談は特に多くの注目を集めた。今回は、そのTDBC Forum2019の開催レポートの前編となる。

ドローン物流から、空飛ぶクルマの活用まで

一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)理事長 鈴木 真二氏の講演

一般社団法人 日本UAS産業振興協議会(JUIDA)理事長 鈴木 真二氏の講演では、ドローンを活用した物流・運輸についての講演が行われた。

ドローンの歴史と現在

ドローンの歴史について

ドローンの歴史は意外に古く、第二次世界大戦中には遠隔操作の飛行機が既に出現している。そういった無人機の研究はアメリカ、イギリスをはじめ日本でも行われていた。そうした軍事以外を目的とした開発はそれほど進まず、活発化したのは1990年代の偵察機が誕生したあたりからとなる。日本国内においての無人機利用は、農薬散布をおこなうヘリコプターの研究が国家プロジェクトとしてスタートしたことで、現在でも、農薬散布ではラジコンのヘリコプターが使用されている。

ドローンブームの火付け役は玩具から

今のドローンのおけるブームは、おもちゃのドローンに端を発するそうだ。バッテリーの軽量化、無線技術の発達、センサーによる姿勢の安定化などといった要素に加えて、高精細な映像を撮影できるカメラを搭載したドローンが出てきたことで、瞬く間にドローンは世界中に広まったという。また、ラジコンを一度は操縦してみたことがある人ならわかるかもしれないが、と鈴木氏は前置きし、ドローンが普及した理由のひとつに「操縦が容易である」ということも要因としてあげられると説明した。

産業分野におけるドローンの利用

さらに、現在はドローンを自分で操作するだけでなく完全自動運転させることも可能となった。それによって様々な産業分野において利用できると考えられている。

ドローンの利用分野は広がっている

災害現場においての捜索・点検、また通信基地局の代替としての空中無線機器、建築現場における土地測量、放射線汚染地区における放射線量の測量といった部分でも活用が既に始まっているという。また、ドローンを使った物流は現在さまざまな実験が開始されている。たとえば高齢者へ生活必需品を届けるような活用であったり、郵便配達現場への活用実験、コンビニからのドローンで物を配達するサービスの試みもスタートしたとのことだ。ただし、自動運転におけるレベル定義が定められているように、ドローンも同様に目視外での無人機運行には国土交通省から詳細な要件が定められているため、その条件をクリアする必要がある。詳細は、国土交通省から資料が提供されている。

空の産業ロードマップ

空の産業革命に向けたロードマップ
空の移動革命に向けたロードマップ

自動飛行ができているとはいえ、ドローン技術、およびドローン活用にも多くの課題が残っている。風雨が強いとき、本当にその条件で飛ばすことはできるのか、GPSが取得できないような環境での自動飛行はできるのか、落下時の安全性は考慮されているか、またAIなどを搭載した高度な自立運転も現在考えられている。そして、運行管理等の定めるべきルールの整備といった活用のために必要な制度も準備をすすめていかねばならないと鈴木氏は説明した。

空飛ぶクルマ

エアバス社とアウディ社による空飛ぶ車

最後に、空飛ぶクルマについて世界で行われている議論の紹介があった。これは、人が乗る部分のカプセルにクルマをくっつければ、自動運転車になり、プロペラをつければ空飛ぶクルマになるという構想だ。航空機メーカーのエアバス社が自動車メーカーのアウディ社とともに現在研究を行っている。既に実現されている、空飛ぶクルマに最も近いものが航空メーカーのボロコプター社による自動運転ホバータクシーだ。既にアラブ首長国連邦にて公開試験飛行が行われ、また今年はシンガポールにおいて試験運転が予定されている。

この空飛ぶクルマが生まれた背景としては、車の普及による都市部での深刻な渋滞を解消するということが喫緊の課題になっているからだ。自動車を所有するより、空飛ぶクルマで空と道路を移動することで、より効率的な移動を実現することを目標としている。

また、Uberは空飛ぶタクシー「uberAIR」の計画を2018年に既に立てており、2020年にuberAIRの飛行デモ、2023年に商用運行を開始するとしている。

Uberにおける計画。離着陸拠点「Skyports」の建設デザインが複数出来上がっている。

uberAIRの離着陸拠点「Skyports」の建設において建築会社の複数社とパートナーシップも締結し、さらにuberAIRが想定している充電型の自動運転飛行実現にむけて、交通管理技術と航空交通については、NASAと、航空機向けリチウムイオン・バッテリー・パックの開発ではE-OneMoli社、ローター・プロペラ開発では米陸軍との共同作業声明に署名しているとのことだ。

こうした技術が日本で本当に使えるようになるか、開発できるか、といった「移動革命」に対する議論はまたスタートしたばかりだと鈴木氏は締めくくった。

Amazon Effect 既存の流通はどう対応すべきか

一般財団法人 コミュニティ政策創造基盤機構 理事長 中央大学ビジネススクール 教授中村 博氏からはAmazon Effectによる流通業への影響について講演があった。

一般財団法人 コミュニティ政策創造基盤機構 理事長 中央大学ビジネススクール 教授中村 博氏

最初に、Amazonの売り上げ推移とともに、Amazonにおけるビジネスモデルの説明があった。近年Amazonの成長は目覚ましく、2005年から2018年の推移をみるだけでも大きな成長を遂げていることがわかる。

Amazonにおける大きなビジネスは大きく4つ、その中でも最も利益が高いのはAWSで、プラットフォーム提供がビジネスにおいていかに重要な地位を占めているかが伺える。

アマゾンのリアル店舗状況について

また、Amazonはネット通販展開だけでなく、WholeFoodsを2017年に買収し実店舗を獲得することでよりユーザを増やし、買収直後には商品の大幅値下げを実施、業界に大きな影響を与えた。その状況は、当時の株価の変動からも見てとれる。

WholeFoodsは、いわゆるアップスケールのスーパーマーケットで、オーガニック商品や健康志向の商品を取り扱っている。日本で例えるならば、紀ノ国屋のような位置づけだ。さらに、このWohleFoodsでの小売店情報とAmazon上のネット通販情報を分析・活用するだけでなく、メーカーに対してデータ販売を行うビジネスモデルも確立させている。加えて、このスーパーマーケットには、各大手企業がこぞって商品を提供するため手を挙げた。商品提供のため、いわゆる場所代として出品手数料を支払われることでもAmazonは収益を得ているというわけだ。

Amazonへの対応戦略

Amazonの急激な成長の一方で、小売店業界には様々な変化が訪れた。海外、国内をみてもAmazon以上に大きな成長を遂げている小売関連企業は見受けられない。しかし、その他の企業も現状に甘んじているわけではなく、例えばWalmartを例にとっても様々な対応戦略をとっている。ECマーケットプレイスの「ジェット・ドット・コム」の買収に始まり、多くのネット通販事業企業を傘下に収めている。購入した商品を店舗に受け取るPickTower、VRでの購入体験実験なども近年では実施している。

既存の小売業からみるAmazon対応の戦略について。国内でも各企業が差別化に取り組んでいる。

既存の小売業に目を向けてみると、このように分類できると中村氏は説明した。Amazonは徹底して便利さを追求していく一方で、Walmartは安い価値ある製品を追求している。また、国内を例にとれば、良質なプライベートブランドを安く提供する無印良品であったり、おもしろい・楽しいといった顧客経験価値を提供するドン・キホーテなど、何かしらの特徴を出すことで差別化を図ることに成功している。

最後に、ネット通販の成長における深刻な懸念点として、ドライバー不足について説明があった。大手スーパーの西友もネット通販を開始しているが、配送業者手配ができずに売り上げが伸び悩んでいるというものだ。今までも問題として取り上げられていたものの、各企業の通販事業の活性化により今後ドライバー不足はさらに深刻化するだろうと中村氏は締めくくった。

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