Open Innovation, Machine Device, Cloud Network(略してOMC)という産業のオープンイノベーションとICTの利活用について話を伺う場がもたれた。その中で、IoTで顧客価値を創造するというテーマでのパネルディスカッションが行われた。
【登壇者】
株式会社IDCフロンティア R&D室 室長/ヤフー株式会社 スマートデバイス推進本部 アプリ開発室 IoT推進部 エバンジェリスト 大屋 誠 氏
シスコシステムズ合同会社 シスココンサルティングサービス シニアパートナー 八子 知礼 氏
株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲 氏
モデレーター:
BBA イノベーション部会 部会長/株式会社リンクトブレイン 取締役 清水 弘一 氏
医療・ヘルスケア業界のIoT
BBA 清水氏: 医療とICT,IoTということで、業界のテンションをどう感じられるか?
IDC 大屋氏: これまでは、ゲームや広告の話が多かったが、現在B2Bの話が多い。Yahoo!はジークエスト社と共同でゲノムの情報などを扱ったりするものの、医療や介護、看護についてはまだ遠いと感じている。今後どういう立ち位置でいるべきなのかという課題意識はある。
シスコ 八子氏: 米国では様々な事例がある。「病院の院内の機器をつなげる」という事例があるのだが、国内は難しいと考えている。ヘルスケアの分野では、ライフサイクル全体をつなげていくというような話はメーカーや、製薬会社から相談はきている。一方で、課題意識が高くても、もうかるというわけではないという実情もある。
ソラコム 玉川氏: 業界ごとのテクノロジーを取り込む速度をみると、エンタメが一番はやく、流通、製造、金融、医療というような順番じゃないかと感じている。これは、業界ごとの規制やレギュレーションの問題がるので、本格的な普及には時間軸がずれてくるものだと思う。
一方で、介護やヘルスケアの分野はIoTでも早く進むのかなと感じている。
IoTが進む分野とは
BBA 清水氏: -ゲーム業界では敷居が低くなっている。今後登場する「VR(バーチャルリアリティ)」なども、ゲームの分野では入ってきているがまだ応用するという発想は他の分野ではなかなかだと感じている。そこで、IoTについては、エンターテイメントの分野で進めていくべきなのか、本質的な価値でみたほうがよいのかどちらだろうか?
ソラコム 玉川氏: 「人間が道具をつくるのではなく、道具が人間をつくる」という話(東京大学 暦本氏の講演)を聞いて、そう感じている。クラウドもバズワードと言われていたが、今はバズワードとは言わない。
それは、セールスフォースやアマゾンといった1兆円規模の成功者が現れてきたからだ。プラットフォーマーとして成功した企業が生まれると、料金が安い、という量的なことではなく、質的な変化がうまれ、不可能が可能となるというケースがでてくるので、その結果、「道具によって人間ができること」が出てきて、新しい事業、例えばUBERなどがでてくると思うのだ。
つまり、「人間は新しい道具を見たとき、新しい価値を生み出すことができるのだ」と思う。
シスコ 八子氏:お客様の接点を持っているところが、お客に提供する価値をつかみやすいので、流通やゲームといった、「お客様との接点がある企業」が価値をだしやすい。しかも、一人でできないから、仲間づくりにもどん欲だ。お客様からのプレッシャーも大きいという実態もあるが、逆に、お客様から離れていく業界ほど、要求されるプレッシャーを感じられなくなり、プラットフォームに対する感度が下がってくる。
プラットフォームでいうと、価格がこれまでの1/1000になると、世の中ががらりとかわってくるといわれている。それくらいの価格感がでてくると、現在IoTは簡単にできるということで世界観も変わってくるのだろうなと思ってる。
IDC 大屋氏: 医療分野でも建物や人は必要なので、医療そのものでなくても、業務改善の余地はあるのではないかと思っている。
人工知能とIoTで新しい価値は生まれるか
BBA 清水氏: プラットフォーム戦略は加速していくだろうなと思っている。今までそこにあったデータを取り入れることでデータに付加価値を生み出す。そのためのプラットフォームを生み出し、応用、展開しやすくなるというのがみなさんおソリューションだと思う。
データを取り出す技術として人工知能があげられるが、一方で、仕事が奪われるのではないかという懸念の声もある。人工知能とIoTで新しい価値は生まれると思うか?
シスコ 八子氏: 馬車に乗っていた時代に、馬を世話をして、馬に人を乗せていた人は、クルマが生まれたからと言って仕事がなくなったか、というと、決してなくなっていない。ある仕事はなくなるのだろうが、別の仕事が生まれるのではないかと考えている。
ソラコム 玉川氏: 「ショベルカー理論」といっている理論がある。父が配管業をやっていたのだが、「ショベルカーの時代が来ると配管工の仕事はなくなる」といわれていたのだ。これまでは体力勝負で穴を掘る仕事があったが、今後はなくなるといわれていた。実際になくなってきたという一方で、ショベルカーをリースする仕事や、ショベルカー自体を運転する人など様々な仕事が生まれた。こういった問題は、次の社会に対して準備をするような時間があったかどうかが問題となるのだ。つまり、変化を受け入れられる人は生き残れて、受け入れられない人は生き残れないのだと思う。
IDC 大屋氏: 働くことや働くことの意味について、考えるべきタイミングになってきている。自分や周りにとってうれしいことにコミットしてこれからはやっていくのではないかと考えている。
ソラコム 玉川氏: ポジティブに新しいことと向き合えるかが重要で、テクノロジーの進化はチャンスにしか見えない。
シスコ 八子氏: AIが自分の代わりに仕事をやってくれる時代がくる、ということを、ラッキーと思ってしまう。むしろ乗っかるべきだとおもう。
2020年の社会について
BBA 清水氏: 2020年どうなっていくと思っているかを教えてほしい。
シスコ 八子氏: 本来であれば今から新しい技術が出てきて、外国から来た人に、新しい技術で新しい体験をするという最新鋭のオリンピックを実現することが望ましいのですが、実装していくことを考えると、もう時間がないと思われる。なので、今ある技術で実装していかざるを得ないのだと思う。
国立競技場はじめ、箱モノをつくるだけでなく、サービスとして継続するものを作ってほしいと思う。
ソラコム 玉川氏: 現在海外のヒトって、日本ってすげーって思っている。なので、がっかりしないようにしないといけないのではないかと思う。電車のオンタイムさや、サービスなどいいところは一杯あるが、英語がはなせない、カードがつかえないといった、つまらないことをもっとやったほうがよい。
イノベーションとしては、自動運転は絶対にできると考えている。テスラでは自動運転で高速道路を運転するというのがすでにできている。あとは社会に受け入れられるかどうかが問題なので、法律の問題などみんなで考えるべきだ。
IDC 大屋氏: 人の拡張というのは大きな関心事としてみている。日常暮らしている中でテクノロジーを考えたとき、どう見通していき、よりよくしていくのかを考える仕組みができると考えている。地域を守る話をする機会がおおいのだが、より使いやすいソラコムのような仕組みをつかった、小さな仕組みがでてくるのではないかと思っている。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。