船上でロジスティクスの作業を
秋葉:せっかくの機会ですから、船舶の物流についてお話ししましょう。造船会社、ゼネコン、商社、船舶運行会社などがコンソシアーム的に会社を作っているのですが、そこの構想が面白いです。
この造船会社の社長さんが、食品会社から工場の建て替えや冷凍冷蔵倉庫の建て替えをする際に「海沿いに建てたいが難しい、船でなにかできなか?」という話をいただいたそうです。
豊洲の問題が起こって以降、土壌改良しないと海側に建物を立てられない上に、改良しようとするとお金がすごくかかってしまいます。そこで立て替え工事を行っている間に船の上でできることはないか、というお話です。その流れで私のもとにも船の活用についての相談が来ました。
その話をいただいた時に「今までコンテナを運んでるだけだったけど、そういうことなら船の上で仕分け作業が出来ないかな」ということを思い付いたのです。
そこで最初は東南アジアからの船で試そうということになったのですが、国際法がひっかかってきて、輸送途中に荷捌きをすることは、難しいという話になりました。そこで沖縄を一旦経由しようという案が出たのです。
小泉:税関を通していない荷物を仕分けすることができないということですね。しかも、沖縄を経由しさえすれば、国内の法律が適用されるわけですね。
秋葉:そうです。なるほどと思ったのは、東京湾から入ってくると通関で50時間から70時間くらいかかるわけですが、それと沖縄を経由してから各地に配送する時間がほぼ同じなのです。ということは沖縄をワンタッチして仕分ければ、同じ時間がかかっても、コストは下げられるわけです。
このような経緯で沖縄を経由する案は良い、という話になりました。ところが今度は「沖縄では対応するための土地が足らず、人もいない」という問題が出てきました。
そこで、その次に出た案が神戸です。2025年に大阪万博がありますが、それに合わせて神戸にもう一度華やかさを、ということで大阪にあるコンテナを神戸に移すことに合わせて港の活用を見直そうという話がでているわけです。
さらにコンテナ施設、物流施設、商業施設などを作る計画も出ており、荷物を上げればすぐそこに商業施設があるので、その商業施設で買ってくれた個人のお客さんに対して、「これはご自宅まで送っておきますから」と、荷捌き作業などでコストダウンした分だけ送料サービスに還元しようという案もあります。
MaaS時代の船舶輸送
八子:船の上で輸送しながら作業できるとなると、動く共配センターみたいですね。しかもリモコンで自動航行も出来るようになるだろうから、船上での仕分け作業に労力を割くことも可能です。
小泉:船の中から、別の船が離脱して出てくる、といったことも今後出来そうですね。
秋葉:実はそういった話も検討されています。例えばフィンランドなどはフィヨルドがあるので、小型の自動船の研究が進んでいるのですが、そういった国に話を伺うこともしています。
とにかくMaaSでマルチモーダル化が進んだ場合に、海に囲まれた日本で船が活用されていないという状況は避けたいと思っています。
海外を含めた国際法はルールを変えるのは難しいかもしれないけれど、国内であれば国交省などがきちんと整備すれば変える余地があるはずです。
八子:海は信号もないし、陸路に比べて制約がないので自動運転も制御しやすいですよね。
秋葉:また、マルチモーダル化が進めば輸送路の選択肢も多様化します。先ほどは時間を基準にした航路についてお話ししましたが、コストを基準にしたらどういう経路になるのか、というように何を基準にするかによって選択肢が変わる可能性もあります。
八子:全くビジネスモデルに変わりますね。
秋葉:はい、変わると思います。前編でお話しした人手不足の話も同じで、人で稼いでいた部分をどう変えていくのか、という話にシフトするはずです。
小泉:本日はありがとうございました。
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1986年千葉県生まれ。出版関連会社勤務の後、フリーランスのライターを経て「IoTNEWS」編集部所属。現在、デジタルをビジネスに取り込むことで生まれる価値について研究中。IoTに関する様々な情報を取材し、皆様にお届けいたします。