2019年8月21日、インターネットイニシアティブ(以下IIJ)とアドバンテックはIoTプラットフォーム「WISE-PaaS」の日本でのビジネス展開について協業することを発表した。
IIJとアドバンテック、協業の背景
IIJは元々ネットワークの事業を中心にIT事業を展開し、現在ではMVNO(携帯電話回線などの無線通信基盤を他の通信事業者から借り受け、独自のサービスをくわえて提供する)によるモバイルネットワークのビジネスを土台にしながら、クラウドサービスとネットワークサービスを提供する事業を拡大している。
アドバンテックは産業用PCや組込ソリューション、ネットワーク機器などの産業用デバイスを扱う一方で、製造業向けに特化したプラットフォーム「WISE-PaaS」を提供している。
今回の協業は、IIJのクラウドサービスとネットワークサービスを、アドバンテックのエッジデバイスと「WISE-PaaS」の間の通信やクラウド環境のレイヤーで利用し、デバイスからクラウドまでを包括的に提供するプラットフォーム「WISE-PaaS JP」を展開することが趣旨となる。
IIJとアドバンテックの協業の背景については、アドバンテック・インダストリアルIoTグループiFactory事業部ディレクターの古澤隆秋氏から説明があった。古澤氏によれば「昨今で工場用IoTを導入したい、となった場合に避けて通れないのがワイヤレスネットワーク」だという。
「WISE-PaaS」は150社ほどのパートナーを有しているが、まだまだオンプレの状態になっている企業が多いのが現状だそうだ。
現場の中で配線をせずにワイヤレスでデータを収集し、リアルタイムでデータをマネジメントすることにアドバンテックはチャレンジしようとするが、このシステムに組み込むためのSIMメーカーをどこに頼むのか、ということで悩んでいた。
また、現場の配線を無くしてワイヤレスによるデータのやり取りをする場合に、セキュリティーを担保できるのか、という不安もあったという。
こうした悩みの末に、クラウド・セキュリティ・インテグレーションをワンストップで提供できるIIJと協業し、デバイスからクラウドまでをパッケージ化した「WISE-PaaS JP」の構想が出来たのだ。
次ページは、「「WISE-PaaS JP」の仕組み」
「WISE-PaaS JP」の仕組み
「WISE-PaaS JP」の基本的な仕組みについては、IIJ・IoTビジネス事業部長の岡田晋介氏より説明があった。
まずは生産機械や機械に付けられたセンサーから産業用PCとなるゲートウェイに集まる。ゲートウェイにはIIJの提供するSIMカードが組み込まれており、モバイルかつ閉域のネットワークを使いIIJのクラウド上に構築された「WISE-PaaS」までデータを持ってくる。
そして取得されたデータをもとに「WISE-PaaS」を使って設備状態の可視化や、予知保全のための分析を行うことができる。
「WISE-PaaS JP」の特長については3つのポイントがあることを岡田氏は説明した。
1つはIIJのクラウドサービス・ネットワークサービスをアドバンテックのソリューションと組み合わせることで、必要なデバイスからクラウドまでを一気通貫で提供できること。これにより顧客は素早く、かつ少ない開発負担で産業用IoTを導入できるという。
2つ目はLTE、VPN、LoRaなど数種類のネットワークを選択することができ、セキュリティーを担保して使えること。
3つ目は「WISE-PaaS」がオープンソースで構成されたプラットフォームで技術習得が容易であり、かつアドバンテックの提供するエッジアプリが複数の既存設備に対応できることだという。
「WISE-PaaS JP」については2020年1月に提供開始予定。販売については「Domain-Focused SI」という協業パートナーを募ってアドバンテックが行うということだ。

