NTTドコモは5Gの商用サービスを3月25日より提供を開始することを発表した。
会見では、5G導入の意義やドコモの5G戦略、B2Cでの5G対応のサービス、B2Bのソリューション、5G対応デバイスの提供について説明があった。
2023年度には日本全土をカバー、2,000万端末を目指す
まず会見では、5G導入の意義とドコモの5G戦略について、同社代表取締役社長 吉澤和弘氏が説明した。
吉澤氏は、5Gサービスの導入を行う意義について、「ユーザーに対する新たな体験や価値を創出する事」、「社会課題を解決する事」の2点を挙げた。その上で、今後2~3年間におけるドコモの5G戦略について、ネットワーク・デバイス・サービス・ソリューションの領域ごとに紹介した。
基地局の設置目標
ネットワークについては、以下の2点が戦略方針として挙げられた。
1点目は、新周波数帯を最大限に活用したエリアを用意して、高速大容量を実現する事。
2点目は、2023年度には、基盤となる親局の展開率を、97.0%に達成させる事だ。基盤展開率が97%になれば、おおむね日本全土をカバー出来る。
会見では、5Gエリアの具体的な拡大目標が発表された。まず2020年3月のスタート時点では150か所、基地局300か所から開始する。そして2020年6月時点で、全都道府県への導入と、東京2020オリンピック・パラリンピックの主要施設における提供を予定している。さらに2020年度中には政令指定都市を含む500都市へ展開し、最終的に2021年度末までには2万局以上の展開を見込んでいる。
また、2020年度初頭には、5Gの可搬型基地局である「キャリー5G」も、全国に33台配備し、順次増やしていく予定だという。
※2020年3月末時点の5G利用可能施設・スポット一覧は、こちら
なお、通信速度については、2020年3月の時点では下り最大3.4Gbps、上り最大182Mbpsを予定。2020年6月以降は下り最大4.1 Gbps、上り最大480Mbpsを予定している。
「マイネットワーク構想」を推進
デバイスについては、以下の3点が戦略方針として説明された。
1点目は、2023年度までに5G対応のスマートフォンの契約数を、2,000万件規模まで達成する事である。
2点目は、スマートフォン以外の周辺機器を充実させ、「マイネットワーク構想」を推進する事である。「マイネットワーク構想」とは、ドコモが取り組むマルチデバイスによるソリューション提供のこと。5Gのスマートフォンをハブに、多数のデバイスを接続する事で、新たなテクノロジー体験をユーザーに提供する、というものだ。
3点目は、アリーナやスタジアムといった、様々な会場における5G環境の準備を推進する事である。これには、5Gに接続できる機器を持っていないユーザーにも、5Gによる新たな体験を早期に提供できるようにしたい、という意図があるという。まずは2020年に茨城県立カシマサッカースタジアム、2021年に有明アリーナにおいて、5G技術の体験提供を予定している。
サービスは音楽ライブ・ゲーム・映像・スポーツが主領域
3つ目のサービスについては、5Gの特長をダイレクトに反映し易い音楽ライブ、ゲーム、映像、スポーツの4つを主な領域として、コンテンツを提供していく方針だという。また、8KVRや、マルチアングル、XRといった5G特有の要素を複合的に組み合わせる事で、ユーザーに対して特別な体験を提供する予定とのことだ。
パートナーとの共創の輪を広げる
ソリューションについては、パートナーとの共創を重視し、2018年2月に開始した「ドコモ5Gオープンパートナープログラムのパートナー数」を2022年3月には5000社まで広げる、という目標を立てているという。これにより、社会課題を自治体・企業と解決する共創の輪を日本全国に広げていくそうだ。
次ページは、「ライブ体験や映像鑑賞のスタイルを変える5Gサービス」
ライブやスポーツ、ゲームなど映像体験のスタイルを変える
5G対応のサービスについて、音楽ライブ・ゲーム・映像・スポーツにおける具体的なコンテンツ提供の内容が紹介された。
8KVRライブで、臨場感のある音楽ライブを楽しむ
音楽ライブについては、「新体感ライブ CONNECT」における新機能「8KVRライブ」の追加が発表された。
「新体感ライブ CONNECT」は音楽ライブや舞台をマルチアングルなどで楽しめる動画配信サービス。今回の「8KVRライブ」は8Kカメラで撮影した360度のVR映像を、スマートフォンを使ってリアルタイムで視聴できる環境を提供する。ユーザーはVRグラスを装着してスマホを覗くと、高精細な8Kの360度ライブ映像を、まるで会場の最前列にいるかのような臨場感で楽しむ事が出来るという。
吉澤氏は「新体感ライブ CONNECT」について、「アーティストとファン、あるいはファン同士がつながるような新しいライブの楽しみ方を実現するサービスにする」と述べた。
大容量のクラウドゲームを100タイトル以上配信
ゲームについては、3月18日より「dゲーム」にて、100タイトルを超えるクラウドゲームの配信を行う事が発表された。
高速大容量の5Gのストリーミングにより、パッケージ速度の購入や、ローカルへのダウンロードをせずに、クラウドゲームが楽しめる。そのため、自宅でのプレイが主流だった大容量のゲームも、スマートフォンで自由に楽しむ事ができる。このような背景の下、ドコモはクラウドゲームの大量配信に取り組んだという。
配信されるゲームのうち、注目のタイトルは今春提供予定の「真・三国無双8」と「ファイナルファンタジーXV」であるという。特に「真・三国無双8」については、5Gの高速大容量を活かした4Kバージョンを用意するとのこと。
また、3月26日に提供を開始する「エヴァンゲリオン バトルフィールド」では、5Gの特長を活かした複数プレイヤーによる同時対戦モードを用意しているという。
自動回転機能やマルチストリーミングなどを使った映像体験を提供
映像については、以下の4点のコンテンツ提供が発表された。
1点目は、「ディズニーMYTH アナと雪の女王/秘められた神話」である。これは映画「アナと雪の女王2」の世界を舞台にしたVRショートストーリーであり、ドコモが独占提供するという。
2点目は、「dアニメストア」で配信される「タテヨココンテンツ」。これは、自動回転機能を活用することで、タテとヨコで異なる映像をスムーズに切り替えて楽しむ事が出来るコンテンツだという。第一弾として、画面を横にすると東京事変のミュージックビデオ、縦にすると神風動画制作のアニメーションが視聴できる動画を配信する。
3点目は、マルチアングルに対応した視聴。これは漫画「鬼滅の刃」を原作とした2.5次元舞台作品を、好きなアングルを選んで自由に視聴できるというものだ。
4点目は、「ひかりTVドコモ」に追加される、マルチストリーミング機能。これは、「ひかりTVドコモ」の18の専門チャンネルの中から、最大7つの好きな番組を同時視聴できる、という機能だ。
Jリーグ、Tリーグにおける映像観戦の価値向上を目指す
スポーツについては、以下の2点が取り組み内容として発表された。
1点目は、Jリーグクラブの「鹿島アントラーズ」と連携し、マルチアングルによる試合映像のリアルタイム視聴、好きなタイミングでのリプレイ視聴を提供する事だ。これはJリーグの再開後、速やかに提供の準備を行うとのこと。
2点目は、Tリーグ(卓球リーグ)と共同で、マルチアングル視聴などのデジタルコンテンツサービスの企画を進める事である。これについては、NTTぷららの映像制作と配信技術を活用して、映像観戦の価値向上と、Tリーグのファン層の拡大を目指すという。
「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」発のソリューションを提供
ソリューションについては、「ドコモ5Gオープンパートナープログラム」により生まれた22点のソリューションを、3月25日より提供開始する。
会見では、提供するソリューションの一部紹介と、パートナーとの共創拡大に向けたサービス内容について説明があった。
遠隔作業支援、高精細映像伝達、顔認証入退管理の取り組みを紹介
今回、提供予定のソリューションとして紹介されたのは、以下の3点である。
1点目は、サン電子との協業による遠隔作業支援ソリューション「AceReal for docomo」。これはARスマートグラスを使って、遠隔地から作業現場の業務支援を行うことで、不慣れな作業員でも作業クオリティを担保できる、というソリューションだ。効果としては、現場の作業時間を4分の1に短縮する事を見込んでいる。また、熟練労働者の減少や、地域における労働力不足の解決につなげることも考えているという。
2点目は、高精細映像伝達ソリューション「Live EX 8KVR」。これはお祭りや音楽ライブなど、VRライブ配信を行いたいユーザーに向けて、撮影から配信までワンストップでドコモが提供し、ライブ配信をサポートするというソリューションだ。
3点目は、リアルネットワークスとの協業による、顔認証入退管理ソリューション「EasyPass powered by SAFR」。これは、スマートフォンを介して顔認証が行う事が出来るソリューションだ。ITに不慣れな人間でも、簡単かつ安価に顔認証が導入できる点がメリットだという。
ネットワークをサポートし、共創の輪を広げる
会見では、上記のような共創の輪を広げるための取り組みについて紹介があった。
まず、吉澤氏は「5Gソリューションの共創の輪を広げるためには、サービスを提供するソリューションパートナーの拡大と、サービスを活用するフィールドパートナーに最適なネットワーク構築をサポートする事の2点が不可欠である」と述べ、それぞれについての取り組みを説明した。
ソリューションパートナーの拡大に向けた取り組みについては、5Gとシナジーの強い特徴的な技術・プロダクト・サービスを発掘する「docomo 5G AWARDS 2020」を実施するという。
フィールドパートナーに向けた取り組みについては、以下の2点が紹介された。
1点目は、パートナーのネットワーク構築をサポートする「ネットワークカスタマイゼーション」の提供。これは、5Gを中心としたネットワークのエリア調査から、構築設計・導入支援までを総合的なコンサルティングサービスとして提供し、パートナーが持つネットワークに関するニーズに応えるものだという。
2点目は、MEC(移動通信網において、ユーザーにより近い位置にサーバーやストレージを配備する仕組み)を活用したクラウドサービス「ドコモオープンイノベーションクラウド」の提供。これは低遅延、高セキュリティといった特長を持つクラウドサービスである。
吉澤氏によれば「MEC上に画像認識エンジンなどのパートナーソリューションを搭載することで、5G時代の様々なサービス・ソリューションに活用されることが期待される」という。
サービスについては、3月から東京1拠点にて提供を開始し、5月からは4拠点に拡大する。また、ドコモのネットワークとの直結による低遅延サービス「クラウドダイレクト」も5月から提供を開始する予定だ。
次ページは、「5G端末は6機種が発表」
5G端末は6機種が発表
会見では5G対応のスマートフォンや、周辺機器の提供について発表があった。
今回、発表された5G対応スマートフォンは以下の6種類である。
- Galaxy S20 5G:64,000,000画素の望遠カメラを搭載。8K動画の撮影が出来る。
- AQUOS R5G:被写体を自動追従するズーム再生機能付き。
- LG V60 ThinQ 5G:2画面対応で、マルチタスクが出来る。
- XPERIA 1 Ⅱ:ZEISS LENS搭載のトリプルレンズカメラ付き。
- Galaxy S20+5G:6.7インチの大画面、大容量電池が特徴。「Olympic Games Editon」もある。
- arrows 5G:カメラのシャッターを切るだけでadobeの自動補正が出来る機能付き。
また、5G対応のデータ受信端末として「Wi-Fi STATION」も発表された。
スマートフォン以外の周辺デバイスについては、「Magic Leap One」を5月以降に提供する事が発表された。「Magic Leap One」は米Magic Leap製の、空間コンピューティング技術を搭載したヘッドセット。これによりMRコンテンツを楽しむ事が出来る。
「Magic Leap One」については、ドコモオンラインショップで提供するほか、MRの活用に関心のある法人や、XRコンテンツクリエイターに向けて提供していくという。
5Gの料金プラン
5G対応の料金プランについては、「5Gギガホ」「5Gギガライト」の2プランを3月25日から提供開始する。
「5Gギガホ」は月額7,650円で、データ量を無制限で利用する事が出来る。「5Gギガホ割」を始めとする割引サービスを適用すれば、最大6か月間は月額4,480円の利用料になるという。
データ量に応じた料金支払いとなる「5Gギガライト」は、1ギガバイト1,980円から提供する。

