日本電気株式会社(以下、NEC)は、Beyond 5G・6Gの高速化・大容量化を実現するためのデジタルシグマRoF(RoF: Radio over Fiber)に、自社で開発した無線信号の信号品質を改善する、歪補償技術を適用したリアルタイムの実証実験を行い、成功したことを発表した。
Beyond 5G・6Gでは、無線通信のさらなる高速化・大容量化が必要となる。これには、現在の5Gよりも周波数が高いミリ波帯や、サブテラヘルツ帯を移動通信に利用することが考えられている。
ただし、高い周波数帯の電波は、遮蔽物によってすぐに弱まるという課題があるため、多数のアンテナを無線基地局から伸ばし、移動する端末に複数の方向から電波を送る分散MIMOシステムが有効な解決手段とされている。
分散MIMOシステムにおいては、基地局から数km離れた場所にあるアンテナにも無線信号を送るために、長距離伝送に適した光ファイバを使用するRoF技術が注目されている。
今回NECは、従来のRoF技術に対し、基地局やアンテナの低コスト化・小型化が可能なデジタルシグマRoFを採用した。ただし、これにより基地局が生成したパルス列の波形が光伝送により歪んでしまうという問題があった。
この問題を解決するため、NECは自社の歪補償技術を適用し、デルタシグマRoFにより伝送された無線信号の品質改善をリアルタイムで確認することに成功した。
デルタシグマRoFは、一般に流通している安価な光トランシーバを利用でき、高価な高性能デジタル・アナログ変換器が不要であるという特徴があるため、従来のRoF技術に対して、基地局やアンテナの低コスト化・小型化が期待できる。
デルタシグマRoFは、基地局で無線信号をデルタシグマ変調により2値のパルス列に変換し、このパルス列を基地局からアンテナに光伝送した後、アンテナでパルス列から無線信号に戻す技術だ。
しかし、デルタシグマRoFでは、基地局が生成したパルス列の波形が光伝送により歪むことで、アンテナで復元された無線信号の信号品質が低下し、高度な変調方式が使えなくなり、通信速度が遅くなるという課題があった。
これを解決するため、NECは光伝送後のパルス列に生じる波形歪を再現する回路を基地局装置に埋め込むことで、デルタシグマRoFにより伝送された無線信号の信号品質を改善する歪補償技術を開発した。
この歪補償技術では、基地局装置が波形歪を考慮したパルス列を生成することで、アンテナで無線信号に戻したときに、光伝送後の波形歪を補償し、無線信号の信号品質を改善することが可能だ。
そしてNECは、この歪補償技術を組み込んだ回路を実装したFPGAを用いて、帯域幅400MHzのOFDM信号の信号品質をリアルタイムに評価した。
評価結果によれば、信号対雑音比を28dBから36dBに8dB改善できることが確認された。この信号対雑音比の改善により、QPSK、16QAM、64QAMに加えて、さらに高度な変調方式である256QAMも使用できるようになり、通信速度を1.33倍以上に高速化することが可能となった。
NECは今後、デルタシグマRoFに今回開発した歪補償技術を適用することにより、無線機器の小型化・低コスト化とともに、高速化も可能になるとしている。
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