AI時代に入り、映像データを取得して、そのデータを解析することで様々な課題解決を行うことが当たり前となってきた。
映像データを解析するニーズは多岐に渡るが、例えば、イベント会場や観光地などで、人流解析をしようとした場合に、映像データを取得する際には問題が発生するケースがあり、大きく2つの問題がある。
一つ目は、映像データを送信する際、敷地が広大で、電源を取れない、通信をしたくても飛距離が遠すぎて通信装置まで届かないという問題だ。
二つ目は、Wi-Fiがすでに飛んでいるため干渉をおこす可能性や、人が多く混雑しているためLTE通信が混み合い輻輳する可能性があるという問題だ。
これら回避するために、これまでの解決策としては、電源については、PoEケーブルと呼ばれる電源と通信の両方をサポートするケーブルを現場に這わせてカメラの設置を行う、また、LTEの輻輳やWi-Fiの干渉については、通信帯域の異なる通信を使うなどの対策が一般的だった。
しかし、電源工事を行う場合、工事が大掛かりになることがよくある。
以前取材した事例で、空港における検査場の混雑具合を監視するという事例があったが、24時間動いている空港の天井にPoEケーブルを這わせたり、元々電源のない壁にカメラを取り付けるために壁に穴を開けたりするといった大掛かりな工事が必要となるという問題が発生していた。
また、LTEの輻輳やWi-Fiの干渉については、工場や物流倉庫などの現場で様々なデータを取得する際問題が起きていた。
これを回避するために、LoRaWANと呼ばれる、通信帯域の異なるデータ通信を実現するという解決策がある。
しかし、LoRaWANでは、伝送可能なデータ量も少ないので、映像のような大きいデータを扱う場合は、この方式が使えない。
そこで、Wi-Fi HaLowと呼ばれる通信規格と太陽光を利用して撮影できるカメラを使った映像ソリューションに期待がかかっている。
Wi-Fi HaLowとは?
Wi-Fi HaLowは、Wi-Fi規格の一種であるが、先の事例でいうLoRaWANやSigFoxと同様920MHz帯を利用した無線規格である。
特徴として映像データが送信可能で、低消費電力と広域通信が実現されており、障害物への耐性が強い。
兄弟関係のLoRaWANやSigFoxと同様の利用シーンを実現できるだけでなく、映像データのような比較的大きなデータを送ることも可能となるところが興味深い。
愛知県国際展示場(セントレア)での事例
実際、Wi-Fi HaLowを使って、映像データを送信した事例について、IIJのIoTビジネス事業部 営業部 副部長 兼 プロダクト企画課 課長 三宅 伸明氏と、IoTビジネス事業部 営業部 プロダクト企画課 松永 洸生氏に伺った。
愛知県常滑市にある空港島内には、国際空港や物流施設等があるだけでなく、Aichi Sky Expo(愛知県国際展示場)という大規模な展示会やライブイベント等が行われる施設もある。
そのAichi Sky Expoでは2025年8月末に3つの大型イベントが同時開催され、空港利用者とも相まって、駐車場や周辺の混雑が想定された。実際にその同時開催日には合計約25,000人の来場者がその施設に訪れた。
そこでAichi Sky Expoを運営管理する愛知国際会議展示場株式会社は、IIJに依頼し、施設の駐車場と道路の混雑状況をリアルタイムでYouTubeに配信して、利用者の来場手段(公共交通機関、自家用車)や、時間的タイミングの分散を促し、混雑緩和と理解を利用者に促したいと考えた。
駐車場に設置されたカメラは、電源が取れる状況であったため、有線を使ったカメラ映像の送信が可能だった。
しかし、道路の混雑状況の映像を取得するカメラは、電源は取れる環境ではあるが、アクセスポイントから270m離れた場所に設置しており、障害物もあるような環境であった。
そこで、屋外で利用可能で長距離伝送可能なWi-Fi HaLowを活用した通信を行うことで、電源しか取れない場所の映像も取得することができ、YouTube配信を実現したということだ。
三宅氏によると、以前荒川の河川敷で実験した際は、HDで15フレーム/秒の映像を転送することが実証されたということだ。
これくらいの映像であれば、十分人流解析には使えるし、カメラの位置次第では顔認識などでも使えそうだ。
この映像は、IIJがi-Pro社が提供している一般的な監視カメラで建物の屋上から撮影し、Wi-Fi HaLowを使って伝送してみた例だが、可視化や解析に十分な映像クオリティだと言える。
将来への展望
電源がない場所でも、カメラの映像を配信できるのであれば、広大な駐車場や道路以外でも、例えば大型のスタジアムや花火大会などのイベント実施時の混雑状況を可視化、人流解析に活用したり、広大な工場や物流倉庫での状況可視化に活用したり、山奥の鉄橋の様子を監視したりと、さまざまな利用シーンが考えられる。
AIによる映像の分析が一般化した昨今、こういった通信は検討してみるべきだ。
では、Wi-Fi HaLowには、課題がないのだろうか。
まず、映像を送ると言う利用を前提とすると、コマ送りになってしまう。しかし、これは上の映像でも見た通り、物体認識をするくらいであればそれほど問題にならないケースが多そうだ。
この問題は、実はWi-Fi HaLowの仕様にある。「Duty比10%制限」という日本での利用に関する制約だ。
具体的には、日本の電波法では、920MHz帯でデータ通信を行う場合、1時間あたり6分に制限される。
実は、これが前述したコマ送りになる原因とも言えるのだ。
しかし、2029年にはこの規制もなくなるということで、今後さらに綺麗な映像を配信することが可能になるという。
このタイミングを待てるのかといえば、もちろん待てなくはないが、映像の分析をつかったソリューションは今すぐにでも使いたいと思う方も多いはずだ。
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