毎年1月にラスベガスで開催されるCES。年々注目度も上がり、日本の企業も出展するという活動も盛んになってきている。
その一方で、「どう見たら良いかわからない」という質問を受けることが多いのも事実だ。2030年には4,000億米ドルとも呼ばれている市場だが、2020年くらいからこの傾向は加速すると見られている。
その前年となる2019年のCESを紐解く意味でも、まずは、2015-2018を振り返っていく。
第一回は、スマートホーム関連の流れだ。
利用者にとってのスマートホームの価値
スマートホームは、初期段階では、「セキュリティ」「省エネ」に関する話題が多かった。
外出先でもインターネットカメラで訪問者が認識できるドアホンや、取り付けるだけでインテリジェントに空調管理をしてくれて、電気料金を下げてくれるサーモスタット製品などがこれにあたる。
その一方で、「ホームコントロール」「エンタテイメント」「ホームヘルスケア」と呼ばれる分野は、簡単に市場は立ち上がらない。
実は、2030年に市場拡大が期待されている領域は、この三領域なのだが、これらは「面白いとで感じる一方で、必然性を感じない」ということで、すぐに買いたくなるというものではないのも特徴だ。
ホームコントロール
スマートホームといえば、2015年頃は電球の色をスマートフォンで変えられたり、洗濯機をスマートフォンでコントロールしたりと、スマートフォンでそれぞれのデバイスを操作するというものが流行った。
これらは、iPhone以後のスマートフォンの急拡大に応じて、アプライアンス製品と呼ばれる、スマートフォンの出先デバイスとして開発されていたため、ほとんどのデバイスが「スマートフォンありき」となっていることも特徴だ。
通信ができて、高性能なコンピュータが搭載されたスマートフォン。世界中の人が持つスマートフォン。
これを活用して、なにか生活を変えたいという欲求がでてくるのは不思議ではない。
しかし、技術ありきな発展は、ホビーユースのラジコン操作のようなもの(スターウォーズのBB8やドローン)については、受け入れやすいものの、家電製品のコントロールには抵抗があった。
また、この頃、様々な通信規格が乱立していて、どの通信規格に対応しているかが重要であった。
そして、2016年から2017年頃になると、ハブ化が進み出すことになるのだ。
ハブ化というのは、バラバラに制御していたスマートホームのデバイスを、一つのデバイスでまとめようと言う流れだ。
スマートフォンも、この取りまとめるデバイスと通信をして集中制御するようになる。
こうなると、通信規格がどれであるかということはあまり問題にならなくなる。どういうサービスにまとまっていくのか、ということが重要になっていくのだ。
例えば、Samsungのスマートシングスなど、どういうサービスグループに各種デバイスが属しているかが話題になった。
Amazon Alexa祭りと現実
こうしてスマートホームのデバイスは、いろんなグループにまとまっていくのだが、2016年にAmazon Echoが登場するやいなや、2017年のCESはAmazon Alexa祭りとなる。
音声でなんでもコントロールできるという、技術的なアドバンテージに多くの人が魅了され、現在手持ちのデバイスをAlexaやGoogle Agentに対応させるということが、大手メーカーも巻き込んで進んだタイミングでもあった。
しかし、単純に音声でコントロールするというだけでは、スマートフォンで操作するのと何も変わらない、しかも、そういった「スキル」と呼ばれるデバイスとの接続アプリケーションは、スマートフォンなどを使ってスマートスピーカーにダウンロードしなければならないということもあり、簡単には広まらなかった。
前述した、ハブ化の流れとスマートスピーカーの流れが合流し、単純にスマート家電を何らかの形でまとめて コントロールするだけでは、市場が広がらないということもよく理解された。
スマートホームのテーマ化
現実的に、全ての家電をコントロールしようと思うと、例えば家の電灯を管理しようとするだけでも大変だ。
「玄関」「トイレ」「リビング」「ダイニング」「キッチン」「寝室」・・・というふうに、電灯と一言で言ってもかなりの数がある。家の電灯をコントロールしようと思うと、これらの電灯をすべてハブに登録し、電気をオン・オフするといった際、「リビングの電気を消す」といった具合に個別に認識させながら制御することが必須になる。
これは、正直現実的とはいえない。
そこで、「テーマ化」が進むのだ。
例えば、現在のAmazon Echoでは、「Alexa おはよう」というと、電灯がついて、カーテンが開いて、コーヒーがいれられる、という一連の制御が可能となる。
つまり、人の行動様式にあわせて、必要な家電を一度にコントロールしようとするのだ。
こうすれば、「歯磨きしている時」には、スマートミラーがSNSの最新情報を流し、スマートスピーカーからは交通情報やお天気が流れる、と言う具合にスマート家電が気を利かせて動くようになるのだ。
一見便利なようだが、これではまだ、デバイスの登録も必要だし、制御するタイミングを人が指示しなければならない。
インテリジェントな制御がはじまる
そうして、2018年いくつかの展示で始まっているのが、AIによる自動制御だ。
家の中の様々なセンサーが、住人の生活を記憶して適切な対応を自動で行うのだ。
単純な制御の例で言えば、玄関の人感センサーが人を感知して、足元電灯が点灯するといったことだ。
この例のように、「○○をするときは、××という状態になってほしい」と思う住人の気持ちを、スマートホームのデバイスが自動的に実現するのだ。
ここまでくると、初めの登録だけできれば、あとは何もしなくてもよくなるので、かなり自然な制御となり、その後手放せなくなるだろう。
この考え方の場合、センサーの設置と設定が重要となるので、新築やリフォーム時にトータルソリューションを入れていくという流れになるのだ。
次回以降で、エンタテイメントやホームヘルスケアの分野を解説する。
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IoTNEWS代表
1973年生まれ。株式会社アールジーン代表取締役。
フジテレビ Live News α コメンテーター。J-WAVE TOKYO MORNING RADIO 記事解説。など。
大阪大学でニューロコンピューティングを学び、アクセンチュアなどのグローバルコンサルティングファームより現職。
著書に、「2時間でわかる図解IoTビジネス入門(あさ出版)」「顧客ともっとつながる(日経BP)」、YouTubeチャンネルに「小泉耕二の未来大学」がある。