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今、プロダクトづくりが進化する ーソラコム if-up2019レポート1

ソラコム if-up2019

ソラコムが行なった、プロダクトマネージャー、プロダクト企画者、技術責任者やエンジニアのためのカンファレンス、if-up2019。

冒頭、ソラコムの玉川氏から、「プロダクトの中で、ハードウエアの価値よりも、顧客体験、サービスの価値が相対的に重要になってきている。また、1社ですべてをやるのではなく、エコシステムを活用することも重要になってきている。その一方で、プラットフォームが整ってきていて、やってみようと思えばすぐ始められるし、失敗のコストも下げることができている。」という、プロダクトづくりが進化している背景の説明があった。

ソラコムの提供するIoTプラットフォーム「SORACOM」は、日本発のIoTプラットフォームとして、WHILLやDFREEといったCESでアワードをとるようなプロダクトの基盤サービスとなっている。もっと、こういったプロダクトが出てきてもよいはずだが、なかなか出てこないのが実情と言える。

株式会社ソラコム 代表取締役社長 玉川 憲 氏

実際、「日本のICTエンジニアが100万人もいるのに、登場するプラットフォームの絶対量が少ないと感じた」と玉川氏は言う。

そこで、宇宙に散在する使わなくなった人工生成やロケットなどの「宇宙ゴミ」を回収すると言うテーマに情熱的に取り組んでいる、アストロスケールの伊藤氏、Pepperの生みの親としても知られていて、先日「LOVOT(ラボット)」という家庭用ロボットをリリースしたばかりのGrooveX 林氏から、妄想とも言えるようなことを実現しようとしている、熱いパッションをもった両者の取り組みについて話された。

宇宙ゴミを回収する、アストロスケール

株式会社アストロスケール 副社長 伊藤 美樹 氏

宇宙ゴミとは、不要になった人工衛星やロケットなどのことなのだが、宇宙には相当数のこういったゴミがあるのだという。こう言ったゴミは放置されていて、どんどん増えていっている状況だ。

ちなみに、JAXAによると、2010年現在で10cm以上のものが約20,000個、10cm未満1cm以上のものは約50万個あるということだ。さらに、現在運用中の人工衛星は約1,000個あり、運用が終了した人工衛星についても約2,600個もあるという。

これらが、今後何らかのきっかけで大気圏を超えて地上に落ちてくると思うとゾッとする。

そこで、アストロスケールは、こういった宇宙ゴミを取り除く衛星「ELSA-d」を開発しているのだ。

現在、「浮遊している宇宙ゴミ自体を捕獲するケース」「回転している宇宙ゴミを捕獲するケース」「遠くにある宇宙ゴミを回収するケース」の3つのケースについて実証実験を行い、捕獲した後、衛星ELSA-dが大気圏突入して地上に回収するというアプローチに取り組んでいるのだと言う。

アストロスケールが2020年に打ち上げを目指している、宇宙ごみ除去のための実証実験衛星、ELSA-d(エルサディー)

そもそも、なぜ伊藤氏はこんなことをやろうと思ったのだろう。それは、「大学時代に人工衛星の魅力に気づいて、活用の可能性が高いと思った」のだという。

しかし、こういった、ある意味果てしないとも言える取り組みに関してモチベーションを維持するのは大変なことだ。

これに関して伊藤氏は、「従来の宇宙開発の考え方、やり方、を変えていきたい、変えなければならない」とし、「現在、成長産業として位置づけられている宇宙産業だが、より早く、やっていかなければならない」のだと述べた。

自動車業界など業界の垣根を超えて人材獲得に動いているというアストロスケールだが、宇宙ゴミは大小さまざまで、捕獲をするには、今回実験するモノだけでは足りなく、もっと多くのものを作る必要があるため、まだ入り口に立ったばかりなのだ。

参考:Astroscale

次ページは、「愛のあるロボットLOVOTを生み出す、GrooveX」

愛のあるロボットLOVOTを生み出す、GrooveX

GROOVE X 株式会社 代表取締役 林 要 氏

つづいて、GrooveXの林氏が登壇し、LOVOTという愛らしいロボットを紹介した。

このロボット、テクノロジーとしては自動運転やAIの技術がふんだんに使われていて、非常に高性能なロボットなのだが、実は道具としては何もしない。人と人をつなげる、そんな役割を果たす、犬や猫のような存在がLOVOTなのだ。

以前、Pepperの開発をしていた林氏、ロボットと接していて人が笑顔になるときは、人がロボットがうまく立ち上がらないのを助けた時や、目があった時に感動していることがわかったのだという。

最近のロボット、特に産業向けのロボットは、人を助ける、自動化するという方向に向いているが、人に向き合うロボットは、「人を幸せにすることが役割」なのではないかという。

ドラえもんが四次元ポケットから繰り出す道具は決してのび太くんを幸せにしておらず、毎日家にいるのに家のお手伝はまったくしない。しかし、のび太くんはドラえもんがいることそのもので、友達が増えたり、楽しい人生を送れたりしているのだと、人と向き合うロボットの役割の例を挙げた。

Groove Xのロボット、LOVOT

こういった、カテゴリーキラーとなる新しい製品を生み出す過程で、「周りからもいろんなことを言われるが、製品開発の会社だと売り上げが立つまで長くなるため、身内ですら不安になることがある」と話す一方で、「試作を作り続けるしかないが、長期化すると不安になるので、短い期間で動くものを作って、仮説の優位性を証明していくことで自信が持てるようになるのだ」と、長期化しがちなプロダクト開発過程でのプロジェクト推進のコツを述べた。

このプロダクト開発には、スクラムという開発手法をとっていて、100名程度いる社内はかなりフラットなのだと言う。

なぜこれだけ、様々な先端技術があるのに、家庭用ロボット産業が立ち上がらないか、ということについて、素材、機械、電気、デザイン・・と多くのことをロボット作りでは調整しなければならなく、こういった横串のことを実現しようとすると調整コストが高くなりすぎて、うまくいかない場合が多いのだと説明した。

そこで、それぞれの担当者に対して、評価や優先順位を「役割」という形で配分することで、自律的に動こうとしているという。

林氏自身は、「プロダクトオーナー」という、全体の優先順位を決める役割だけになっているのだ。それも、「次の(短い期間での)」仮説を実現するまでの責任であって、長期的にすごいものができる責任を負わないようにしていると言う点も興味深かった。

短い期間で動くものを作り、内部はもちろんのこと、投資家にも具体的なモノを見せていくことで、組織の内外に、実感と安心感が生まれるのだ。

LOVOTのような、家庭生活の仲間として位置づけられるようなロボットが登場すると、これからの子供がロボットを作りたい、ロボット産業に関わりたいと思うのではないかと林氏は予想する。現在、手近なテクノロジーで子供達が楽しむYoutuberのコンテンツがあるが、これを見た子供がYoutuberになりたいと思うようにだ。

これをきっかけにして、新しいロボット産業が生まれて欲しいとも言う。

さらに、肝心のロボットの購入意向に関して、Pepperの時は触りもしないで買う人が多かったが、LOVOTは触ってから買う人が多いのだという。「実際に触ってみると感動して購入する人が出てくる」ということなので、LOVOTのような考え方のロボットは、新しいロボットのあり方として今後定着していくのかもしれない。

参考:LOVOT

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