建築設計と施工をつなぐ施工図は、建築物全体における顧客要求・品質・コスト・工期面での実現性担保において重要な図面であり、早期での施工検討の精度向上は生産性に直結する。
ところが、設計内での整合や施工図検討時の施工検討項目との整合は複雑で手戻りが発生しやすく、熟練技術者同士の暗黙知やノウハウによる擦り合わせにならざるを得ない状況である。そのうえ、設計図から施工図への非効率な転記や、施工図作成時の記入漏れ、複数図面に対する重複した修正作業なども非効率を増長させている。
その対策として、一般的な設計段階の設計BIMから出力した2D図面を施工図として活用しようとしても、詳細な施工要件を付与・修正しながら仕上げていく必要があり、変更の都度、BIMと施工図を同期更新することはかえって非効率を増長させることにつながる。その結果、建設業界では着工後に施工検討項目を精査・整合し、施工図を作成することが一般的であり、現場の手戻りや調整の増加など、生産性を低下させる原因となっていた。
西松建設株式会社は、BIMから「西松生産設計BIMシステム」を構築した。
同システムは、熟練技術者の暗黙知を判定式やロジックに形式知化し、BIMシステムに落とし込むことで、設計と施工の連動性が強化され、精度の高い施工図作成や効率化を可能にした。熟練技術者の暗黙知やノウハウを形式知化されたチェックリストやBIMのアドインツールとして活用することで、経験値に依らない業務レベルの平準化や若手の技術力向上が可能となる。
また、施工検討項目の90%を設計段階へフロントローディングして決定する業務プロセスに沿って、施工図レベルの情報を集約したBIMを活用し熟成することで、建築設計と同時に施工成立性を考慮した精度の高いBIMを早期に構築できるほか、BIM上での設計~施工検討の情報連携や半自動図面化ツールによる、加筆修正を最少にした施工図の出図が可能になった。
さらに、着工前の早期段階で顧客要求の実現性や施工の成立性を見極めることで、着工後の調整や手戻りを削減する効果も期待できる。なお、これまでに同システムを西松建設施工の物流施設5プロジェクトで実践適用し実証しているとのこと。
今後西松建設は、2024年度からすべての物流施設プロジェクトに同システムを適用するだけでなく、集合住宅プロジェクトなど他建物用途へも適用範囲を拡大する予定としている。また、2027年までに設計BIMと連動した生産設計BIMを、生産設計・工事計画・施工領域まで一気通貫で活用しながら横断的な変革を推進し、2030年までに施工図を不要とする生産設計BIMの構築を目指している。
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