「UNISONet」の3つの特徴
大原: 私たちはこの技術を、「UNISONet」という新しい通信規格として提供しています。特徴は主に3つあります。
1つ目の特徴は、省電力と高速通信の両立です。
いまのIoTでは、「アプリケーションにあわせて通信規格を選ぶ」ことが普通です。たとえば、LoRaだったら少量のデータを長距離送るのに適していますし、Bluetoothは近距離の通信に適しています。
一方、UNISONetの場合は、そうした用途にかかわらず、幅広いアプリケーションに使えます。使ったら使った分だけ電力を消費して、しかもそれなりに通信スピードが出せます(最大速度:16 kbps)。省電力モードで待機して、時々データを送るくらいの用途であれば、電池で10年もちます。
2つ目は、双方向の通信です。各地に設置したセンターから、ゲートウェイにデータを集めてくるということは、みなさんもう取り組まれていることです。ただ、それは「上り通信」の用途であって、「下り通信」はどんな無線機でも大変です。
ただ、UNISONetだと、さきほどの転送の起点(ノード1)をどこにするかということだけ設定すれば、上下の区別はないのです。さらにとても低遅延で、「上り」に対して1秒程度の遅延で、「下り」も可能です。
3つ目は時刻同期です。各地に置いたセンサーの時刻をマイクロ秒レベルで一致させ、データを集めてくることが可能です。
以上がUNISONetの3つの特徴になります。さきほど鈴木が申し上げたように、このコア技術は2011年に論文で発表されましたが、そこに鈴木はすぐ目を付けて、継続して研究を続けてきました。今のところ、この技術を最新の無線チップに実装して安定的にサービス提供できているのは、世界でも私たちだけです。
小泉: 通信帯域はどうですか。
大原: 今、商用化できているのが2.4GHz帯の無線です。金属などの遮蔽物が立ち並ぶ橋梁などであっても、センサーをそれぞれ50~100 mごとに置いていただければ、安心して広域での通信が利用できます。
そして、今開発中なのがサブギガ帯(920MHz)です。年度内には提供できると思います。サブギガ帯で同時送信型のマルチホップというのは前例がないと思います。
小泉: IoT向けの通信規格はこれまでも色々出てきていますが、実環境で試してみると使えないということも多いです。
たとえば、街の中はあとから建物がどんどん立っていくので、センサーを設置したときに見通しがよくても、1年経った後に(電波が遮蔽されて)つながらないみたいなことが起こります。
鈴木: ありますね。以前にトマト農場で温湿度センサーを設置したのですが、葉が繁ったり、トマトがたくさん実ったりすると、つながらなくなるんですよ(笑)。
そういう意味では、同時送信型フラッディングによるマルチホップでは、すべての経路をセンサー(中継機)が勝手に使ってくれるので、安定して通信できるというメリットがあります。
小泉: なるほど。
無料メルマガ会員に登録しませんか?
技術・科学系ライター。修士(応用化学)。石油メーカー勤務を経て、2017年よりライターとして活動。科学雑誌などにも寄稿している。