下水処理の過程では、ごみや砂、汚れなどを沈殿させ、下水をタンクに送り込み、微生物の力を借りて汚れを分解する。微生物を活発に働かせるためには、常に水中に酸素を送り込まなければならず、そのプロセスには約75kWhと多大な電力が必要になる。年間の電力費は約1,100億円に相当し、電力消費量の低減による省エネとコスト削減が急務となっている。
現状、一部の下水処理場にマイクロ水力発電装置が設置されているが、「水車効率が低く出力が小さい」「水力発電装置の機器コスト及び設置コストが高い」「機器重量が大きく、現場担当者の負担が大きい」「錆やすい環境で現行のマイクロ水力発電装置での使用は難しい」といった課題がある。
株式会社リコーは、国土交通省が主導する下水道応用研究において、下水道施設における創エネルギー化技術の検討を実施し、2023年3月に完了報告を行ったことを発表した。リコーの新規事業創出の取り組み「TRIBUS」に採択された社内スタートアップである「WEeeT-CAM」、シーベル株式会社、金沢工業大学機械工学科 山部昌・瀬戸雅宏研究室の産学連携により、3Dプリンター製のマイクロ水力発電装置を開発し、下水処理場での活用を検討した。
また、リコーの3Dプリンターテクノロジーを用いてバイオマス(※)由来の材料を使用した3Dプリンター製の羽根を組み込んでいる。一般的に使用されている3Dプリンター材料で作成した場合と比較し、水車羽根の強度は金属製に匹敵する2倍以上を実現した。水中に長期間つけても強度が維持され、従来のマイクロ水力発電にも使用できることが分かった。
今回の検討の結果、数kWの発電に成功し、従来の金属製マイクロ水力発電装置と比較して重量は水車部分25%、装置部分15%の軽量化を実現、水車の作成期間は約1か月から3日の短縮に成功した。
※ バイオマス:化石資源を除く、再生可能な生物由来の有機性資源。
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