昨今、IoTを軸に人材の流動性が求められている中、株式会社ウフルには各界で活躍する人材が次々とジョインしている。
また、IoTが加速していく中で、現在は、クラウドをつなぐだけにとどまらないenebularのポジショニングチェンジも進んでいるという。
今回、プロダクト開発部 デバイスプラットフォーム開発部部長 兼 ソリューション開発部部長 竹之下 航洋氏と、2017年4月に入社したばかりの、同社 プロダクト開発本部 デバイスプラットフォーム開発部 勝 純一氏に話を伺った。
竹之下氏は、「IoTエンジニア養成読本 (Software Design plus)」の著者でもあり、勝氏は、Embed関連の技術を広めるイベント、「Embed祭り」や、著作「mbed電子工作レシピ(翔泳社)」「超お手軽マイコンmbed入門: みんなで簡単ガジェット作り (マイコンと電子工作)(CQ出版) 」「はじめてのmbed電子工作(工学社)」などもある、多くの人に技術情報を広める活動も精力的に行っている二人だ。
<目次>
技術チームのエバンジェリスト
新しいenebular は、クラウド・ゲートウェイ・マイコン、全てのレイヤーを押さえる
ARMに張っていく
データを無意味化する秘密分散技術をIoTにも活用
mbedに少しでも興味があれば、どんどん触ってほしい
ウフルの求人情報:IoTの「次の時代」を創るプロダクト開発メンバー募集!
技術チームのエバンジェリスト
-竹之下さんは、技術チームのエバンジェリストとしてウフル社に入って1年ほどだと思いますが、これまでやってこられたことを教えてください。
竹之下氏(以下、竹之下): 私はIoTイノベーションセンター所属で入社し、様々な講演やエバンジェリング活動をやっていたのですが、実は具体的な案件のアドバイザリーやコンサルティングもやっています。
例えば、個別案件のハードウェアが絡むIoT案件のハードウェアの選定や、ファームウェアを開発できるパートナー企業との橋渡しも担当していました。
ハード側が分かる人間は希少で、自社である程度ハードのことが分かる人間がいないと、IoTの案件がなかなか前に進んでいかないということが、PoCを通じて具体的に再確認できたのがここ1年の状況です。
-ウフル社のIoTはどういう組織構造なのでしょうか?
竹之下: プロダクト開発本部に3つの部署があり、テクニカルロックスターズ、デバイスプラットフォーム開発部、ソリューション開発部があります。
テクニカルロックスターズが、もともとMilkcocoaなどを作ったチームで、今まで弊社サービスのenebularとして表に出ているものはほとんど彼らが開発しています。
それらはある種のプラットフォーム製品で、そのままエンドユーザーに使ってくださいというものではなく、開発者向けのプロダクトです。そこで、enebularを使った特定のドメイン、例えばIoTオフィスや、enebularとLoRaWANを使ったソリューション、行政向けの見守りのサービスなどに仕立て上げていくことを担っているのがソリューション開発部です。
-御社は他にもコンサルティング部隊がありますが、そことも連携するのでしょうか?
竹之下: そうですね。個別の案件は、例えば営業が持ってくる場合もありますし、ビジネスコンサルティング部が先に入って、お客様との共同ビジネスの立てつけをしてから実際にインテグレーションするデータインテグレーションチームが加わる場合もあります。
ただ、どちらかというと今は、プロダクト開発本部は自社製品を作る方に注力しようとしているというのが、今のウフルのステージなのです。その流れで、enebularのポジションチェンジについてお話します。
enebularのポジションチェンジ -エッジとクラウドをつなぐIoTオーケストレーションサービス
竹之下: 単純に言うと、今までenebularというのは、Node-RED(ノードレッド)のラッパーみたいな感じに見えていると思います。
これまでenebularは、「フローを作って、様々なクラウドサービスをつなげられます」とご説明していましたがenebularの価値は、実はそこじゃないのではないか?という話が出てきました。
そこで今は、「enebularはエッジとクラウドをつなぐIoTオーケストレーションサービス」にポジショニングを変えようとしています。その中のロジックやデータフローを処理するのがNode-REDであって、それはあくまでenebularの中の一部、という話です。
今、Node-REDで作成したフローを、enebularのデプロイ(配信)機能を使ってIoTゲートウェイに送り込むことができるのです。それはAWSのEC2やHeroku、Azureなどにデプロイできるフローと全く同じものがデプロイできます。
まさにそうです。弊社の八子がよく「コンピューティングの波は、最初はサーバー側にあり、PCの時代にはエッジ側によってきて、次はクラウド側に上がってという繰り返しだった。次は再びエッジか?」という話をしていますが、まさにそのエッジ側への流れが来ている、ということを捉えようとしています。
-片方でエッジ側にプログラムを組み込むことは、電池の消費電力の問題や、通信の問題、コンピューターパワーの問題などもあると思います。それをうまく解決していく方法が見えてきたということなのでしょうか?
竹之下: それができるようにスペシャリストを集めています。元々、ハードを設計できる人間や、ファームウェアを開発していた人間は、組み込み系でどういうことをしなければいけないかというのを知っているわけです。そういう人間がいないと、適切なエッジ側の開発はできないと思います。
-ひとつの会社でそこまで集まっている人たちがいないことが多いですよね。そこで開発されるデバイス、というよりはモジュールに近いものだと思うのですが、量産は検討していますか?
竹之下: おそらく、ウフル自身がデバイスの量産をすることはありません。緊密なパートナーが何社かいるので、そこでモノを作ってもらっています。あくまで、我々が提供するのはファームウェアのプラットフォームです。
新しいenebular は、クラウド・ゲートウェイ・マイコン、全てのレイヤーを押さえる
-デバイス側のIoTプラットフォームでそれに近しいことをやろうとする、要はデバイスコントローラーにもう少しOSに近い要素が入っているサービスは世の中にいくつかありますが、強豪たちがひしめく中で、今後はどうしていこうと考えられているのでしょうか。
竹之下: まさにそれがオーケストレーションでして、デバイスとクラウド上でのデータ処理を、両方同じ作り方で作れるというところに一番大きなポジショニングを持とうとしています。
例えばAIに強みを持っている電機メーカーが、クラウド側でAIを処理するユースケースは当然あるのですが、実はエッジ側でAI処理をするユースケースもあるよね、というのは気付いています。ただし、それをどうやってデバイス側に組み込んだらいいのか分からないと言います。
そのような背景の中、enebularでクラウド側とエッジ側を両方同じ作り方で作れるのだったら、彼らが抱えているSI部隊でも組み込みができるのではないか?ということで、我々と一緒にやりましょう、という話は出ています。
-エッジ側でAIを活用したいという事例がもう出ているということですね。エッジはエッジで特別な技術が必要と言われても困ってしまうから、enebularだと楽だよね、ということですね?
竹之下: そうです。例えば、いわゆるファームウェアと呼ばれているデバイス側のデバイスドライバや、プロトコルスタックなどは絶対止まってはいけないので、そこはenebularとは関係ないレイヤーで作りこみます。一方で、例えばカメラから取ってきたデータをエッジ側にあるAIに流して、処理結果をクラウドにアップロードするというところは、細かくチューニングしなきゃいけないはずなのです。そういうところはenebularで処理を動的に変更できるようにしましょう、というのがIoTオーケストレーションということです。
AWS IoTは最近、接続されたデバイスでローカルのコンピューティング、メッセージング、およびデータキャッシュを安全に実行できるようにするソフトウェアGreengrass(グリーングラス)を始めて、ゲートウェイまで手を出そうとしていますが、あくまでゲートウェイ側までなのです。
クラウド・ゲートウェイ・マイコン、この3レイヤー全部押さえる企業はありませんので、ウフルはそこを押さえようとしているところです。
-なかなか会社のケイパビリティでは難しいというのもひとつあるのですが、マーケットが固まってないからそこまで手が出せない、要はそこまで踏み込むのがちょっと怖いところがありますよね?
竹之下: そうですね。多分あまり手を出せないところだと思います。
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これまでクラウドインテグレーターとしての成長を続けてきたウフル。
IoTへの取り組みの本格化にあたり、企業のご支援はもちろん、あわせて自社プロダクト・デバイスの開発にも取り組みます。そこで現在全社をあげて注力している自社プロダクトを開発するチームを一緒に作りあげていくみなさんをお待ちしています。一から何でも自由にできる、作り上げていける。 そんな環境で、プロダクト開発にチャレンジしてみませんか?
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ARMに張っていく
-まだこの時点だと「本当にくるのかい?」と、投資する側から見ると若干疑心暗鬼なところがあると思います。技術思考やビジネス思考な人たちが、「きっとそっちに行く」というのは見えていますが、投資家はこの道何年の人ではないことが多いのです。
そうすると、なかなか人集めようという話にならないというのと、門外漢だと例えばエッジデバイス作るのに100人いるのか1000人いるのか分からないじゃないですか?あるいはどこかの会社買収する?という話になります。
竹之下: 投資話ですと、ARMに対して張ると言っている人がいるので、これの波に乗りましょうという話ですよね。
どこに乗るかというのが一番重要だと思います。デバイス側がこれまでなぜ統一化されなかったかというと、デバイスってあまりにも多種多様すぎて、ひとつのプラットフォームでまとめるということができなかったのです。そこを今ARMはチップのアーキテクチャーを提供していますけど、その1個上の中間レイヤーとして、彼らはmbed(エンベット)というプラットフォームを提供しています。
最近Cortex-Mを乗せているようなマイコンが出るときには、例えばテキサス・インスツルメンツやNXPなども、必ずmbed対応をしてから出しています。
そうするとデバイス側はOSのレイヤーではプラットフォーム化されて統一されるので、その上にenebularを乗せるのはありではないか?というのが我々の発想です。
-ちょっと嫌なことを言うと、ARMのチップの制限には引っ張られてしまいますよね?
竹之下: 最初はそうですね。それである程度マジョリティを取ったら、特殊チップにも対応していくかもしれませんが、最初はある程度のボリュームを出さないといけないので、ARMに張っていこうと思っています。
-イメージとしては、例えば高速に動く産業機器でも使える話をしているわけではなく、インターネット通信に耐えうるくらいの速度感のデバイス制御をするようなコントローラーの話をされているということですよね?
竹之下: そうですね。リアルタイム制御など、ミッションクリティカルではないところです。
-ファナックなどのロボットアームを動かそうとしているわけじゃないということですよね?
竹之下: そうです。例えば、アクチュエイトやディサイドは、リアルタイム制御しなきゃいけない部分なのでenebularが対応するとこではありません。センシングなど、AIなどで判断をした結果、なにがしかのフィードバックをかけるところは対応できると思います。
-自動運転の話ではなく、コネクテッドカーのことですよね?
竹之下: そうです。車載という切り口であっても、「本当に止まっちゃいけない、ひとつもミスしちゃいけない、バグが1個でもあっちゃいけない」場所は領域外ですが、それ以外の部分も車載の中にあります。
-ありますね。電気自動車の世の中になってくると、以前よりも簡単に車が作れると前々から言われています。まあ、簡単には作れないと思うのですが(笑)。その中でコネクテッド部分をどうやって担保しているかという点に関しては、車側にもオペレーションシステム的なところがもっと入ってきているという流れがあると思うのですが、そういう流れの一環として、こういうものが使えるということですよね?今回のARMを制御する、デバイス側のenebularということですよね?
竹之下: そうですね。コネクテッドという観点でいくと、いわゆる最近注目されている通信規格のLPWA(Low Power Wide Area)は、すごく制約された通信として期待されているのですが、それにも対応できます。帯域が制限されたところでもプログラムのアップデートができるような機能をenebularは持っています。そうすることでエッジ側での対応がやりやすくなるのです。
-LPWAは、上りばかりなのではないでしょうか?
竹之下: 一応下りもできます。
-LPWA通信の中で、クラウド側からデバイス側にデータ送ることも可能なのでしょうか?
竹之下: 数十byteと非常に制限されていますが、データを送信したら、一定の時間だけ受信待ちにして、その間にデータが来たら受信するこというとができます。
-M2Bコミュニケーションズ社がACK返せます、と言っているやつだと思いますが、それでデータを送るのですか?
竹之下: そうです。それくらいでもアップデートできるような仕掛けを、今enebularに作りこんでいます。
-おっしやっているニュアンスは分かるのですが、20数年前に戻っているような。
竹之下: まさにまさに、そうなのですよ(笑)9600bps以下の世界にまた戻ったみたいです。
-もうそんな、そんな昔のことを引っぱり出してきたら、楽しくて仕方ないですよね。我々みたいオヤジしかできない(笑)
竹之下: 隣に座っている勝さんはまさに、そういう非常に制限された世界でも組み込みを開発されてきた方です。
勝氏(以下、勝): 前職はそうです。
-制限された中で作るというのは、どんな感じだったのでしょうか?
勝: 自由な空間だと何でもできてしまいますが、通信速度が遅い、帯域が狭いという制限がある中で、いかに効率よくやり取りするかを設計していくのは、面白いです。
-プロトコルから作っているのでしょうか。
勝: そうです。前職は本当そういう所からデータをビット単位で圧縮して、設計もビット単位で全部詰めこんでいました。設計するのは面白いですが、コーディングするのはあまり面白くありません(笑)
-昔はプログラマーもbyte単位をきちんと見ながら型宣言しろ、と言われていたのが、今や型宣言しなくてもいいという時代に突入していて、資源の無駄遣いと言われます(笑)
竹之下: まさにenebularが目指している世界はそこなのですよね。その型宣言しなくてもいいくらいゆるふわに作れる、でもそのエッジ側のマイコンでもちゃんと動くものを作りたいのです。
-具体的には、プログラムをするとデバイス側のenebularに合うように変換するような機構があるということでしょうか。
竹之下: 変換というか、ランタイムがマイコン側にあり、それがenebularのフローの定義をロードするイメージです。エージェント側がしっかり作られていれば、フローに何かミスがあっても、そのフローが止まるだけで済むのでシステム全体が止まることはありません。
-シーケンサーのようにデータフローを設計して、プログラムというよりは、設計していけばどういうふうに動くかなど制御できるということでしょうか?組み込み機械の中に入っていくプログラムを、少し外出しするようなイメージですか。
竹之下: そうですね。ユーザーインターフェース等、外部とのデータのやり取りをするところをやって、モーター制御などはまた別のところでやるという作り方になると思います。
-いわゆる組み込み側が動かす領域より一概念上で、組み込みを動かすということですね?なるほど、面白そうじゃないですか。勝さんはウフルに入って、これからやっていきたいことはありますか?
勝: 昨日入社したばかりですが、どんどん詰め込まれてちょっと今溢れそうになっていますが(笑)、どんどん吸収して、そこからでき上がるものを作っていきたいなと思っています。
竹之下:勝さんには、コミュニティ面も期待しています。もともと私も組み込み系ですが、組み込み系の人がIoTに上がっていくと結構しんどかったりします。逆にクラウド系の人たちが組み込みまで下りてくるのもしんどいと思うので、そこを何か橋渡しすることをウフルでやれれば面白いかなと思います。
-IoTの理想形ですが、確かにそこは問題です。昔からM2Mとしてやっている産業向けのPC制御をやっている人たちが、一生懸命クラウドに持ち上がっていって、どうにかしようという動きはあります。
ただそれだとクラウドのパワーを使えないし、どうしても過去の経験やデバイス側に引っ張られてしまって、組み込みで動かせないという気持ちがどこかにありますよね?日本は特に特殊な組み込みがすごく多いから、バリエーションを全部準備することはできない、という話になります。
竹之下: よく言われます。
-だから始める前から諦めてしまうムードがあるのかなと思っていて、今、ゲートウェイをインテリジェントにしようという動きが世界的にあります。いくらフォグをインテリジェントにしても、結局末端のデバイスのところがインテリジェントにならないと、できることがあまり変わらないと思います。
竹之下: そうです、限られてしまいます。
-デバイスもインテリジェントな方向にいかなきゃいけないと思いつつも、日本企業が作ったチップに一生懸命対応してもマーケットが小さいという話がある中で、ARMがソフトバンクに資本入れてもらうことで、我々にとってすごく身近な会社になりました。御社はそこに乗って、OSの一層上あたりで、様々なアプリケーションレイヤーになるのでしょうか。
竹之下: 今までの組み込みはファームウェアと言って、ひとつの塊だったのです。例えばファームウェアのところに、アプリケーションレイヤーという概念が新しく生まれるのだと思うのです。
-だからある意味Raspberry Piなどには感謝ですよね。Raspberry Piがあるおかげで、デバイスにもOSがあっていいのではないかと思います。
竹之下: Raspberry PiやArduinoなどがあることによって、世界は広がったというのはあります。
勝: 簡単に手を出せるものがあると、ある程度イメージが付きやすいですね。組み込みがなんだかよく分かんないみたいな状況は、ちょっと脱してきているかなと思います。
-組み込み側がリッチになってくると、クラウド側の方にはちょっとしたマシンラーニングが入ると嬉しいと思います。例えば、玄関先で自作したインターネットカメラで管理するということをやる人たちが出てきそうで、面白いですね。
竹之下: enebularはまさにその話が進んでいて、いくつか特殊ノードみたいなものがあります。それはAIの機能を入れたノードや、セキュリティーをエンハンスするノードなどが入ってきています。
人材募集しています!
これまでクラウドインテグレーターとしての成長を続けてきたウフル。
IoTへの取り組みの本格化にあたり、企業のご支援はもちろん、あわせて自社プロダクト・デバイスの開発にも取り組みます。そこで現在全社をあげて注力している自社プロダクトを開発するチームを一緒に作りあげていくみなさんをお待ちしています。一から何でも自由にできる、作り上げていける。 そんな環境で、プロダクト開発にチャレンジしてみませんか?
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データを無意味化する秘密分散技術をIoTにも活用
-ZenmuTech(ゼンムテック)社と協業されたそうですね。
竹之下: はい。ZenmuTech社は、データの無意味化で情報漏洩リスクをゼロにするインフラストラクチャを提供する企業です。そのZenmuTech社が持っている、秘密分散という技術があります。
それは、ひとつのデータの塊を複数に分割するのですが、分割するときにランダムなビットで分割します。そうすると分割した後のデータを見ても、全く何だか分かりません。つまり、無意味なデータになっています。その技術で情報漏洩を防ぎましょう、ということです。
我々はその技術をIoTに使おうとしています。enebularのデータフローのノードで表現できるので、まずはそれをenebularの有償ノードして作ろうとしています。
-具体的にはどういうことでしょうか?例えばデバイスから上がってくるデータそのものは分割されず、ただデータが上がってくるだけですよね?
竹之下: そうです。エッジ側で分割します。
-なるほど。エッジ側で分割して、データの一部をエッジに残す、と。そうしたらクラウドだけ見ても分からないということですね。
竹之下: そうです。分割すると言っても1対1ではなく、1000対1などの割合で分割しています。そうするとクラウドにアップロードするのは、1000分の1だけで済みます。
例えば、工場の全数検査で「出荷するすべての製品の画像を撮影しておいて、出荷後に何か問題があったらロールバックして、問題があったロットだけ画像の確認したい」、というニーズがあります。
それは、何か問題起きない限り普段は全然見ないので、クラウドに上げる意味がありません。クラウドに上げるには通信費もかかるし、クラウドで保存したらクラウドのストレージ量もかかるので、コストになります。
そうすると、ローカルに残しておきたいということになります。しかし、ローカルに残しておくと、盗み見られたり、情報漏洩したりする可能性があります。だからそれを1000対1に分割して、1だけクラウドに上げておくことで、無意味なデータにします。問題があったときに、問題があったところだけ結合して見る、という話です。
-しかも脆弱な通信環境でもデータが少ない、ということですね。
竹之下: そうです。あとは、監視カメラも同じような文脈です。大量に監視カメラをばらまきたいと思っても、監視カメラの画像データを全部クラウドにアップロードをすると、ものすごいデータ量になってしまいます。
しかしデータというのは貯めないと意味がないので、それだったらもうひたすら撮った画像をローカルに保存しておきましょう、という話もあります。例えば、自動ドアに監視カメラを仕掛け、不信な行動をした人のデータだけをクラウドに上げるユースケースなどを考えています。
そうすると、運用コストが全然かからないので、いいとこ取りの運用ができるようになります。例えば監視カメラの中や、NASの前に入るゲートウェイにenebularのエッジを入れるなど、データの処理部分にenebularを埋めようとしています。
mbedに少しでも興味があれば、どんどん触ってほしい
-勝さん、mbedをやっている人たちにメッセージをいただきたいです。
勝: mbedに関するプレゼンや交流を楽しむ為のイベントである「mbed祭り」は、私個人でやっていますが、オフィシャルにも手伝ってもらったり、関連するベンダーにも手伝ったりしてもらっているので、どんどん運営側の枠も増えています。
今までは、組み込みなどボード系技術者の参加が多かったのですが、ウェブ系の方もどんどん参加してくれるようになってきていて、毎回半数くらいは初参加の人が入ってきてくれています。オフィシャル感が漂っているのですが、ユーザーによるイベントだということを強調したいところです。
-いいですね。これからmbedをやってみたい人たちへのメッセージはありますか?
勝: 初心者枠というのがあるので、ぜひ参加していただきたいです。初心者枠は貸し出しもしているので、ファーストタッチが体験できます。そこで触って次のプレゼンターになるパターンもあります。
mbebオフィシャルにもコミュニティコーナーがあるので、そこなども活用してもらって、情報交換してやっていくという流れを作れているかなと思います。
-みんながRaspberry PiなのかArduinoなのかと話しているときに、ARMって選択肢はなかなかですよね(笑)
勝: なかなかそこは難しいところですが、違いを示して、やる内容によっては選ばない選択肢ももちろんあると思います。
-ARMのチップは個人で買えるのでしょうか?
勝: 買えますが、普通のハンダじゃつけられないようなチップを買っても仕方がないので。あれをボードで使えるというのは強みですし、ベンダーもやっぱりそういうmbedに対応したという体で出すパターンがどんどん増えています。
-趣味でいじるならRaspberry Piもいいけど、スタートアップなどでも量産に向けて事業にしていきたい人たちは、mbedという選択肢もあるということでしょうか。
勝: そうですね。mbedで作ったものはプロの開発でもアウトプットできますので、そのまま引き続き、将来的に製品向けに作るプロトタイプという流れは、他のプラットフォームよりもすごくスムーズにできます。
-本日はありがとうございました。
ウフルの求人情報:IoTの「次の時代」を創るプロダクト開発メンバー募集!
ウフルについて
ウフルの創業は今から11年前。当時活用がようやく本格化したクラウドの提案、開発にいち早く取り組み、多くの実績を積んできました。現在は、クラウド/デジタルマーケティング/IoTを三つの柱として、企業のIT活用の”これから”を提案し続けています。
特にここ数年はIoTに力を入れており、2016年4月に満を持してIoTイノベーションセンターを設立。まだまだ本格的に立ち上がっていないIoT市場への啓蒙活動から、先端的な取り組みをしているお客様への支援(コンサルティング)、商用の開発まで幅広く取り組んでいます。
また、今後はSIやコンサルティングだけでなく、自社プロダクトも強化していきたいと考えており、enebular(エネブラー)、Milkcocoaなど自社プロダクトの開発も積極的に行っています。
ウフルはスワヒリ語で「自由」という意味。
「テクノロジーと自由な発想で未来を創る」を経営理念に、進化著しいITテクノロジーで世の中を豊かに自由にするため、様々な取組をしてきました。IoT、デジタルマーケティング、クラウド。ITテクノロジーは間違いなく世の中を変えていく。そこにウフルは積極的に関わっていきたいのです。
募集概要
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一から何でも自由にできる、作り上げていける。 そんな環境で、プロダクト開発にチャレンジしてみませんか?
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エッジデバイス(ARMマイコン用)エージェントプログラムの開発
・開発プロダクトの品質管理担当者
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