日亜化学工業株式会社は、光半導体および化学品メーカだ。同社の生産現場では、製品のほか、自動化設備やシステムも内製化されている。
設備や人の管理を担うバックオフィス部門においても同様で、自社製システムは多く利用されていたが、業務の自動化まで達成している例は相対的に少ない状況であった。
こうした中、日亜化学工業は、オープン株式会社が提供するRPAツール「BizRobo!」を活用し、約400体のソフトウェアロボットを稼働させ、年間3万3,000時間相当の人的リソースを創出したと発表した。
まず、日亜化学工業は、2019年にクラウド型RPA「BizRobo! DX Cloud」を導入し、その後の利用規模拡大に伴い、2022年からは開発・実行環境をオンプレミスで構築する「BizRobo! Basic」への移行を行った。
日亜化学工業では共通のロボットを多用途で用いる例などもあるため、正確な実数は算出していないものの、現在数十業務で約400体のソフトウェアロボットが稼働している。
このうち、製造設備の定期点検に関する実績・予定リストを作業担当者にメール配信するロボットは、管理担当者の勤務時間外を含めた日次での自動配信を実現したことにより、作業側の時間確保を容易にした。
また、製造指図書や掲示物の定期見直し期限を作成者・管理者に通知するロボットは、残日数による絞り込みから宛先の特定、メール送信までの手作業を自動化している。
さらに製品・製造プロセスの設計時に潜在的リスクを記録する「FMEA(故障モード影響解析)文書」では、使用済みIDとの重複チェックや、重複がない場合のマスタへの転記、重複した場合の修正依頼メール送信を自動化し、実行ボタンを押すことで一連の処理が完結するようになった。
導入後1年で、「BizRobo!」のリソース創出効果が人件費換算でライセンス費用を上回り、日亜化学工業では現在、年間3万3,000時間の手作業に相当する作業をRPAが担っている。
日亜化学工業は、この結果に対し、開発と活用推進を担うシステム開発本部の中でも、社内各所に「顔が広い」業務部門経験者が現場に打診し、総数の多い作業からロボット化する戦略が功を奏したとしている。
なお、FMEA文書の登録関連だけでも月100時間相当の手作業を解消しているとのことだ。
日亜化学工業では、「BizRobo!」導入から5年を経て、既存の手作業をそのまま置き換える工程がおおむね一巡し、業務フローを刷新する一環としての応用に重点が移りつつあるという。
そのため、作業代替によるリソース創出効果に着目してきたRPAは、ノーコード開発ツールと社内システムの連携時に用いることができる標準ツールとして、役割を再定義する段階となっている。
実際の取り組みとしては、最盛期におよそ30人いたRPA現場開発者の新規育成をいったん停止し、システム開発本部の数名による実装を原則としながら、現場担当者を開発メンバーに迎える運用も適宜検討していく予定だ。
そして、専用システムの内製組織がある生産現場に対しても、一時的作業の受け皿などとしてRPAを提案し、活用範囲をさらに広げながらDXへの貢献を進める方針としている。
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