住宅ローン業務において、本来は自己居住用住宅の取得を目的とする融資であるにもかかわらず、投資用物件の購入に充てる行為や物件価格の水増し、収入資料の改ざんといった、審査を不正に通過しようとする不正利用への対策が重要だ。
しかし、こうした不正は単一の金融機関だけでは発生件数が限られるため、個別に分析を行うだけでは手口の全体像の把握や、初期兆候の検知が困難であるという課題を抱えていた。
こうした中、株式会社三菱総合研究所は、同社が運営する「住宅ローン・データ・コンソーシアム」において、加盟する地域銀行やネット銀行、信用保証会社と共同で、住宅ローン領域における不正検知を高度化する取り組みを2026年7月1日より開始した。
同取り組みは、個々の金融機関単独では蓄積が難しかった不正案件データを集約することで不正との関連性が高い特徴を抽出し、AIを活用した検知モデルによるリスクスコアの提示や手口の共有を通じて、業界全体での不正の抑止と早期発見を支援する不正対策共同化サービスだ。
業界横断の共同データベースを活用して高精度なAIによるリスク判定を行うことで、審査や事後点検にかかる人的・時間的コストを劇的に最適化し、金融機関のリスク管理体制を強化を目指す。
三菱総合研究所が一部の金融機関と2025年7月から実施した試行においては、不正との関連性が高い年齢層や資金使途といった具体的な案件属性を特定することに成功している。
この成果をもとに構築されたAI不正検知モデルは、算出されたリスクスコアの上位先に実際の不正実績の大半が集中するという高い精度を実証しており、不正確率の高い案件を事前に精度よく絞り込むなど、実務への極めて高い有効性が確認された。
今回の本格展開に伴い、不正データを提供したコンソーシアム加盟金融機関に対しては、不正動向の可視化や地域特性の分析レポート、案件ごとの不正リスクスコアの提示、最新の具体的な不正手口の共有、さらには不正利用に関与する業者情報などの注意喚起情報が提供される。
これにより、自行のデータだけでは捉えきれなかった巧妙な手口を把握し、他行の知見で自社の対策を相互に補完しながら、地域や業態を超えた強固な不正防止体制を構築することが可能となる。
三菱総合研究所は今後、同取り組みを通じて、参加金融機関のリスク管理業務の高度化を強力に支援していく方針だ。
今後の具体的なロードマップとして、住宅ローンの案件を受け付けた時点でリアルタイムに不正確率を判定する「不正検知APIサービス」の提供や、不正リスクが相対的に高いと判定された案件の精査業務そのものを効率化するサービスの開発を予定しているとのことだ。

