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IoTの聖地になるか!モノ作りのすべてが体験できる、DMM.make AKIBA

本格的なモノづくりの設備が整っている施設DMM.make AKIBA

DMMは先日、ハードウェアスタートアップ製品の販売/流通の最大化を担う新サービスDMM.make SELECTIONを新しくはじめた。DMMが持っている販路を利用者に紹介したり、大量生産に向けてのアドバイスにも乗ったりする。

すでにDMMはサンフランシスコ、ベルリン、インドなど5か国に施設を設けており、海外のAmazonでも販売することができるようにするという。まだ実際には稼働はしていないが、動き出すのはもうすぐとのこと。

今回、DMM.make AKIBAを見せていただいたあと、株式会社DMM.com .make事業部 テクニカルマネージャー 下池さんにお話を伺った。

10階 DMM.make AKIBA Studio

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10階の「DMM.make AKIBA Studio」は、造形設備や電子機器設備など14のルームから成り立っている。

 

入口

ガレージ風のつくりになっている入口。

入口には、実際に旋盤で削った真鍮のハンマーなどが展示してある。

入口すぐのちょっとした休憩スペースではコーヒーなどを飲むことができ、利用者が作ったものが置いてある。

見本品棚にはバネやスイッチの見本、ジャンク品などがある。

壁のインフォメーションはチョークで書くようにして、あえて雰囲気を出しているという。ハイテクなものと黒板のアナログ感が融合している。

WORKS ルーム

実際にここでモノを作ることができる。様々なドリルや機械があり天井が高く、工場のような雰囲気が漂う。

▼5軸CNC:3Dデータを取り込んで削っていくデジタル造形機 。普通はXYZの3軸だが、これは5軸という点が大きな特徴。様々な方向からドリルで削ることができるため、なめらかな曲面も表現できる。

▼3軸CNC(大型):大型の3軸のものだがドリルの可動部分が大きいため、あまり高さがあるものは作れない。

※CNCとは、コンピュータ数値制御のこと

▼レーザーカッター:木やアクリルの板をカットすることができる。

▼恒温槽:高温状態のこの試験機に製品を入れて、クルマのダッシュボードなど非常に高温になる場所で、製品が問題ないかなどの耐久テストができる。

▼梱包振動試験機:梱包したものに振動を与えて、配送中のトラックの揺れなどを疑似的に与え、崩れないか、ネジが緩まないかなどを試験することができる。

▼熱衝撃試験機:マイナスの温度とプラスの温度、急激な温度変化を、この試験機の中で瞬時に温度を入れ替えることができる。

▼シールドルーム:外の電波を遮断する部屋。まだ認可されていない電波を発するものを作った時に、この中で作業をする。

これだけの大型設備が整っているのは、なかなか他では見られないだろう。規模の大きさに圧倒された。

上記の試験機で総務省が定める技術基準適合のテストができるが、必ずも技術基準適合証明が受けられるというわけではないので、その点は注意が必要だ。現状、水没テストをできる試験機はないとのこと。

Design ルーム

CAD、CAMなどソフトが入ってるPCが設置されているため、ここで3Dデータを作ることができる。小さいサイズの3Dプリンタもある。

3Dスキャナも完備。

Painting ルーム

使用中のため見ることはできなかったが、中には塗装ブースがあり、エアブラシなどを使うことができる。乾燥炉もある。

Casting ルーム

量産用などのシリコン型を作ることができる。

Silk Screen ルーム

こちらも使用中だったが、シルクスクリーンプリントができる部屋だ。皆さんがお使いの機器のボタン名などの表示に使われている、こすっても取れない印刷が出来る。

Measurement ルーム

測定等を行える機材がある部屋。雷サージ発生器では、雷を落とした時と同じ電磁波を発生させることができる。サーモグラフィもあり、できあがったものが異常な温度になっていないか、バッテリーが爆発しないか、外観温度を測ることができる。

オシロスコープ

Circuit ルーム

回路設計を行う部屋。半田ごてなどがあり、基板に半田付けをして回路を組み立てたり、設計したりすることができる。

Sewing ルーム

Sewingルームでは、業務用、刺繍用ミシンなどがある。

UVプリンターはシルクスクリーンプリントだと出せない色をフルカラーで様々なものに色を簡単に落とし込める。

スマートフォンケースなどにも使え、写真ではみにくいが、色を塗り重ねて立体感がある。

PCBA(Printed Circuit Board Assembly)基板実装

基板を実際に実装する部屋。試作で作ったものを本番用の小さな基板にし、チップを乗せてはんだ付けをする流れで量産用の基板を作ることができる。生基板にクリーム状のはんだをぬって、チップマウンターで自動的にゼロコンマ数mmレベルのチップを基板にマウントすることが出来る。

ここで量産化したものでは株式会社Cerevoが発売したIoT開発モジュール「BlueNinja」などがあり、この部屋だけでも1億近くかかっているという。

インタビュー

株式会社DMM.com .make事業部 テクニカルマネージャー 下池さんに、DMM.make AKIBAの現状についてお話を伺った。

左:株式会社DMM.com .make事業部 テクニカルマネージャー 下池氏/右:株式会社 DMM.com ラボ 門野氏

 

-この設備はもともとどういうきっかけで作ろうと思われたのですか?

下池さん(以下、下池) 最初のきっかけとなったのは、割と一般の方にも身近だったと思うんですが、数年前に3Dプリンターが世界的に話題になった時に、弊社の代表やプロデューサーが「インターネットやパソコンがうまれた時と同じような感覚」を感じ、「どうなるかわからないけれど、きっと可能性がある分野だろう」ということでいち早く3Dプリントサービスを始めました。

3Dプリンターをきっかけに、モノづくりも試作のスピードなどもあがってきますし、Kickstarterというようなサービスもあり、世界中で自分たちが作りたいものを作ってる人がどんどん増えてきているというところから、、ハードウェア・スタートアップは向こう5年、日本産業の鍵となると思い、DMM.make AKIBAを立ち上げるきっかけになりました。


-先取り的なところからスタートしてるのですね。

そうですね、我々も今後どうなるかはわからないところは多々ありますが。

-注目されている施設だと思うのですが、「IoTきてるな!」という感覚はありますか?

はい、最近は海外や日本の大学などからもご見学いらっしゃる方が増えました。その方たちがDMM.make AKIBAを知ったきっかけというのが、国から教えてもらったそうなのですが、そういったところは我々としては新しく、国レベルで巻き込んでいる感があります。
-様々なコワーキングスペースがあると思いますが、ここは設備が桁違いだと思います。しかし、設備はどうしても古くなってしまうと思うんですが、そのライフサイクルについてはどう捉えていますか。

状況に応じて、新しいものの追加を都度検討します。3Dプリンターなど新しいものが登場すると早急に古いものは売却し追加するというスタンスを取っていこうと考えています。

実際に個人の方が使う際に、教えることについてはどうしていますか?

弊社のスタッフが全て機材の使い方だったり、知識だったり、ソフトウェア面もサポートする形でお客様に支援するという形でやっています。あとは機材の使い方のトレーニングやガイダンスも行っていますので、そこで使い方を学んでいただくこともできます。

内容によっては1週間かかるスクールのようなものも今後予定していますので、お客様の状況に応じてご予約、ご利用いただけます。基本的には会員様のみですが、ドロップイン会員(一時的な会員)の方も利用可能です。長期的となるとガイダンスを受けないといけないので、そういう方は月額で入られた方がお得な場合があります。

参考:DMM.make AKIBA

-今入居されている方は個人と企業はどちらの方が多いですか?

今現在ですとベンチャーの方や個人事業主という方が大半になります。

左前:株式会社DMM.com .make事業部 テクニカルマネージャー 下池氏/左奥:株式会社 DMM.com ラボ 門野氏/右:IoTNEWS 小泉耕二

-横の繋がりを期待されている方も多いと思いますが、実際いかがですか?

それがまさにこの12階です。オープンシェアジョインというのがこの施設のコンセプトとしてあり、自分たちが持っているノウハウ、繋がり、をシェアするという環境を目指しています。そこで繋がってまた新しいものを生み出す、化学反応を期待したスペースになります。

今後はスタッフも積極的に情報を持って提供できる形にしていこうと思っています。利用者から相談があったら、こういうところありますよ、と話せるようにしたいと思っていますので、シャイな方でもぜひいらしていただきたいです。

雰囲気もガレージっぽさをイメージし、ハンドメイドっぽい形でやっていて、10階にスタッフや会員の方が作った作品を展示していたりします。

-今後、ますます勢いが増していきそうですね。本日は、ありがとうございました。

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「世界的にみても、設計、開発、検証、生産までできる施設は唯一」と話す、下池さん。

特に、プロが使うような本格的な機会を実際に利用できる機会はそうそうないだろう。一方で、なかなかここまでの設備を使いこなせるスタートアップも少ないと思われる。

使いこなせないからといって、他人任せにやるのではなく、何かを行うには一通りの業務プロセスを知るということはとても意義深いことなので、ぜひ一度足を運んで、「こんなにいろんなことをやって製品化するのだ」ということを肌で感じて欲しい。

 

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