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IVI、5G動向など先進研究分科会の成果を報告 スマートファクトリーJapan2019レポート

IVI、5G動向など先進研究分科会の成果を報告 スマートファクトリーJapan2019レポート

先日の記事「製造業のあるべき姿、IVIによる業務シナリオ事例発表」に続き、スマートファクトリーJapan2019(6月5日~7日)内で開催された講演「インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブが目指す日本版ものづくり改革―「ゆるやかな標準」でつなげる第4次産業革命への挑戦―」の模様をお届けする。

業務シナリオ事例発表の後、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)の先進研究分科会より4つのテーマで活動報告が行われた。


「つながる工場」実現のためのKPI課題解決

1番目の報告は「経営と現場をつなぐKPI分科会」である。

分科会の狙いについて説明する東芝・杉山尚美氏

登壇した東芝の杉山尚美氏は、現場のKPI(key performance indicator=重要業績評価指標)
とKGI(Key Goal Indicator=経営目標達成指標)をつなぐことに対する現状の課題と、それに対処するための経営スタディの紹介を行った。

東芝・杉山氏は、部門ごとのKPI設定が局所的で全社共通の指標が築けないことや、現場のKPIとKGIの関連性が曖昧で、経営まで考えた現場KPIを設定できていないことなどを課題とした上で、オムロンの「ROIC経営」と、京セラの「アメーバ経営」を紹介した。

「ROIC経営」とは、投下資本利益率(=ROIC)を指標とした経営のことで、事業特性が異なる複数事業がある場合でも収益性を公平に評価できるというメリットがある。

今回の報告では「ROIC経営」を構成する逆ツリー展開に着目し、ROICを自動化率や設備回転率といった単位まで落とし込むことで、各現場のKPIを経営指標に直接つなげることことができるという利点が説明された。

「アメーバ経営」とは、組織をアメーバと呼ぶ小集団に分け、社員全員を自主的に経営に参加させるシステムのこと。アメーバごとに独立採算を持つが、収支決算は全社共通で時間当たり採算(総生産高-経費/働いた時間)で行うというものだ。

これにより局所的であった経営指標も全社共通で誰もが理解しやすいものになり、経営層と現場層をつなげることができる。

東芝・杉山氏は「IVIが目指すつながる工場、スマートなバリューチェーンにはKPIとKGIがつながることが不可欠だと考える。今後は企業経営におけるリスク、現場オペレーションにおけるリスクに対する評価や対策についても議論していきたい」と報告をまとめた。

次ページは、「ドイツの製造業界が進める5G導入

ドイツの製造業界が進める5G導入

続いて「5G先進活用研究分科会」より、産業における5G活用の動向について報告があった。

ハノーバーメッセでの5G動向について報告を行う日立産機システム・苗村万紀子氏

日立産機システムの苗村万紀子氏は、まず19年4月にドイツで行われたハノーバーメッセにおいて安全管理システムへの5G導入検討例や、5Gによる滑らかなロボット制御の活用例など、5G技術が盛り上がりを見せていることを紹介した。

日立産機システム・苗村氏によればドイツでは特に自動車会社が「5G ACIA」(ドイツ電機電子工業連盟が通信業界との議論の場として設けた団体)設立の音頭を取るなど、5G導入の中心となっているという。

ドイツでも労働力不足は製造業にとって重要な問題。人手不足を解消し、サスティナブルな社会(持続可能な社会、成長し続けることができる社会)を作り上げるためには、作業の自動化やロボット制御といった工場のスマート化は課題である。

そうしたスマート化を実現するための手段として、ドイツの製造業の中でも自動車産業が5Gを重要視しているのでは、と苗村氏は語った。

5Gには超高速(eMBB)、多数同時接続(mMTC)、超低遅延(URLLC)という3つの特徴がある。日立産機システム・苗村氏はこのうちの低遅延に着目し、Motion controlやMobile robotなどドイツで検討されている利用例を紹介した。

報告内では「5G ACIA」がウェブ上で公開している、スマートファクトリーにおける5G利用の想定シナリオについても解説があった。

このうち日立産機システム・苗村氏は、シーケンサー(PLC)の一部が基地局の中のアプリケーションとして実装されることを想定している点に着目。これについては自動車会社から見た場合、それぞれのコントローラーのソフトウェアをアップデートする手間が省けるなどのメリットを考えているのではないか、との意見を苗村氏は述べた。

さらに5Gの基地局について、企業・工場専用のプライベート基地局、ローカル基地局の登場も想定されていることも紹介された。

最後に日立産機システム・苗村氏は「産業用5Gは技術革新である同時に、ビジネススキーム革新。日本でもIVIやJEMAなどの団体を中心にビジネスモデルなどの議論を進むことを期待する」と総括した。

次ページは、「センサーデータ3つの先行事例

センサーデータ3つの先行事例

3番目は「センサーデータ活用技術研究分科会」より、センサーデータ技術の最前線について報告が行われた。

センサーデータにおけるユースケースの利活用について紹介する東芝・松岡康男氏

報告を担当した東芝の松岡康男氏は、センサーデータにおけるユースケースの利活用について3つの事例を紹介した。

1つは業務シナリオ事例においても発表があった、ミスズ工業による金属加工の予知保全・品質管理におけるセンサーデータ活用例。プレス加工時の打痕不良を取り除くために、正常パンチと欠損パンチでプレス時の振動の差異を見出し、欠損を検知するというものだ。

2つ目は車部品用の鋼材の鍛圧機械・切断機を扱うケイエステックにおいてエッジコンピュータを作成し、データを収集した事例。収集したデータについては、切断機の刃物寿命管理、遠隔診断サービスといった予知保全に活用する。

3つ目はボンディング装置を製造する新川の事例。取り付けられた200個のセンサーのうち、最も品質に関わる8つのセンサーからデータを収集し、ボンダー性能を司るVレール故障(フレーキング)の予兆管理を行うというものだ。

センサーデータ活用技術研究分科会では2019年度から2021年度にかけて、新エネルギー・産業技術総合開発機構と「Connected Industries推進のための協調領域データ共有・AIシステム開発推進事業」を進めていくという。

この事業は自動走行・モビリティサービス、ものづくり・ロボティクス、バイオ・素材、プラント・インフラ保安、スマートライフの5分野を中心に、業界横断型AIシステムの開発および業界共用データ基盤の開発を行い、AI・データエコシステムの事例を創出することを目的としている。

次ページは、「デジタル社会に必要な「オープン&クローズ戦略」

デジタル社会に必要な「オープン&クローズ戦略」

最後は「オープン&クローズ戦略研究分科会」の日立製作所・堀水修氏より報告があった。

オープン&クローズ戦略を進める上で3つのステップを説明する日立製作所・堀水修氏

「オープン&クローズ戦略」とは、自社のもつ独自技術をコアなものとそうでないものに分け、前者は秘匿化・占有化(クローズ)する一方で、後者については他社に公開(オープン)する戦略のこと。

これからのデジタル社会では、多くの企業が協業しながら産業全体を一体となって発展させていく「ビジネス・エコシステム」を設計する必要がある。「オープン&クローズ戦略」はその設計を進める上で、各企業にとって重要な戦略だといえる。

報告者の日立製作所・堀水修氏は、この「オープン&クローズ戦略」の概要を説明しながら、先行事例として中国におけるダイキンの例を挙げた。

ダイキンは2008年9月に中国で行われたインバータ機の足きり基準引き上げにより、中国でのインバータ機の売上高が落ちた。そこで中国企業の「格力電器」と共同で政府に働きかけを行い、自社の技術開発状況や見通しに関する情報を欧州委員会に提供しながら同社にとって有利なエコ政策形成を実現し、インバータ機の売り上げを回復させた。

4つの分科会からの報告が終わった後に、IVIの理事長である法政大学デザイン工学部教授・西岡靖之氏より締めの挨拶が行われた。

西岡理事長は「今回の講演でつながるがキーワードとして何度も出たように、複数の企業が手を取り合って業務シナリオを作り、実証・実装だけでなく運用まで達することが重要だ。」と述べて、今回の講演を締めくくった。

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