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日本の製造業を強くする、ファクトリービルダー・コンソーシアム「Team Cross FA」創立

2019年8月27日都内にてFAプロダクツとオフィス エフエイ・コムなどが、ファクトリービルダーコンソーシアム「Team Cross FA」創立の記者発表会を行った。

「建物」「IT」「人」「設備」をワンストップ提供することで、日本の製造業の競争力を高める

FAプロダクツ 代表取締役会長 天野 眞也氏は、冒頭「Team Cross FA」創立の目的と背景を語った。

FAプロダクツとオフィス エフエイ・コムがファクトリービルダーコンソーシアム「Team Cross FA」創立を発表
FAプロダクツ 代表取締役会長:天野 眞也氏

中国や韓国などに負けてきた昨今の日本経済の状況

まず足元の日本経済の状況について、「ここ20年から30年日本の製造業成長率は低下し、横ばいが続いている。かつてトップシェアを誇った家電は韓国、中国勢が中心となり、日本の家電メーカーは厳しい状況となっている。」とし、

「自動車やコピー機など部品点数が多く、生産技術が求められる製品分野では、現在でも日本は世界トップシェアを誇っている。日本は、生産技術、自動化に関してもっとも得意とする分野であり、産業用ロボットのシェアも世界一位だ。」と、世界の中での日本の立ち位置を語った。

しかし、自動車にしても今後EV化の流れがあり、競争が激化することは言うまでもない。しかも、日本の価値である「コストパフォーマンスの高さ(品質もよいがコストも安い)」についていえば、中国やアジア諸国も追いつかれている分野もあり、まだ追いつかれていないとされる分野に関しても、追いついてきているといえる。

また、ドイツのBMWやベンツ、アメリカのAppleなどにブランド面で遅れをとる、「プレミアムゾーン」にもいけない状況が続いているといえる。

一方で、日本ではIoTにおける重要なパーツであるセンサーのシェアが高い。そして、工場で課題となるエネルギーに関していうと、日本は火力発電効率でギネスに認定されており、再生燃料、太陽光発電率のトップを日本企業が独占している。これらのことから「日本は全体最適化されたスマートファクトリーの分野で世界1位を狙える国だ。」と天野氏は言う。

全体最適が計られたスマートファクトリーで生まれる日本の製造業のチャンス

ところで、スマートファクトリーにより全体最適され、自律化すると得られるメリットは何があるのだろうか。天野氏によると、

1つ目が、「人手不足の解消・競争力強化」だ。生産技術や、製造技術を最適化すると、人手不足が解消され、競争力が強化されるからだ。

2つ目が、「スマートファクトリー自体を海外展開していくことで日本の外貨獲得産業としていく」ことだという。

最後に、3つ目は、「公害にならない工場」をつくることで、世界を豊かにしていくことなのだ。

スマートファクトリー概念図

「今まではこういったことを支える企業や団体がなかった。そこで「建物」「IT」「人」「設備」の4つ全てをワンストップで提供するチーム、「Team Cross FA」を創立した。」と語った。

次ページは、「様々な分野に特化した技術を持ったベンダーがチームとなりスマートファクトリーを実現

様々な分野に特化した技術を持ったベンダーがチームとなりスマートファクトリーを実現

「Team Cross FA」は、全体最適化されたスマートファクトリーをワンストップで提供できるコンソーシアムとして、幹事会社を「株式会社FAプロダクツ」「株式会社オフィス エフエイ・コム」に加え、「ロボコム株式会社」「日本サポートシステム株式会社」「ロボコム・アンド・エフエイコム株式会社」の合計5社が務めている。

それぞれの役割は上の図の通りだ。

さらに公式パートナーには「鹿島建設株式会社」「株式会社電通国際情報サービス」「日研トータルソーシング株式会社」「株式会社日立システムズ」「ミツイワ株式会社」が参画しており、最新製造ラインの提供、デジタルエンジニアリング、ITシステム、工場建設、人材派遣・教育、設備保守・サポートなどトータルソリューションとして提供できるオープンな組織体として活動を行っている。

Team Cross FAの幹事企業、公式パートナーの皆様

また、幹事企業が加盟する「一般社団法人日本ロボット工業会(ロボット工業会)」「FA・ロボットシステムインテグレータ協会(SIer協会)」をはじめ、関係省庁・地方自治体・団体などとも密接に連携し、経済産業省が提唱する「Connected Industries」の実現も狙いとしているという。

Team Cross FAが、大手ベンダーと提携することにより、「ロボットメーカーを依存せずに最適な組み合わせでスマートファクトリーを実現することができる」のだという。工場を作ると一言で言っても、やるべきことは多岐にわたる。「こういった様々な領域について、これまでの経験と実績を活かしていきたい」と、FAプロダクツ 代表取締役社長 貴田 義和氏は言う。

さらに、貴田氏は、「Team Cross FAのコンセプトは、様々な分野に特化した技術を持ったベンダーが1つのチームを組んで、スマートファクトリーと呼ばれる全く新しいタイプの工場を一貫でサポート・サービスしていくことが重要なのだ。」とした。

また、Team Cross FAが全体最適化されたスマートファクトリーを行う上で、3つのレイヤーで構成された概念を示し、それぞれを説明した。

グランドデザイン


Team Cross FAのサービス内容のうち、もっとも上位レイヤーでは、グランドデザインを支援するという。

ここでは、全体・分野別の「構想設計」と呼ばれる、スマートファクトリーの考え方を検討、どういう工程を作り、どのようにIoTを活用し、物流やエネルギーについても、どうしていくかという設計を行うのだという。

生産戦略の中でも、「最適生産」を可能にするための要件を定義したり、業務プロセスを定義し、業務の定着化も実現するためのプランを作らなければいけない。

工程設計においては、工場のレイアウトやロボット化部分の検討、自動化の設計なども対象となる。人の配置など細かい部分もデジタル上で検討しなければならない。

その上で、デジタル上に、イメージした工場を構築することで、プラントシミュレーションを活用した、ラインのスループットやコスト面の検証を実施するのだ。

デジタルファクトリー

二階層目が、デジタルファクトリーのレイヤーで、スマートファクトリーを取り巻くさまざまなシステムインフラを整備する。

製造指示システム(MES)や、シミュレーション分析、データ分析、エネルギーマネジメントシステム、稼働監視・予知保全システムといった様々なシステムの導入を行う。

リアルファクトリー

デジタル上でシミュレーションされた工場を実際に構築するレイヤーだ。

このレイヤーでは、実際に自動化システムを導入したり、ロボットを導入したり、自動搬送機(AGV)を導入したりする。

導入と一言で言っても、買って設置、という単純なことではなく、仕様に合わせたプログラミングも行うのだ。

さらに、エンジニア育成を行ったり、拠点間物流や工場内物流を実現したり、自家発電の仕組みを導入したりしていくことも重要になる。

これらの概念モデルは実現できることが重要であることは言うまでもない。そこで、次に具体的にどのように実現をしていくのかというアプローチについて解説がされた。

次ページは、「スマートファクトリー実現の具体的な導入ステップ

スマートファクトリー実現の具体的な導入ステップ

最後に、スマートファクトリーの具体的な導入ステップの詳細について、オフィス エフエイ・コム 代表取締役 飯野 英城氏から話があった。

オフィス エフエイ・コム 代表取締役:飯野 英城氏

まずスマートファクトリーが実現する、「最適生産」について説明された。

「最適生産」とは、「つくらないときには作らない、作るときには作る」ことだとし、

の4つがポイントなのだ、と飯野氏は言う。

Team Cross FAが構築する進化したスマートファクトリー

ここで、具体的に最適生産を行える自動化生産ラインとはどういったものかといった話がされた。

具体的には、上の図のように、最適化されたスマートファクトリーを作るための設計から、シミュレーション、IoTを活用したデジタル化や現場への設置・設定、運用など様々なことを行うことになる。

まず、全体分析、工程・構想設計では、各工程ごとに作業分析を行い、自動化やロボット化の検討を踏まえて工程設計をするという。また、そのプロセスをシミュレーションすることで、検証も行うということだ。

次に、工場内シミュレーションを行う。ここでは、生産順や中間在庫、工程タクト、最適人員のモデルが作られる。

そして、データを収集し、IoT化、見える化を行う。予知保全などにもデータを活用する。

最後に、物流・作業分析として、最新の物流手法や自動倉庫、AGVの活用、デジタルピッキングなど新しいテクノロジーで物流や作業面の見直しも行う。

スマートファクトリー構築時の具体的な課題と解決策

ところで、一般的な自動化生産ラインというと、一本のラインで作業している「人」を「ロボット」に置き換えて自動化する、という考え方が多い。しかし、これだと生産数が増えたり、減ったりした際に、柔軟な対応ができない。

そこで「Team Cross FA」では、量産で生産するものは通常の工程を流れていくが、カスタマイズが必要なものは自動搬送装置が製品を組み立てて欲しいロボットのところに運び、組み立ててもらうという、「ロボット型デジタルジョブショップ」という考え方を打ち出している。

ロボット型デジタルジョブショップで作られたラインでは、各ロボットはシンプルに設計されていて、難しい工程はあえて作らない。ものを組み立てるものは組み立てるだけ、ネジを締めるものは締めるだけというロボットで生産ラインを構成するのだ。

そして、それぞれのジョブショップ間で、AGVが中間生産物を運ぶことによって、例えば、ある工程が混雑していた場合に他の工程を先にすませたり、最終生産物によってはラインの組み替えなしに、使うべき工程を指定するだけで柔軟なラインを組む、といったことも可能となるのだ。

その結果、生産量が増えたり減ったりした際にも、自由に組み替えが行えるラインが実現できる。

また、今後の予定として、今年の秋頃にスマートファクトリーコンダクターラボが栃木県小山市にロボット型デジタルジョブショップのリアル版を展示する予定だということだ。

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