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製造業における、原価を「共通言語」にして企業の競争力を高める ―mcframe Day2019レポート

2019年11月28日、「mcframe Day 2019」内にて「設計・製造連携で原価改革を加速するmcframe PLM」と題目の講演が開催された。

講演内ではビジネスエンジニアリング(以下、B-EN-G) 伊与田克宏氏(トップ画像)より、企業における原価管理の重要性や、製品情報管理システム「mcframe PLM」シリーズを活用した原価管理の実例などが説明された。伊与田氏は『儲かるモノづくりのためのPLMと原価企画』(東洋経済新報社)の共著者の1人でもある。

効率化・標準化・高度化がコンセプト

講演は「mcframe PLM」シリーズの紹介から始まった。

「mcframe PLM」シリーズは以下の3点になる。

ラインナップの紹介に続き、今度は「mcframe PLM」シリーズのコンセプトに関する説明があった。コンセプトは「効率化」「標準化」「高度化」の3つのキーワードに分けられるという。

まず効率化については「ツールを使って効率化していくのは付帯業務が中心となるが、この「mcframe PLM」シリーズは設計のコア業務に切り込んでいくことを目指している」と説明があり、標準化については「オペレーションの標準化だけではなく、設計・製品の標準化についても支援させていただく」と紹介された。

3つ目の高度化については「競争力・利益力のあるモノづくりを支援する」と定義した上で、以下のような説明が補足された。

「効率化したら何が生まれるのか、という先にはコスト削減しかない。一方、高度化というのはモノを増やしていく概念、と捉えて欲しい。例えば設計で効率化を進めれば「じゃあ案1だけでいい」という考え方になるが、そうではなくて「案1、案2、案3、と検討しよう」と選択肢を増やし、企業の力をどんどん高める、ということが高度化にあたる」

原価という共通言語を活用する

「mcframe PLM」シリーズを企業に提供する狙いとは何か。それについては「設計・製造を原価でつなぐことを目指している」という説明があった。

「原価・デジタル・スピード、この三つで原価企画力と製品事業力を高めていく」(伊与田氏)

では、原価で設計・製造をつなぐメリットはどこにあるのだろうか。

設計と製造は、ある程度の規模の会社になると部門が分かれる。部門が分かれると意思の疎通が減り、見えない壁が出来上がる。さらに大きな組織になると、役員も設計担当と製造担当に分かれている。これは企業がスピード感を出していく上で問題がある。

そういった設計・製造のコミュニケーションが分断されている状況で原価を役立てることが出来るのではないか、というのが「mcframe PLM」シリーズの狙いだという。

つまり「原価は上がるか下がるか、という一元的な表現になる。原価が下がった方が良いと思うのはみんな同じ。原価を下げて利益を上げるためにはどうしたらいいでしょうか、という話をすると設計と製造で非常に良いコミュニケーションになる」ということを目的としているのだ。

講演では「何をしたら原価が上がるのか下がるのか、利益が増えるのか減るのか、そういったことを上手く原価管理の中に織り込む、それが重要なポイントになると思う」と説明があり、設計と製造だけでなく、例えば経営と現場など、どこでも原価という一つの共通言語を上手く活かしてコミュニケーションを取る重要性が強調された。

デジタル化・スピード感の重要性

講演ではものづくりの現場におけるデジタル化(=見える化)についても触れていた。

これまでの製造現場では、例えば設計の領域だと「大部屋活動」ということで、ひとつの製品をばらして「どこかどうなっているのだろう」と集まって議論をしていたという。

しかし現在そのような方法を採用してしまうと、1つの製品に限られてしまうことや、「設計は日本だが製造は海外」という拠点間の違いで意思疎通が図れない、といったデメリットが生じる。そういった障壁を越えるために、デジタル化は有効だという。

デジタル化がもたらすメリットには「時間」の問題を解消する、という説明も加えられた。ここで言う「時間」とは、過去のデータの蓄積を指す。この過去データによって過去に良かったこと・悪かったことを、新しい製品を検討する時に活かしていくことができる。さらにAI活用など、あらゆることが拡張されていくというのだ。

また、「原価・デジタル・スピード」と挙げた3つのうち、スピードについても「思考を分断させず、間を空けずにアイディアを増やすことが重要だ」という説明があった。

次ページは、「原価管理の実例

原価管理の実例

「mcframe PLM」シリーズのコンセプト・狙いが解説された後、今度は実際に「mcframe PLM」シリーズを活用した原価管理の実例について紹介があった。

まず1つは「原価のデジタル化でアイディア創出」した会社の例だ。

この会社は自社の技術情報システム、そして2D-CAD・3D-CADも持っていた。そして生産・販売管理には既存の「mcframe」シリーズを利用しており、それ以外の見積り情報などはエクセルで管理していたという。

「それらを「mcframe PLM」シリーズのなかに全て入れ、その中で原価計算できるような仕組みを実現し、設計部門・製造部門・営業部門・購買部門と、いずれの部門も同じ数字を見て議論をする」というのが今回の取り組みだそうだ。

それ以前は各部門が都合の良い数字を使って議論をしており、実際その数字を会社全体でまとめてみると「なんだかおかしい」と気づくことが良くあったという。

しかし複数の人が同じ数字を見て議論できるコミュニケーション基盤が出来たことで、原価見積りの効率化・高速化を図ることが出来たそうだ。

この会社の取り組みについて、もう少し細かいポイント説明があった。

まず複数部門が1つのデータを見て検討するメリットについては「例えば購買部門が製品を横断してアイディアを出してくれる」など、部門間を越えてアイディアが創出されることが挙げられた。

また、コストシュミレーションが容易になったことについては「もともとエクセルで行っていたが、標準化といった取り組みなども進めていくと複雑化し、どれくらいで利益が良くなるのか、といったことが分かるのが数日後になる、という状態だった。それが「mcframe PLM」シリーズを導入することで直ぐわかるようになった」という。

そして一番大きな効果として、設計者の新しい技術や、高性能部材の研究などに時間が取れるようになったことが強調された。

今回の事例について「コミュニケーションの基盤を作ったこと、原価見積りの高速化・効率化、その結果として多数のアイディアが出せるようになったこと、十分な施策検討のサイクルが出来たこと。これがどんどん企業を強くする源泉になる。効率化して削減してばかりでは、企業はどんどんやせ細っていく。効率化で生まれた能力を高度化に使ってもらいたい」と伊与田氏はまとめた。

2つ目に挙げられた事例は「自動化で設計における原価検討促進」の例である。

この企業はCADデータからコストパラメータを自動で抽出し、原価見積りを行うことに取り組んでいるという。具体的には「CADに書かれている材質、板厚、寸法といった設計諸元をシステム上から抜き出して、そのパラメータを基にコストテーブルの中から費用を出す」という取り組みだそうだ。

この事例について、2つの重要なポイントの説明があった。

まず1つはCADからデータを抜き出すということ。CADを使っていると「設計部門は意外とデジタル化が進んでいるのでは」と思うが、「実は一番デジタル化から取り残されているのは設計部門ではないのか」と見受けられる部分もあるそうだ。

つまりCADを使って絵をかいても、計算書・仕様書にきちんと数字が入っていても、それをちゃんとデジタルデータとして活かすことが出来ているのか、という事が焦点になる。現在でも「人が目で見て、転記をする。さらにそこから品目情報・原価情報を抜き出して計算する。さらに別のシートに入力している」と設計部門のデジタル化が進んでいない企業は未だ多い。

「設計は利益を生み出す源泉として、会社の一番重要なところ。その担当者に手間のかかることをさせるのか、という話になる。設計者にはより良い製品を考えて生み出す時間を持ってもらいたい」と設計に余計な手間をかけさせない事の重要性が講演では強調されていた。

その上で伊与田氏は「一度設計上で挙がってきたデータをシステムで抜き出せれば良い。そうするとデータが溜まってくる。溜まると過去の実績があるのか無いのか、何を検証しなければいけないのかくらいまでは、すぐシステム上で組むことが出来る。もっとデータが溜まってくれば、AIなどでコストテーブルといった過去のデータからAIで価格推定といったことも出来るようになる。このように最低限のチェックが機械で出来てしまう」とデジタル化により省力化のメリットを説明し、「何か計算上しっくり来ないな、こうすれば市場に受けそうだよね、といった製品の検討に設計者が注力して上げられるようすれば良い」と見解を述べた。

2つ目のポイントとして挙げられたのが「計算の精度よりスピードが重要である」ということだ。

製造の基本的な流れは、以下の図のように「要求仕様があって、設計があって、図面を書いて、発注書を書いて、部品表を書いて、最終的に製造工程に持っていく」と風になっている。

そして工程が下に行けば行くほど(上記図参照)、より詳細な原価情報が分かるようになるので、原価精度が上がる。しかし設計の自由度は下がる。逆に上に行けば行くほど設計の自由度は高いが、それでは精確な原価を出すことは出来ない。

「コストテーブルを作りましょう、という話になると、精度が上がらなきゃだめだ、という方もいるが、本当に精度が必要なのか。あることをしたら原価が上がる方向に行きそうなのか、あまり変わらないのか。これくらいが分かって設計部門にフィードバックしてあげれば、設計者はだんだんコスト感覚を持って、より良い設計というものをやってもらえるようになる。上流をどのように上手く設計者にフィードバックできるようになるのかが重要であり、これが企業の競争力を高める」と、精度よりスピードを取ることが結果的に企業の競争力につながることを伊与田氏は解説した。

次ページは、「「Visual BOM」「EM-Bridge」の活用法

「Visual BOM」「EM-Bridge」の活用法

では、そうした企業の競争力を高めることに、「mcframe PLM」シリーズはどのように貢献できるのか。その点について、まず「mcframe PLM Visual BOM」の機能について説明があった。

「mcframePLM Visual BOM」はE-BOMとM-BOM、図面などが一つの画面の中で見ることが出来るソフトウェアで、設計部門だけではなく様々な部門で活用できる仕組みを用意しているという。

デモンストレーションで流れたのは、三次元の情報からE-BOMの原価の高いところどこで使われているのかを確認する、設計変更前・変更後を三次元の情報で比較できる、といった用途における操作画像だった。「文字だけではなく視覚の情報で分かるようにする」点が「mcframe PLM Visual BOM」のポイントだという。

そして、こういった機能を使って設計成果物の資産化、部品を探せる、標準部品を選定できる、そして最終的にはモジュラーデザインにつなげていく、といった標準化のステップアップをサポートするそうだ。

「類似形状検索」という機能についても説明があった。これは「似たような部品は無いのか」を探す検索だという。

この機能については設計だけでなく、個別受注の段階でも調達部門で利用されているそうだ。素材が同じで形状がおおよそ似ていて、大きさがある程度レンジに入っている部品は、同じ加工機で対応できる。そうすると個別受注であったとしても、ある程度の量産効果というものを担保して出来ることになる。そういった観点でまとめ発注といったものを上手く企画すれば、コストダウンといったものにつながるのだという。

「mcframe PLM Visual BOM」はCAD上のアッセンブリデータをそのまま持ってくることができる。設計のやり方として、CAD上である程度ルール化してE-BOMの構成を作っていくことができれば、構成の変更もほとんどなくなるそうだ。

原価の集計について「実績原価があるものはそれを使った方が良いが、それが無いものは想定原価=見積り原価を利用する」と、複数のデータから欲しい情報を持ってくる機能があることを伊与田氏は説明に加えた。

続いて「mcframe PLM EM-Bridge」の機能説明があった。これは設計と製造をつなぎ、E-BOMとM-BOM、BOP(=製造工程の情報)を全て統合的に管理できる仕組みを持ったソフトウェアであるという。

「mcframe PLM EM-Bridge」の狙いは主に「モノづくりの情報を統合する、設計変更の影響を特定する、実績を踏まえた工程設計の検討ができるようになる、原価シミュレーションをできるようになる」ことにあるそうだ。

「mcframe PLM EM-Bridge」には拠点別の工程情報をライブラリ管理する「モノづくり統合マスタ管理」の機能があるという。

設計・製造連携で一番重要なのはフローな情報、資産の情報、設備の情報をしっかり持っていること。それによって自分の会社がどこまでだったら精度良くモノが作れるのか、ということを設計部門にも理解できるような情報を揃えてベースにすれば、コンカレントエンジニアリングができるのではないか、というのだ。

製品の貢献度を測る「mcframe COCKPIT」

「mcframe PLM」シリーズ以外にも「mcframe 7」の機能についても紹介があった。「mcframe 7」には原価管理という仕組みも持っており、原価管理の情報の中には販売情報も含まれているので利益の管理が出来る仕組みも用意しているという。

そしてこの「mcframe 7」の仕組みと「mcframe PLM」シリーズを組み合わせて使っている事例が紹介された。これは「モジュラー化を進めていくなかで品種を絞り、製品ミックスを変えていくといったケース」だという。

「品種を絞ると売上データが変わってきて、工場の稼働状況がだいぶ変わる。工場の稼働状況が変わってくると、チャージレートなど様々なところの見直しが発生して、結局儲かるのかどうかが全体的に見えにくくなる。製品単体で積み上げたら出るのだけれど、それが正しいかどうかは分からない。そこで予算原価計算という仕組みを使ってもらい、「製品ミックスが変わって販売額は落ちるけれど、工場が効率化されてより利益が出るようになるね」という方針決定を行った」と事例の詳細が説明された。

製品損益、つまり「ある一定期間だけでなく、製品の開発から販売期間を通じてその製品が儲かったかどうかを追う」ことの重要性も講演内では述べられていた。

一定期間の中で企業として人・もの・金を有効活用できたかどうかを評価する期間損益だけでなく、その製品が投資分である固定費をしっかりと回収しているのかどうか、いつ回収できるのかを評価する。そういった見方はしっかりしていく必要があり、そこにB-EN-Gはデータ活用基盤「mcframe COCKPIT」を用意して対応する旨が説明された。

この「mcframe COCKPIT」は「どの製品に収益力があるのか、ないのか、経営者としてはどの製品に投資すべきか」を判断してもらえるようにするソフトウェアだという。

その例として挙げられたのは、上記写真にある「ものづくりの利益分析」のグラフだ。これを見ると「コスト発生」「新規投下キャッシュ」の折れ線グラフがあり、新規キャッシュの回収ポイント、固定費の回収ポイントがどこにあるのかが分かるようになっている。

伊与田氏が共著者の1人として執筆参加した『儲かるモノづくりのためのPLMと原価』(東洋経済新報社)

講演の最後、伊与田氏は「PLMと聞くと設計部門のツールと思われてしまうことが多いが、「mcframe PLM」シリーズは経営から調達まで様々な部門が使ってくれる仕組みを提供したい」と締めくくった。

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