自動車の製品開発・製造において、トランスミッションをはじめとする複雑なユニットの「試作工程」は、量産に向けた品質や組み立て性能を検証する重要なプロセスだ。
しかし、ユニットの組み付け作業においては、1台あたり数百点にのぼる多種多様な部品を正確にピッキングする必要があり、該当部品の保管場所を探す探索時間の発生や、類似部品の取り出しミスといった作業品質上の課題が存在していた。
特に、試作現場では仕様変更が頻繁に発生するため、作業者の熟練度や記憶に頼ったオペレーションは、手戻りや熟練者への業務集中を招くボトルネックとなっていた。
こうした課題に対し、トヨタ自動車株式会社は、東京大学発のDeepTechスタートアップである株式会社Quarkが開発したXRグラス「MiRZA(ミルザ)」を活用したARピッキングソリューションを導入し、2026年5月より本格運用に向けた実導入を開始した。
今回トヨタ自動車が導入したソリューションは、約125gの軽量XRグラスを通して作業者の視界に最適なピッキング位置や最適な走行順序をリアルタイム表示するものだ。部品棚のQRコード照合機能を組み合わせることで、数百点に及ぶ試作部品の取り出し迷いや誤ピッキングを防止する。
また、取り出しミス防止の仕組みとして、ピッキング対象の部品と部品棚に貼付されたQRコードをXRグラスで読み取って照合する機能が搭載されている。
さらに、広範な作業エリア内での無駄な歩行を抑えるため、最適な巡回ルートと取り出し順序を提示する機能も備えている。
加えて、頻繁に部品構成やレイアウトが変更される試作現場の運用に合わせ、PCアプリから最新の棚番・品番リストをARグラスへ即時同期できるインポート機能を整備した。
これにより、管理側のデータ更新工数を最小限に抑えつつ、常に最新の情報に基づいた正確な作業環境を維持することが可能となっている。
トヨタ自動車のユニット生技部の担当者は、「同ソリューションの活用により、作業手順や位置補正が視覚化されることで、初めて作業に入る担当者や急な突発対応・応援要員であっても迷うことなく業務を遂行できるようになると考えている」とコメントしている。
一方で、作業前の位置調整のやりづらさや、作業者の頭部形状によるフィット感の個人差といったハードウェア・ソフトウェア双方の初期課題も浮き彫りとなっているが、実業務でのフィードバックを重ねながらQuarkと共同で継続的な改善を進めているとのことだ。

