ドイツでは「おもてなしNG」
顧客の好みに合わせた製品づくりである、「マス・カスタマイゼーション」は、最近よく言われる話ですが、実は、作る際に凝りすぎず、とにかく組み合わせで製造できるようにすることが重要です。要するにミニマムコストで高品質の商品を提供できる、という点が重要です。
よく日本では「おもてなし」をしようとしますが、ドイツではこれはダメだと言われます。
本来のインダストリー4.0では、「道具だて」よりも「プロセス」、我々は「デジタルエンタープライズ」と呼んでいるのですが、データの基盤をしっかり作らないといけません。
「製造現場にデジタルプラットフォームがなければ、先進技術は役に立たない」というのが我々の基本的な考え方です。
もう一つだけ重要な点をお伝えします。世の中にないモノを作るということは、「そんな当たり前のことを」と思われるかもしれませんが、ヨーゼフ・シュンペーターのイノベーション理論では、「既存の知と、別の知との組み合わせ」であると言われています。
そして、これは日本人が不得意なのではないかと思っています。日本人は知を深めることが得意な一方で、この知を探索すると背反するのです。つまり、自分の作ったモノをどんどん良くしていくと、それから逃れられなくなってしまう傾向があります。
おそらく日本は、これで今までは大成功していますから、自分の作ったモノをどんどん良くしていっているのではないかと思います。これまで日本が強かったのは何かというと、ミニチュア化やプロセスを凝縮して、すり合わせして、人が真似できないようなことを作り込んでいくことでした。
しかし現在では、「そんなものはいらない、それはソフトウェアでできる」と言われてしまいます。「単体部品の良し悪しよりも、システム全体でパフォーマンスが高い方が結果的にはお客さん喜ぶよね」というやり方をして負けてきているわけです。
本来は、他にどういったものが世の中にあって、どういう組み合わせをしたらいいのかということを考えることが大事なのです。要するに、この知を深めることと、知の探索のバランスを取らないといけないということです。
これは設計をする時もまったく同じです。
(絶対に陥ってはいけない)イノベーションの罠に陥りつつある時、「本当は何をやらないといけないか」を考えずに、「何を作ったらいいですか?」と、違う方向へ走ってしまいます。
だから、例えばAIやビッグデータなども、探索する側も両方含めて考えないと成果が出ない。シーメンスでは、そのための仕組みを用意しています。
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